※写真はイメージです

「診察時、患者さんに『健康のために痩せましょう』と言いながら、私自身も仕事や家事、子育ての忙しさにかまけ、なかなかダイエットを続けられませんでした」

内臓脂肪を減らして痩せる身体をつくる!

 そう話すのは医師の齋藤真理子先生(46)。約1年前、現在より6kg太っていたときは院長としての業務が忙しく、朝と昼はほとんど食事をとらなかった。

5分程度の休憩時間ができると、近くにあるまんじゅうやクッキーといったお菓子をよくつまんで空腹をしのいでいたんです。結果、血糖値が急上昇したり、だんだん『脂肪肝』になっているな、という意識がありました」(齋藤先生、以下同)

 脂肪肝とは中性脂肪が肝臓にたまった状態のことで内臓脂肪の一種。放置しておくと肝硬変や生活習慣病になるおそれがある。実は脂肪肝は近年、お酒を飲まない人や若い女性にも急増している。その多くは食べすぎや、甘いもののとりすぎが原因だ。

 また、脂肪が増えれば内臓の働きも悪くなり、基礎代謝も低下する。齋藤先生もだんだん代謝が落ち、量は食べていないのに体重は増えていた。

そのころは糖質オフに考えが縛られていたせいで、日中食べない分、夜にお肉を大量に食べていたんです。

 でも、脳は疲れているけれど運動量は少ないので、結果的にカロリーオーバー状態で(笑)。私は食べるのが好きでステーキなら200gはペロリと食べられちゃうんですよ」

「このままではダメだ」と、一念発起し、内臓脂肪を減らすといった研究報告を目にしていた、天然成分の中鎖脂肪酸で作られる「MCTオイル」を買ったことから齋藤先生の“ラクちんダイエット”生活は始まった。

内臓脂肪を減らしてマイナス6kg!

MCTオイルとは?
 ココナツやパームフルーツなどヤシ科の植物に含まれている中鎖脂肪酸のみで作られたオイル。MCTは中鎖脂肪酸のことを指す。消化・吸収が早く、体脂肪として蓄えられにくい。

無理なく続けばダイエットは成功する

「今まで私のダイエットが成功しなかったのは、ずっとは続けられなかったから。その原因を考えると、忙しくてできないという以外にも、すぐに効果が実感できなかったり、キツイと感じてモチベーションが保てなかったことが大きかったんです。

 それで、満腹感をある程度保てるなら、私のようなダイエット難民でも痩せられるのではと考えました」

 齋藤先生は最初、MCTオイルを大さじ1杯、お昼の鍋料理にかけて食べたという。

MCTオイルは一般的な油と比べ、脂肪の代謝を高めてエネルギーにかえるスピードが速いため、50年以上前から医療現場で注目されている油なんです。また、無味無臭なので食事の味を邪魔しないという利点もあります

 ほかにも糖質を少し減らすなどしたところ、2か月で6kg痩せて以前の体重に戻った。

「MCTオイルをとり始めて体調面でいちばん変化を感じたのは、冬でも手足がポカポカするようになったこと。子どもたちから『お母さんあったかい』と言われるようになりました。それで肌ツヤもよくなるんです。

 また、風邪などの感染症にかかりにくくなったのは、免疫力が上がったからだと考えています」

 痩せたあとは患者から「先生、前は顔丸かったよね」と声をかけられるようになる。

何でもあり!MCTオイル活用術
 無味無臭のMCTオイルはどんな食べ物にかけても味を邪魔しない。齋藤先生のおすすめを紹介。
・納豆
 よくかき混ぜてからオイルをかけるようにして。
・焼いたお肉
 ソースにMCTオイルをプラス。お肉ともよくなじみます。
・ご飯
 意外と思われるのがご飯。さっとかけるだけでもっちり感アップ。
・サラダ
 MCTオイルを使ったドレッシングならサラダとも相性抜群。

ラクに続けられる痩せる食事術3原則

「実際、患者さんをはじめとするモニターに、私と同じダイエットを3週間試してもらうと、77%の方に体重の減少がみられ、そのうち85%の人が『今後も続けられそう』とおっしゃってくれました」

