柄本佑 撮影/伊藤和幸

「オファーをいただく前に、『光る君へ』は大石静さんが脚本を書かれ、吉高由里子さんが主演するとニュースで知っていて。おふたりとは同じ組(ドラマ『知らなくていいコト』2020年)でご一緒した現場がすごく楽しかったので。

 どこかで“ちぇ、いいな。楽しそうじゃん”って思っていたんでしょうね(笑)。お話をいただき、その座組に入れる喜びがまずありました」

大河ドラマで藤原道長を好演中

 大河ドラマ『光る君へ』で藤原道長を好演している柄本佑(37)

柄本佑 撮影/伊藤和幸

「藤原道長のもともとのイメージは、学校で習う権力者としてのヒールっぽい感じ?自分の娘をどんどん入内(じゅだい)させて、勢力を強めていったという感じでしたが、細かいディテールは知らなくて」

 名門・藤原家ののんびり屋の三男坊が、政治に関わらざるをえなくなり、あれよあれよという間に権力を握っていく……。

「最初の打ち合わせでそんな道長像を聞きまして。大石さんは“映画『ゴッドファーザー』のアル・パチーノみたいな像”とおっしゃっていて。

 ちょうど、池袋の映画館で『ゴッドファーザー PART2』を見たばかりだったので、“あれかい!”と。道長以上に、そっちのほうがプレッシャーでした(笑)」

台本を見て「もう本当にどうすんの!?」

 少年期にまひろ(吉高由里子、後の紫式部)と出会い、互いに惹(ひ)かれ合う。注ぐまなざしは熱く、ピンチには必ず駆けつける。そんな道長に“色気がすごい”と女性視聴者はざわめいている。

「あははは。ありがたいですけれども、また同時にプレッシャーも感じますね(笑)」

 その色気の出し方について聞いてみると、

衣装、メイク……ひとりでやってるわけではないというところかなと思います。いちばんは、大石さんの世界観が確立されているので。逆にその邪魔をしないことを考えています。

『知らなくていいコト』でも大石さんの台本には“カメラを構える姿がなんともセクシーだ”とかあって。“もう本当にどうすんの!?”みたいな(笑)」

柄本佑 撮影/伊藤和幸

 まひろと道長。ふたりの気になる今後は?

「やっぱり言葉で表せられるような惹かれ合いの強さじゃないんですよね。ふたりは、どこに惹かれるか、どこを憎むかが同じというイメージかな。そこを含めての“ソウルメイト”。くしくも出会ったふたりが、どんなに会わないようにしていてもつながってしまうというイメージ。

まひろは、先に言ったことと真逆のようなセリフを言ったりするんですね。でも、どっちもウソじゃない。大石さんっていう人は、なかなかいけずなシーンを書きますな(笑)。吉高さんと協力してバディを組んで、大石さんが描くこの“厄介なもの”に挑んでいるという感じがしますね」

柄本佑 撮影/伊藤和幸

この偉さを超える役はないかも

 今後の道長は政治と“本当の自分”とのギャップに葛藤しながらも、頂点へと上っていく。

「今後、この偉さを超える役もなかなかないかもしれないですね(笑)」

 権力者を演じることには、楽しさも難しさも。

「道長に関しては、やっぱり“最高権力者”だと思わないことかな。結局、ひとりの人間であるから。当然、そういう差配や帝の方向性を導く瞬間はあるけど、第9回の出来事はベースにあると思います」

『光る君へ』毎週日曜夜8時〜(NHK総合)ほか

 道長とまひろが懇意にしていた散楽の一員・直秀(毎熊克哉)。実は義賊で、衝撃的で悲しい死を迎えた。

「よかれと思ってやったことが、悲劇につながった。不毛なことに初めて直線的にぶつかった。

 今後、道長の“民を思う”という部分が結構出てきますが、やっぱりあの出来事と、末っ子でのんびり屋気質であったことは大事に。そうでなければ、最高権力者もふわふわしたものになってしまう気がしています」

『光る君へ』毎週日曜夜8時〜(NHK総合)ほか ※画像をクリックするとHPにジャンプします。

光る君へ』毎週日曜夜8時〜(NHK総合)ほか