3月中旬から、車椅子ユーザーの映画館利用を巡る議論がネット上で過熱している。
「事の発端は、ある車椅子ユーザーが映画館でのトラブルをX(旧ツイッター)で公表したことです。都内にあるイオンシネマを訪れた際、従業員の手を借りて車椅子スペースではない『プレミアムシート』で映画を鑑賞したところ、従業員の時間的制約の事情などから、今後は別の劇場に行くよう、すすめられというのです」(スポーツ紙記者)
イオンシネマ側は、不適切な対応があったとして謝罪文を発表したが、
「事前に映画館に確認の連絡をするべき」
「プロじゃない従業員に介助させるのは危険だ」
「車椅子で観賞できる場所が限られているという問題があるので、施設の作り自体を改善するべき」
といった、さまざまな意見が飛び交う事態となっている。
まだまだ議論が続きそうだが、そもそも映画館での車椅子ユーザーの利用の現状はどうなっているのか。また、今後、車椅子ユーザーのために検討していることや改善していくことはあるのか。シネコン各社に取材を申し込むと、5社からの回答を得ることができた。
まず、今回の議論のきっかけとなった『イオンシネマ』を運営する『イオンエンターテイメント』。現在の対応については、
「公式ホームページのお問い合わせに掲出させていただいておりますので、ご参照ください」
とのこと。ホームページを確認すると、
車椅子ではオンライン予約はご利用できない
《スロープ、車椅子スペース、また車椅子のお客さま用のトイレをご用意しておりますが、劇場によりご用意のない設備もございます。また、車椅子スペースは数に限りがございます。詳しくは劇場までお問い合わせください。
また、車椅子をご希望の場合は、ご不便をお掛けいたしますが「e席リザーブ」オンライン予約はご利用いただけません。各劇場の有人窓口までお越しください》
という記載があった。そして、今後については、
「お客さま対応の教育再徹底と設備の改善を進めてまいります」
との回答だった。
続いて、全国で70館以上を運営している『TOHOシネマズ』は、
「車椅子でお越しになったお客様は、各スクリーン内の車椅子スペースで鑑賞していただけます。
また、車椅子スペース以外の座席で鑑賞される場合は、お客様ご自身か付き添いの方の介助によって、車椅子から座席に移動していただくようにお願いしております。この場合、ご本人のほか付き添いの方1名まで割引料金でご鑑賞いただけます。その際、緊急事態が発生した場合の安全を確保するため、非常口に近い座席をご案内しております」
と、非常時の対応も考えられているようだ。そのうえで、
「弊社映画館では、落下の危険を伴うため、お客様の身体や、お客様が乗ったままの車椅子を弊社従業員が持ち上げるなどの対応は原則として行っておりませんが、弊社従業員の肩や手を支えにしていただくようなサポートや、空いた車椅子を運ぶなどのお手伝いなどは、可能な限り積極的に行うようにしています」
と続けた。今後については、次のように回答した。
従業員が車椅子を持ち上げる行為は控える
「弊社では、すべてのお客様が映画を楽しんでいただけるような劇場づくりを目指しています。そのなかで、弊社映画館の設備面のバリアフリー化をさらに進めるなど、車椅子でお越しになるお客様に対するサービスのあり方を、常時、継続的な課題として取り組んでおります」
『ユナイテッドシネマ』などを運営する『ローソン・ユナイテッドシネマ』にも聞くと、現状は、
「原則的に車椅子のまま鑑賞できるスペースをご案内しております」
と回答。今後について検討していることは「現時点では特にありません」とのことだった。
『MOVIX』や『ピカデリー』などを運営する『松竹マルチプレックスシアターズ』は、
「弊社では、全劇場、全シアター内に車椅子スペースを、また館内に多目的トイレもご用意しております。また、お客様の安全を考慮し、弊社従業員がお客様の車椅子や身体を持ち上げるなどの行為は控えさせていただいております。
今後も法令順守の下、お客様の安心・安全を配慮し、映画をお楽しみいただける環境づくりに努めて参ります」
と回答した。
安全を考慮し、お断りする場合がございます
最後に、『109シネマズ』などを運営する『東急レクリエーション』は、ホームページにも掲載されている以下の対応をしているとのことだった。
《一部劇場を除き、各シアターにスロープ、車椅子スペースを設置しております。
車椅子スペースには数に限りがございますので、場所・席数・空き状況については直接各劇場にお問い合わせをお願いしております。
座席に関しましては、非常時におけるお客様の安全を考慮し、非常口に近い場所に設置・ご案内をさせていただいております。
移動に関してサポートが必要な場合はお声かけいただいておりますが、お客様の身体や車椅子を持ち上げるような対応は安全を考慮し、お断りする場合がございます》
今後についても、これらに則った対応を予定しているという。
すべての人が気持ちよく映画を鑑賞できるよう、改善が進むことを願いたい。