バナナ酢 撮影/矢島泰輔

「私はいくら働いてもくたびれないの。撮影が深夜0時を過ぎても、作業のテンポが変わらないと30代のスタッフに驚かれるんですよ」

 と話すのは、数々の健康レシピ考案で知られる料理研究家・村上祥子(さちこ)さん。82歳にして年に何冊も本を上梓(じょうし)し、精力的に活動を続けている。そのパワーの源となっているのが、自ら考案し、47年間とり続けている「バナナ酢」。

「3人の子どもたちがスイミングクラブに通っていた当時、朝夕に練習があったので、エネルギーにかわりやすいおやつとして、バナナ酢を作りました。

 砂糖とお酢をとれば、身体の中の“TCAサイクル”というエネルギーを生み出す回路が動くんですが、そこにバナナを加えることで、カリウムや食物繊維もたっぷりとれます。

 香りもいいので、子どもたちも飲みやすかったようです。それ以来、私も一緒にとるようになったんです」

便通改善やこり解消!うれしい効果が続々

 水割りにして飲んだり、料理にかけたりしてバナナ酢をとり続けているうちに、身体に変化を感じるように。

「疲れなくなっただけでなく、肩こりや冷え、便秘もなくなりました」

 幅広い健康効果を持つバナナ酢。材料の中でも特にバナナは、近年多くのドクターから腸内環境の改善に役立つと推奨されている。

「私の料理教室の生徒さんからも、効果を実感したという声は多く聞かれますね。コンスタントに飲み続けていたら、一週間後ぐらいから便通がよくなったとか。さらにフェイスラインがすっきりしてきたなど、プラスアルファの効果もあるようです。

 腸は栄養を吸収するだけでなく、身体によくないものや不要な老廃物を外に出してくれる働きもありますから、腸を整えることは健康のカギですね」

料理家・村上祥子さん 撮影/江口拓

安心して食べられておいしさもアップ!

 バナナ酢は健康効果だけでなく、料理をおいしくする効果も。

「ホットケーキに入れると、お酢がベーキングパウダーに作用してふっくら焼き上がります。バニラアイスクリームにかけてもおいしいですよ。

 甘いものは糖分が気になる人も多いと思いますが、バナナ酢がエネルギー代謝を上げてくれるので、罪悪感なくいただけるのもうれしいですね

 また、50代以上の女性には特に活用してほしいと村上さん。

人間の身体は人生約50年の設計でつくられているので、50歳を境に大きく変わってくるといわれています。人生後半も健やかな腸と疲れない身体を保つために、バナナ酢をおすすめします。

 朝夕食前に大さじ1杯ずつ取り入れて、最低でも一日大さじ2杯。さらに料理にも1杯使ってトータル大さじ3杯とっていただくのがベストです」

 人生100年時代も村上さんのようにエネルギッシュに輝き続けるために、今日からバナナ酢を習慣にして、美腸を目指そう!

村上流『バナナ酢』キホンの作り方

村上流『バナナ酢』 撮影/矢島泰輔

材料/450ml瓶1つ分
・バナナ……1本(100g程度)
・黒砂糖……100g
・黒酢……200ml

【作り方】

(1)バナナは幅2cmに切る。電子レンジ使用可能な容器に材料をすべて入れる。

(2)2電子レンジで加熱する(600Wで30秒、500Wで40秒)。煮沸消毒した保存容器に移してふたをし、12時間室温に置く。

村上流『バナナ酢』キホンの作り方 撮影/矢島泰輔

使い方
・シロップやレモン汁の代わりに
・アイスクリームのトッピングにバニラアイスクリームにかける
・ムニエル、ソテーに魚を焼くときの下味&仕上げの風味づけに
・煮物に鶏肉の煮物に調味料として入れる

保存の注意
 保存容器は煮沸消毒できるものを。室温でも1年前後保存できるが、バナナが空気に触れているとカビが生えやすいので、バナナが浮かないように注意し、2週間ほどで取り出して。
 電子レンジにかけるときにバナナが浮いていたら、上から押さえて酢にくぐらせてからレンチンを。

バナナと黒酢は黄金コンビの長寿食

「バナナは、最近注目されている低FODMAP(フォドマップ)食品。お腹の調子を整えるのにおすすめです」

 と、腸に詳しい内科医・江田証(あかし)先生。FODMAPとは、腸で吸収されにくい糖質の総称*で、低FODMAP食は繊細なお腹の人向けの食事法として注目されている。

*オリゴ糖類(O)、二糖類(D)、単糖類(M)、糖アルコール(P)の頭文字と、Fermentable(発酵性の)という形容詞を先頭につけた言葉

※写真はイメージです

意外にもりんごはNG!腸活のイチオシはバナナ

「例えば、一般的にりんごは健康にいい果物とされていますが、実はFODMAPを多く含んでいるため、食べると下痢や便秘を悪化させます。それに対してバナナは、FODMAPが少なく、整腸作用が認められています」(江田先生、以下同)

 理由は、豊富な食物繊維。

「バナナには、便のカサを増やしたり、腸の中で発生した毒素を排出したりする“不溶性食物繊維”と、善玉菌のエサとなり有益な腸内細菌を増やす“水溶性食物繊維”の両方が入っています。