 内臓脂肪を落とすには“脂肪燃焼体質”になることと、血糖値を安定させることが大切だ。

 齋藤先生は日々の食事に3つのルールを作った。

 第一にMCTオイルを朝・昼・晩の食事にかけて食べること。

「最近の研究で、人間の身体は糖質以外にも脂肪を分解してできる『ケトン体』をエネルギー源にできることがわかってきました。

 このケトン体が多い身体になれば、簡単に脂肪燃焼体質になれます。MCTオイルには、このケトン体の生成を促す効果があるんです

 さらに、脂肪燃焼体質になると、内臓脂肪をエネルギーとして使うようになるだけでなく基礎代謝もアップする。また、ケトン体は脳のエネルギー不足を補うので、ダイエットのイライラや不安を鎮めてくれることも期待できる。

「MCTオイルもカロリーはありますが、同じ糖質の量を食べてもこのオイルをかけた人のほうが代謝がよくなり、痩せたという研究結果が出ています。ただし、とりすぎると消化器に負担をかけるので、1日3回に分け、摂取量は1日最大で大さじ3杯にしましょう」

 第二に、“満腹フード”で糖質を減らすこと。糖質はエネルギーにかわりやすく、とりすぎると血糖値を急上昇させるだけでなく、余剰分は脂肪として蓄えられてしまう。

 そのため、糖質を少しでも減らすと、ケトン体がエネルギーとして使われて脂肪燃焼体質になり、内臓脂肪を減らすことにつながる。とはいえ、糖質をゼロにするとリバウンドしやすいため、齋藤先生は糖質を減らしつつ満足感をキープする方法を考案した。

ご飯やパンの量を減らした分、低糖質な別の食材でかさ増しするか、置き換えることがポイント。お米に豆腐や鶏ひき肉を混ぜて炊飯した、かさ増しご飯は簡単に作れておすすめです。置き換えるなら、バナナやサラダチキン、玄米などを選んで」

 第三に血糖値をキープするための“ヘルシー間食”をとること。食事をとらない時間が長いと血糖値が下がり、身体がエネルギー不足に。その状態で食事をすると急激に血糖値が上がり、脂肪をため込んでしまう。

「ダイエット中は『おやつ=悪』と思いがちですが、上手にとれば問題ありません。食事から3〜4時間たち、空腹を感じたら間食をとって。

 市販のものなら食物繊維が豊富な茎わかめ、無塩タイプのナッツ、70%以上の高カカオチョコレートなどをちょっと口に入れ、血糖値を上げましょう。私はポットに入れたみそ汁を持ち歩いていました

 ほかにも、わらびもちやレアチーズケーキなど低糖質のものを選んでもOK。

「内臓脂肪が多いと慢性的に体内で炎症が起こるので、さまざまな不調も起こります。このダイエットで体調がよくなったり、寝起きがよくなった、便秘や肌荒れが解消したという方も。体質を変えたいと思っているなら、ぜひトライしてみてください」

ラクちんダイエット3原則

“MCTオイル”で痩せ体質に

 健康と美容にうれしい効果を期待できるMCTオイルを食事のたびに料理にかけて食べるだけ。目安は1回大さじ1。最大で1日大さじ3杯以内に調整すること。

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“満腹フード”で主食を糖質オフ

 1食分のご飯やパンの量を減らすか、白米に玄米を混ぜたり、低糖質な食材を足して糖質オフを。サラダチキン、バナナなど満足感を得られる食材に置き換えても◎。

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“ヘルシー間食”で血糖値キープ

 食後の血糖値を一気に上げないため、間食をとること。スイーツは避け、みそ汁などのスープ、ナッツ、茎わかめなど低糖質なものを選ぼう。

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オイルで効率的に食べて痩せる生活を!

