デヴィ夫人

 デヴィ夫人が「文春砲」に反撃した。代表理事を務めていた慈善団体『アミチエジャポン』の資金を持ち逃げし、ほかの理事とトラブルになっているなどと報じられたことに対し、

《事実無根であるほか(略)断定的な表現で私を貶めようとするものであり、極めて悪質と申し上げざるを得ません》

 と、SNSで説明。名誉毀損などの罪で刑事告訴した、と明かした。さらに、

《著名人の言い分を公平に載せることなく著名人を貶め、社会から抹殺している事象が、多数見受けられます》

 と、最近のメディア報道のあり方についても言及。芸能界のご意見番らしいところも示した。ただ近年、彼女のご意見番ぶりには「ブレ」も目立ってきている。

目立つ数々の失言

 2020年の「不妊の原因は堕胎です」発言では、批判を受け《私の思慮に欠ける言動》だったとして謝罪。昨年は旧ジャニーズ問題について《偉大なジャニー氏の慰霊に対する冒涜》だと当初は故人を擁護しながら、3か月後《私の全く知らない喜多川氏の愚行を知り、驚きと共におぞましく感じました》と手のひらを返した。

 こうした「ブレ」の原因は、ひとつには「老い」だろう。2月には84歳になった。もちろん、本人はまだまだ元気で、80歳の誕生日を迎えたときには、

「100歳まで健康に元気に生きようと思います。私の敵がすべて死ぬまで生きます」

 と、豪語。実際、ミッチー(浅香光代さん)サッチー(野村沙知代さん)といった、毒舌系熟女ブームで成功したライバルたちが去っていくなか、彼女は抜群の生命力で生き残ってきた。

 しかし、死ぬのは「敵」だけではない。彼女の「味方」すなわち、その毒舌を支持してきたような世の同世代たちも敵と同じように減っていくのである。自分だけが元気でもどうにもならないこの現実が、彼女に「ブレ」をもたらしているのではないか。

 また、夫人の敵でも味方でもない若い人たちにとって、彼女は『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)などで身体を張った芸を見せる「おもしろいおばあちゃん」にすぎない。

裁判も人生のスパイス

『土曜はナニする!?』(フジテレビ系)では「デビュー夫人」としてさまざまなことに挑戦。一昨年の夏には300円ショップで爆買い経験をして、

「来週、ドバイに行くので」

 と、カッコよく説明した。

 が「目的は?」と聞かれると「イッテQ」と答えて、笑わせていた。そう、彼女はいまや国際的セレブというより、もっぱら「イッテQの人」なのだ。実際、その8日後の『イッテQ』では「デヴィ女子会 in ドバイ」と題した企画で、若いタレントたちとともに絶叫マシンに乗せられたりしていた。

日本テレビ『世界の果てまでイッテQ!』では“デヴィ女子会”を結成。若い世代とも対等にわたりあっている。芸能界のライバルはイモトアヤコなんだとか(『世界の果てまでイッテQ!』番組公式インスタグラムより)

 つい先日も、手越祐也がSNSに夫人とのツーショットを掲載。『イッテQ』仲間ならではの仲良しな雰囲気が話題になった。このまま「おもしろいおばあちゃん」だけで生きていくのも悪くないのではないか。

 もっとも、クラブホステスから大統領夫人、夫の失脚、テレビタレントへという波瀾万丈な日々を送ってきた彼女には、平和すぎる老後もちょっと物足らないのだろう。80歳の誕生日には、

「殺されるかと思ったり、地獄のような日々もありましたが」

 と、過去を懐かしんでもいた。

 普通の人にとっては一大事となる裁判も、彼女にとってはそうでもない。むしろ、人生を刺激的にするスパイスみたいなものなのだから。

宝泉薫(ほうせん・かおる)アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)