『テレビ報道記者~ニュースをつないだ女たち~』でW主演を務めた芳根京子と江口のりこ

 3月5日、日本テレビで開局70年を記念した3時間のスペシャルドラマ『テレビ報道記者~ニュースをつないだ女たち~』が放送されたが、批判の声があがっている。

 本作は芳根京子(27)と江口のりこ(43)のダブル主演で、四世代に渡るテレビ局の女性報道記者にフィーチャーしたドラマ。

日本テレビで開局70年を記念した3時間のスペシャルドラマ『テレビ報道記者~ニュースをつないだ女たち~』(公式HPより)

 1980年代から現在までを舞台にし、オウム真理教事件や東日本大震災など実際に起きた大事件や大災害を題材にしつつ、女性記者たちの苦悩や葛藤、そして彼女たちのプライドを描いていった。

『セクシー田中さん』問題が解明されていないのに……

 ノンフィクション要素もあるこの社会派ドラマに、非難の声があがっているのは、『セクシー田中さん』問題が関係している。

 昨年10月期放送のドラマ『セクシー田中さん』の原作者・芦原妃名子氏が急逝した問題を受け、原因究明と再発防止のため日テレが発足させた社内特別調査チームが、2月23日に調査開始したばかりだったからだ。

日本テレビ系でドラマ化された『セクシー田中さん』(ドラマ『セクシー田中さん』公式HPより)

 このタイミングで、日テレの報道機関としての矜持や意義を訴えるようなドラマが放送されたものだから、ネットは大荒れ。『テレビ報道記者』の放送を報じたネットニュースのコメント欄には、次のような否定的な意見が多数寄せられていた。

《ドラマの内容は悪くなかったけど、タイミングが悪すぎましたね。 セクシー田中さん問題が全く解決していないのに、こういうドラマは放映しちゃダメだよね。 現状を軽く考えすぎていると言われても、しょうがないでしょうね》

《日テレはセクシー田中さんの件をもっと真剣に深刻に受け止めるべきだと思うけど、たぶん日テレは自分たちが被害者くらいにしか考えてないんだろうな。 人ひとりの命が失われていることを、そしてそのきっかけを自分たちが作ったという事実をもっと真剣に受け止めてほしい》

《この番組を放送すること自体は悪くは無いし、番組に罪はない。 ただ、自分たちの会社内部にも、外部に対してするように、厳しい取材・報道をしないと、世間は共感しないでしょう。 身内に甘く・外には厳しい、では、矛盾しているので》

《私もドラマとは言え、このように被害者遺族に寄り添った江口さんなどの人物像を見て、セクシー田中さんの件は…?とよぎってしまった》

宮迫博之のYouTubeデビューを彷彿

 筆者も前述したようなネットの意見に同意なのだが、“タイミングの悪さ”という部分で、あるお笑い芸人が頭をよぎった。

 元・雨上がり決死隊の宮迫博之(53)である。

元雨上がり決死隊・宮迫博之

 宮迫と言えば、2019年の闇営業騒動以降、地上波テレビ番組からはほぼ“消えた”状態になっており、芸人としての活動のメインがYouTubeになっているのはご存知のとおり。

 そんな宮迫のYouTubeデビュー時もタイミングの悪さが際立っていた。

 宮迫がYouTubeチャンネル開設したのは2020年1月29日。だがその翌日1月30日は、同じく闇営業騒動の当事者でともに会見を開いていたロンドンブーツ1号2号の田村亮(52)が、トークライブで復帰することが前々から告知されていたのだ。

 要するに、ロンブー亮にとって再出発となる大事な日だったにもかかわらず、宮迫が前日にYouTubeデビューで話題をかっさらい、亮の復帰の足を引っ張ったと見る向きが多かったのである。

 この宮迫の行動に世間から非難の声が相次いだだけでなく、芸人仲間も快く思っていない人が多かった模様。

 宮迫はスタート時にYouTuberとコラボしていた関係で、相手に迷惑をかけられないので時期をずらせなかったという趣旨の弁明をしていた。

田村亮の復帰会見と同日に『YouTube』でヒカルとのコラボ動画をアップした宮迫には批判の声が

 だが、千原兄弟の千原ジュニア(49)が2021年8月のワイドショーに出演した際、多くの芸人の気持ちを代弁する形で、亮の復帰のタイミングで宮迫がYouTubeを開始したことについてコメント。ジュニアは、何十年と一緒にやってきた芸人仲間より、繋がりができたばかりのYouTuberとの関係性を優先した宮迫の判断に、不満をにじませつつ疑問を呈したのだ。

ナゼ、ずらせなかった(延期できなかった)のか?

 日テレと宮迫に共通しているのは、「ずらせなかった(延期できなかった)のか?」という点。

 日テレは、『セクシー田中さん』の社内特別調査チームが事実や原因をきっちり明らかにするまで、『テレビ報道記者』の放送を延期すべきだった。調査がようやく始まったばかりのタイミングで報道に関するドラマを放送されても、「身内のこともろくに報道せずに真相解明もできてないのに……」と、視聴者がモヤモヤするのは火を見るより明らかなのに、そんなこともわからなかったのだろうか。

 宮迫も、そんなタイミングで大々的にYouTubeデビューしたら、亮の復帰に水を差すことになるのはわかりきっていたはずなのに、どうして延期しなかったのだろうか。

 宮迫の場合、コラボ相手に悪いから時期をずらせなかったとのことだが、それはやはり言い訳にしか聞こえない。関係各所に事情説明して謝罪をしてでも、YouTubeを延期させるのが亮に対する思いやりだろう。要するに、そういった労力をいとわなかったり頭を下げたりすることが“誠意”というわけだ。

 宮迫個人のYouTubeチャンネルと、巨大組織である日テレのスペシャルドラマでは、かかわる企業も人員も桁違いの規模だろうから、延期させる労力も桁違いだろうことは想像に難くない。

 しかし宮迫の闇営業騒動より、大切な人命が失われてしまった日テレの『セクシー田中さん』問題のほうが、圧倒的に重大だとも感じる。

 宮迫のYouTubeよりも日テレのドラマを延期させることのほうが、非常に労力がかかることだろう。しかし、問題の大きさも日テレのほうが甚大なのだから、とてつもなく大変だったとしても、やはり日テレは放送延期の英断を下すべきだったのではないか。

堺屋大地●コラムニスト、ライター、カウンセラー。 現在は『文春オンライン』、『CREA WEB』(文藝春秋)、『smartFLASH』(光文社)、『週刊女性PRIME』(主婦と生活社)、『日刊SPA!』などにコラムを寄稿。これまで『女子SPA!』(扶桑社)、『スゴ得』(docomo)、『IN LIFE』(楽天)などで恋愛コラムを連載。LINE公式サービス『トークCARE』では、恋愛カウンセラーとして年間1000件以上の相談を受けている(2018年6月度/カウンセラー1位)。公式Twitter:https://twitter.com/sakaiyadaichi