「喉元過ぎれば熱さを忘れる」とはよく言ったもの。
旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP./STARTO ENTERTAINMENT)の代表だった故・ジャニー喜多川氏による性加害事件の重大さを考慮して、昨年はテレビ各局で所属タレントの起用を控える流れができていたのはご存知のとおり。
しかしテレビ朝日では今年4月期、旧ジャニのタレントが主演する連続ドラマを3本、準主役に起用しているドラマも含めれば計4本もの旧ジャニ出演ドラマを放送するようだ。
テレビ朝日、旧ジャニタレ起用ドラマが4本
テレ朝でスタートするのは、まずは旧ジャニの大看板である木村拓哉(51)主演の『Believe-君にかける橋-』。そして人気シリーズとして定着している井ノ原快彦(47)主演の『特捜9 season7』。続いてKing & Prince・永瀬廉(25)主演の『東京タワー』。また、石原さとみ(37)主演の『Destiny』には、2番手キャストの準主役としてKAT-TUN・亀梨和也(38)が出演する。
テレ朝が4月期に旧ジャニ出演ドラマを大量制作していることを報じたネットニュースのコメント欄には、次のような意見が寄せられていた。
《旧ジャニとテレ朝は一連托生ってわけね。共に沈むがいいよ》
《能力のないテレビ局 というか番組製作者かな。安易に旧ジャニーズだったら視聴率とれると思ってる。あー、テレ朝も終わりました》
《露骨に知って知らんぷりして非を他人事のようにして逃げるフジやTBSやNHKよりはマトモな対応だと思う》
テレ朝と対照的な布陣で臨むフジテレビ
そんな旧ジャニにべったりのテレ朝と対照的な布陣で臨んでいるのがフジテレビ。
フジといえば、20年以上続いていたKinKi KidsとTOKIOの冠バラエティー番組枠を3月で終了させたことでも話題となっていたが、4月期GP帯ドラマの主要キャストには、旧ジャニ俳優は起用されていない。
ただ、それだけならばフジの英断だという声が多くあがりそうだが、4月期のフジは旧ジャニ俳優をキャスティングしない代わりに、辞めジャニ俳優を積極的に起用している。
まずは、山下智久(38)が旧ジャニ退所以来となる約5年ぶりの民放連ドラ主演を飾る『ブルーモーメント』。ほかにも、錦戸亮(39)が同じく旧ジャニ退所以来の約5年ぶりに民放連ドラにレギュラー出演を果たす『Re:リベンジ-欲望の果てに-』。錦戸は赤楚衛二(30)演じる主人公と対をなす役どころで、2番手キャストの準主役に抜擢されている。
フジの対応には、“旧ジャニがダメなら辞めジャニ”という露骨な鞍替えだと見る向きも少なくないのだ。
そもそも故・ジャニー喜多川氏の性加害事件が大きく問題視されるようになるまでは、辞めジャニタレントたちは民放の地上波テレビ番組への出演が、かなり難しくなるというのが周知の事実だった。
SMAPの元メンバーでさえ民放の番組出演がなくなり、昨年1月期に草なぎ剛(49)がフジテレビの『罠の戦争』で民放連ドラ主演に返り咲いたときには、まるで偉業か快挙かのように驚きをもって報じられていたほど。
NHKは比較的にもとから辞めジャニに対して寛容なスタンスで、山下を連ドラ主演に抜擢したり草なぎを大河ドラマの重要キャラに抜擢したりしていたのだが、辞めジャニが民放連ドラに出演するのは、かなりハードルが高かったのである。
こういった背景があり、性加害問題がまだ尾を引く旧ジャニを4月期ドラマで使わない代わりに、“辞めジャニならOKでしょ”とばかりに山下&錦戸をキャスティングしたように見えるフジの姿勢に、賛否両論が巻き起こっているというわけだ。
ムロ降板で旧ジャニに頼った日テレ
一方、『セクシー田中さん』原作者の急死問題が続くなか、4月期ドラマをスタートさせる日本テレビの対応にも注目が集まっている。
4月期の日テレドラマに主演が内定していたムロツヨシ(48)が緊急降板。
ムロが主演予定だったドラマが小学館の漫画原作モノで、しかも『セクシー田中さん』と同じ人物がプロデューサーを務めることになっていた。
このドラマ制作が世間から問題視されたため、作品だけ変えてキャストは継続するという異例の対応が取られる流れになっていたが、その代替ドラマへの出演をムロが辞退したというわけである。
そして、主演予定だったムロが降板したことで、白羽の矢が立ったのが旧ジャニのSixTONES・森本慎太郎(26)。彼がGP帯単独初主演することになった『街並み照らすヤツら』は、原作のないオリジナル作品だ。
日テレはこれまでに旧ジャニ主演ドラマを数多く放送しているし、毎年『24時間テレビ』のメインパーソナリティーに旧ジャニグループを抜擢。今年3月いっぱいで嵐・櫻井翔(42)がMCのバラエティー番組『1億3000万人のSHOWチャンネル』を終了させているとはいえ、テレ朝以上にべったりのイメージを持っている人も多いはず。
『セクシー田中さん』事件の余波でムロ主演ドラマがぽしゃったため、日テレのドラマ班がてんやわんやしていたことは想像に難くなく、森本が急遽オファーされた主演を引き受けてくれたということは、旧ジャニが日テレに貸しを作った形になる。
そのため日テレは、今後さらに旧ジャニ俳優の主演ドラマを量産していくことになるかもしれない。
余談だが、異例の短期間で台本を頭に入れて役作りしなくてはいけない森本の苦労は相当なものだろう。が、彼にとっては“やり得”になる可能性が高そう。
というのも、もしもドラマが大コケした場合、普通なら主演俳優が責任を追及されてしまうことが多いが、今回に限っては責められるのは間違いなく日テレで、森本には同情票が集まるに違いない。そして、ヒットしても日テレが称賛されることはなく、森本が大絶賛されることになるだろう。
森本の労力やプレッシャーは大変なものになっているだろうが、俯瞰してみると森本にとって“負けはない戦い”と言えるのである。
――4月期は旧ジャニに、テレ朝が依存状態で日テレが助けてもらった形になっており、フジは4月期だけ見ると決別しているようにも思える。
ただそれはあくまで4月期というミクロ視点の話。テレビ局の体質はそうそう変わらないだろうから、マクロ視点の長い目で考えた場合、フジも旧ジャニに頼る時期がまた来るのではないだろうか。