 今ではダイエットだけでなく健康や美容、認知症予防にもいいとされているMCTオイル。国産品も販売され、スーパーで手軽に購入できるが、まだなじみが薄い人も多いのではないだろうか。

「腸内環境をよくしたり、消化を助けてくれる働きもあるので、実は食事をあまりとれない人や高齢者の食事などにも使われています。しかし、とりすぎると急激な胸焼けに襲われたり、お腹を下すこともあるので、使い方には注意してください」

 過去には歌舞伎俳優の市川海老蔵(現・團十郎)さんがブログに、MCTオイルを間違って大量に飲み、激しい腹痛や下痢、吐き気に襲われたことを明かし、話題となった。

「とりすぎると消化器への強い刺激になります。最初に使い始めるときは、1日小さじ1/2杯から始め、体調を見ながら1週間ぐらいかけて量を増やしていってください」

 また、空腹時の摂取にも注意が必要だ。

「例えば、朝食で最初にサラダなどの固形物と一緒に食べるのは問題ないですが、スムージーなどに混ぜて飲むと、胃腸への負担が大きいので避けて。ただ、空腹時でなければ、飲み物に混ぜて飲んでも分離はしますが問題ありません。

 さまざまな健康効果を示す論文が出ているので、忙しい人ほどMCTオイルを上手に取り入れてほしいですね」

MCTオイルには食後、血糖値が上がるのを抑える効果も期待できるという ※写真はイメージです

MCTオイルの注意点

 MCTオイルは消化されず素早く腸へとたどり着くため、量をとりすぎると、胃腸に負担がかかり、腹痛や嘔吐を引き起こす可能性が。摂取には注意が必要だ。

とりすぎ&空腹時の摂取は厳禁

 1日の上限量、大さじ3を守ること。最初は小さじ1/2から始めるのがベター。特に朝など空腹時は胃腸を刺激する可能性があるので、ドリンクではなく、サラダやスープなどの固形物にかけて摂取しよう。

加熱はせずにそのまま!

 サラダ油と比べて発火の温度が低いため加熱調理には不向き。炒めたりすると煙が出たり、焦げやすくなる。必ず、生のまま調理するか、料理にかけて使って。

朝・昼・晩に分けて摂取

 MCTオイルの効果が期待できるのは、約3時間~最大10時間。こまめに摂取するほうが効果を期待できるので2、3回に分けるほうがよい。

簡単レシピ(1):満腹フード「豆腐ご飯」

 かさ増し術で満足感はキープ!

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 約4割の糖質カットになり、満足感が増す「豆腐ご飯」がコレ! 米(1合)を水で洗い、炊飯器の目盛りに合わせて水を入れる。

 大さじ1の水を捨て、木綿豆腐(1丁)をその上にのせ、通常どおりに炊飯。炊き上がったらしゃもじで豆腐とお米を混ぜ合わせて。

 絹豆腐だとベチャッとするので木綿を選ぼう。豆腐のかわりに米1合に対し、鶏ひき肉200gでかさ増しすることも。

簡単レシピ(2):ヘルシー間食「葛入りみそ汁」

 葛粉の糖質で血糖値を上げる!

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 齋藤先生が水筒に入れて持ち歩いているのが葛粉を入れたみそ汁。糖質を含む葛粉が入っているので、食後3〜4時間後に飲むと血糖値の急降下を防ぐことができる。

 葛粉(大さじ1)は事前にお湯(分量外)で溶いておき、水筒へ。みそといりこだし(各大さじ1)を加え、お湯(200〜300ml)を入れる。

 長いスプーンなどでよくかき混ぜれば完成。少しでも空腹感を感じたときに少量ずつ飲むとよい。

齋藤真理子先生●形成外科専門医、医学博士。分子栄養学認定医。現在は山本メディカルセンター院長。テレビをはじめとするメディアでも活躍中。近著に『勝手に内臓脂肪が落ちていく食事術』(アスコム刊)。

教えてくれたのは……齋藤真理子先生●形成外科専門医、医学博士。分子栄養学認定医。現在は山本メディカルセンター院長。テレビをはじめとするメディアでも活躍中。近著に『勝手に内臓脂肪が落ちていく食事術』(アスコム刊)。

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取材・文/鈴木晶子