2月27日、大阪府八尾市の市立小学校に通う女子児童の両親が、市に対して約220万円の損害賠償を求めて裁判を起こしていたことを複数のメディアが報じた。
報道内容をまとめると2022年5月末、当時1年生だった児童が往復で計2時間歩く遠足に参加。ところが途中で持参した水筒のお茶がなくなってしまい、担任教諭に「お茶を買わせてください」と申し出るも認められず。
帰路でめまいを覚えて「ママを呼んでください」と懇願するも、これも聞き入れられず。学校に到着後、下校時に迎えに来た母親が高熱に気づき、救急搬送されて「熱中症」と診断された児童。
両親の訴えによると、「前日に体力面の不安から遠足を欠席したいと伝えたが、担任教諭から促されて参加を決めた」「子どもが体調不良を訴えた際には連絡をいれるよう伝えていた」「お金を持たせるので、お茶がなくなった際に買い与えるよう事前に頼んでいた」にもかかわらず、児童は熱中症になったのだ。
安全配慮義務を怠ったとして訴えを起こされた市(学校)だが、答弁書で「様子を確認し、体調に問題ないと判断した。児童に熱中症の症状が出た際は、飲料水を購入することを想定していた」と争う姿勢を示し、請求の棄却を求めている。
「学校側には前時代的な考えに縛られずに、時代にあわせて対応してほしい」両親は、子どもの安全よりも校則や規則を優先する学校、市の体制に違和感を覚えて訴訟に踏み切ったというわけだ。
大阪府は「子どもに気を配る必要がある」
地球温暖化による気温上昇に伴い、年々増加傾向にある熱中症。総務省によると女子児童が搬送された2022年、5月から9月にかけて全国における熱中症の緊急搬送人員の累計は7万1029人。2008年の調査開始以降、3番目に多い搬送人員とある。
当時の八尾市は5月下旬にして気温30度を超える日が多く、遠足が実施された日も児童たちが熱中症になる可能性は十分に予想できたと言えよう。
大阪府が発行した熱中症啓発チラシ『きいつけや!その暑さ』でも、各自ができる熱中症対策を紹介する一方で、子どもに関しては《子どもは体温の調節がまだ十分に発達していないので気を配る必要があります。》と、大人の管理を促している。
また八尾市で共有する市立小学校の【学校危機管理マニュアル】においても、
【運動部活動以外の活動や、教育課程内での取組みにおいても発生することがあり、それほど高くない気温(25~30℃)でも湿度が高い場合に発生していること等を踏まえ、教育課程内外を問わず、この時期から熱中症事故の防止のための適切な措置を講ずる必要がある。】
【活動前に適切な水分補給を行うとともに、必要に応じて水分や塩分の補給ができる環境を整え、活動中や終了後にも適宜補給を行うことが重要である。】
などと、熱中症事故防止の徹底を“マニュアル化”しているはずだがーー。
いつの時代の、どこの教育だよ
同ニュースが伝えられるとSNS上では、
《八尾市の小学校やば。両親は適切なリスクヘッジしてるし、女の子だって自分でちゃんと状況を判断して伝えてるのに、それ全スルーって。しかも熱中症って診断出てんのに当時の体調に問題はなかったって、全ての判断がめちゃくちゃすぎる…》
《“熱中症の症状が出たら飲料水を買うことを想定していた”ってアタマおかしすぎて。 症状でたら救急要請だよ。 症状でないように水分を予め摂るんだよ。》
《「お金を使っての水分補給はできない」って、いつの時代の、どこの教育だよと思ったら、日本の教育らしいぜ。》
などと学校側の“危機管理”に疑問が投げかけられている。一つ間違えば児童の命が危険に晒された“事故”だが、それでも学校と市は裁判で正当性を証明するのだろうか。