 また、バナナを食べることで悪玉菌が減るというデータも報告されています」

 腸に関連しながらあまり知られていない効果も。

「精神を安定させるホルモンのセロトニンは、実は9割が腸で作られています。バナナには、セロトニンのもととなるトリプトファンという成分がたくさん入っています。

 さらにトリプトファンがセロトニンに変わる際に必要なビタミンB6も豊富に含まれており、精神を安定させる効果が期待できます。更年期の不定愁訴の軽減にも効果的」

アンチエイジングや認知症抑制にも期待大

 黒酢にも、オトナ世代にうれしい効果がたくさん。

「人は体内に取り入れた酸素をATPというエネルギーにかえて活動していますが、その過程で活性酸素という有害物質を生み出し、それが老化やがんの原因となります。

 お酢には、この活性酸素を除去する抗酸化作用があります。特に黒酢は、普通のお酢よりも強い抗酸化作用が」

 さらに、注目の情報も!

「マウスの実験段階ですが、お酢は脳の記憶に関わる領域、海馬を活性化するといわれていて、アルツハイマー型認知症の抑制効果も期待されています」

 それぞれ優れた健康効果を持つバナナと黒酢。その両方を手軽にとれるバナナ酢は、まさに健康長寿食品。

「飲んだり料理にかけたりすることで、溶け出した成分をとることができますが、食物繊維をとるには、漬け込んだバナナもぜひ活用を。ただし、バナナにはカリウムが多く含まれますので、腎臓が悪い方はとりすぎに注意してください」

バナナのすごい栄養素
・低FODMAP
・トリプトファン
・ビタミンB6
・水溶性食物繊維
・不溶性食物繊維

村上さん長寿の秘訣!バナナ酢アレンジレシピ

 ドリンクで割るだけなら、とっても簡単!また、いつものお酢の代わりに活用を。漬けたバナナもおいしくいただけます♪

バナナ酢ミルク

 とろみがつきヨーグルト風に。

バナナ酢ミルク 撮影/矢島泰輔

材料と作り方(1人分)

 グラスに牛乳100mlを注ぎ、バナナ酢大さじ1を入れて混ぜ、漬けたバナナや好みのフルーツ適量を浮かべる。

カンパリバナナサワー

 カンパリが苦手ならグレナデンシロップで。

カンパリバナナサワー 撮影/矢島泰輔

材料と作り方(1人分)

 グラスに氷を入れておき、炭酸水100mlを注ぎ、カンパリ大さじ1、バナナ酢大さじ1を入れて混ぜる。オレンジや好みのフルーツ適宜を飾る。

バナナジャムクラッカー

 甘酸っぱさがクセになる!

バナナジャムクラッカー 撮影/矢島泰輔

材料と作り方(1人分)

 漬けたバナナ1本分を耐熱ボウルに移し、フォークでつぶしてラップをし、電子レンジで加熱する(600Wで2分、500Wで2分20秒)。クラッカーやトースト適量に塗っていただく。

バナナ酢マリネ

 お好きな野菜や白身魚でもOK。

バナナ酢マリネ 撮影/矢島泰輔

材料と作り方(1人分)

(1)カジキマグロ90g、かぼちゃ50g、ズッキーニ・パプリカ各30gは食べやすく切って素揚げする。

(2)バナナ酢大さじ3、水大さじ2、しょうゆ大さじ1を混ぜ、容器に移した(1)にかけたら、ラップで落としぶたをしてなじませる。

バナナ酢ドレサラダ

 マイルドな酸味がぴったり。

バナナ酢ドレサラダ 撮影/矢島泰輔

材料と作り方(1人分)

(1)サニーレタス100gは手でちぎり、玉ねぎ30gは薄切り、きゅうり30gは斜め薄切り、ミニトマト40gは半分に切る。

(2)バナナ酢大さじ2、オリーブオイル大さじ1、塩小さじ1/4、こしょう少々をボウルに入れてスプーンの背でよく混ぜる。(1)を入れて手でボウルの下からすくうようにかき混ぜて味をなじませる。

教えてくれたのは……

村上祥子さん●料理研究家。管理栄養士。公立大学法人福岡女子大学客員教授。生活習慣病の予防・改善、個食時代の1人分簡単レシピ、食育出張授業、「バナナ黒酢(R)」の考案など健康を助ける活動を行っている。

村上祥子さん●料理研究家。管理栄養士。公立大学法人福岡女子大学客員教授。生活習慣病の予防・改善、個食時代の1人分簡単レシピ、食育出張授業、「バナナ黒酢(R)」の考案など健康を助ける活動を行っている。

江田証先生●医学博士、江田クリニック院長。日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。テレビや雑誌など多数出演。著書に『60歳で腸は変わる長生きのための新しい腸活』(新星出版社)など。

江田 証先生●医学博士、江田クリニック院長。日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。テレビや雑誌など多数出演。著書に『60歳で腸は変わる 長生きのための新しい腸活』(新星出版社)など。

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取材・文/當間優子 撮影/矢島泰輔(アレンジレシピ)、江口 拓(村上さん近影)
調理・スタイリング/吉野 愛
※バナナ酢は、胃腸の弱い方は空腹時を避け、薄めて摂取するのがおすすめです。