議員に「ハラスメント」を語る資格はあるか──。
茨城県議会はハラスメント対応窓口を今年4月に設置する見通しだった。ところが、最大会派「いばらき自民党」会長が「議員は自制(心)を持っている」などと発言。設置を再調整する事態となっている。
SNS大荒れ「ハラスメントは受けたほうが感じるもの」
発言したのは同会会長の白田(はくた)信夫議員(71)だ。近年、被害が相次いでいるセクハラやパワハラなどの被害を受けて設置を検討。弁護士が調査した上で、どう対応したら良いかを県議会議長に報告し、議長は対象者に注意等を行うというものだ。
今回の発言を受け、SNS上では
《自分が1番偉いと思ってる議員が自制を持っているとでも?ありえない》
《なぜ自分たちがハラスメントをやらないと言う自信があるのか》
《ハラスメントは受けた方が感じるもの。ハラスメントをするのは議員の方が多いのだから、なぜ議員の物差しで物事を考えなければならないのか》
などと、批判的な意見が多く投稿されていた。
補欠選にも影響か?
では、この白田議員とはどのような人物なのか。事情を知ると地方紙記者はこう話す。
「白田議員は、1983年から真壁町議会議員を3期務め、1995年1月から茨城県議会議員になりました。自民党の青年局次長や商工会振興議員連盟の会長などを歴任しています」
そんな白田議員が発言した「自制を持っている」という内容。反発は自民党支持者でも強いようだ。
「自民党のパーティー券問題や社会的なセクハラ、パワハラ問題、SM緊縛パーティーなどがある中で、議員らへの信頼度は急激に下がってきてます。各地で補欠選挙も控えている中で、これ以上自民党に迷惑をかけるのは……。理解に苦しみますね」
設置を拒否するのはなぜなのだろうか。前出の地元紙記者は続ける。
「自らに何もやましいところがなければ、ハラスメント窓口を設置することに反対しないはずですよね。ハラスメントに近いことをやってしまったことがあるのか、それとも今後やってしまいそうなのか。逆に怪しく見えてしまいましたね」(地元紙記者)
茨城県民も困惑気味だ。
「国会議員の中でも頑張っている人はいらっしゃるのでしょうが、このような発言をされると本当に困惑します。しかも県議会の重鎮ともいえる方。茨城県議会の良識が下がってしまったと感じました」(40代女性・茨城県民)
「議員に期待できない」
議員側のハラスメントに対する意識にも苦言が出ている。
「以前『マルハラ』が話題になりましたが、現代は何でもかんでもハラスメントになる時代。白田議員は『茨城県民に選ばれた人間がハラスメントという行為はできない』と言及していましたが、それ当たり前の話ですよね。
皆がハラスメント行為を知り、自制すればハラスメントで悩む人もいなくなるはず。だからこそのハラスメント対応窓口なわけで、設置することでハラスメント意識が向上するということも目的の一つです。自分が知らないハラスメントを知る良い機会なんです。
パーティー券問題も然り、自分で自分のことを律し、自治体の議員や国会議員らの威厳を守ってほしいですが正直、期待は薄いです」(地元紙記者)
茨城県内では3月21日に水戸市議会で「ハラスメント根絶条例案」を全会一致の上可決。26日から施行するなどの動きがある。しかし、困るのはハラスメント当事者だ。トラブルになってからでは遅い。早期のハラスメント窓口設置を求めたいところだ。
取材・文/小林英介