表現者として評価も高いアイナ・ジ・エンドだが、今回は不適切だった?

《手話をことばとしているろう者には何を言っているかひとこともわからないMVでした》《健常者の傲慢》

 SNS上で糾弾されているのはアーティストのアイナ・ジ・エンド。西島秀俊主演の『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』(TBS系)の主題歌に起用されている『宝者』のMVで手話に挑戦したというが、手話を伝達手段としている人々にはまったく何を言っているのか伝わらなかったようで冒頭の声があふれたのだ。

「ほぼダンスでした」発言が物議

「MVにはアイナさんともう1人の女性がテーブルを挟んで手話のやりとりをしているような場面があるのですが、これについてアイナさんは“手話は振り付けと同じ感覚でほぼほぼダンスでした”と振り返ったことが、“ダンスと手話を一緒にしないで”と問題視されました。さらに、伝わらない手話ダンスに“健常者の上から目線”などの指摘もありました」(スポーツ紙記者)

 これまでにも多くのアーティストが、手話を振り付けに取り入れてきた。

「有名なのは酒井法子さんの『碧いうさぎ』でしょうか。こちらは酒井さんが主演したドラマ『星の金貨』で、ろう者を演じたことから手話が取り入れられたのですが、手話を取り入れた歌はサビだけ手話というパターンが多く、サビだけでは全体の意味がわからないでしょう。ただ、酒井さんの手話はとても上手で、ドラマ上では完璧だったと評価されています」

 と解説するのは手話通訳の経験もあるジャーナリスト。

評価されている楽曲も

 逆に手話歌として評価されているもののひとつとして、『パプリカ』を挙げる。

「『パプリカ』は全編手話バージョンが制作され、きちんとした監修が入り完成したもの。歌っているのが子どもたちで、変な色をつけることもない。歌詞もわかりやすく、サビだけ手話のように途中でぶつ切りされていないので入ってきやすいと評判でした」

 手話歌として誤解されている歌についても言及する。

SMAPの『世界に一つだけの花』にも、サビで手話のような振り付けがありますがメンバー自身も“手話ではなく振り付けです”と公言しています。当時、SMAPや旧ジャニーズのアーティストは手話などをとてもデリケートに扱っていたので、簡単に“手話に挑戦しました”とは言いませんでしたね」

かつてはBiSHの一員として活動していたアイナ・ジ・エンド(グループの公式Xより)

 冒頭のアイナ・ジ・エンドに話は戻り、

「こうして話題になると“手話を知ってもらうきっかけになる”と言う人たちがいます。それを決めるのは聴者ではなく、ろう者であるべき」

 と、お灸をすえる。

 アイナの活動に詳しい音楽ライターは、

「アイナさんは言葉を大切にするアーティストなので、手話を軽んじているなどということは決してない。誰よりも表現には気を配っているはず」

 “ダンス”と表現しなければ、こんなに炎上することもなかったのではないだろうか。