近年、『相棒』のような男同士のものよりも、男女がコンビを組む“バディ”ドラマが増えている。4月クールを見ても、篠原涼子&バカリズムの『イップス』(フジテレビ系)や今田美桜&山本耕史の『花咲舞が黙ってない』(日本テレビ系)など男女バディの話題作が出そろった。そこで30~50代の男女1000人にアンケート。多くの人がハマった男女バディドラマを振り返りつつ、愛される理由を検証!
面白かった男女バディドラマ
まずは5位から。ランクインしたのは、中谷美紀と渡部篤郎が異色刑事コンビを演じた『ケイゾク』('99年 TBS系)。
退廃的世界観の中、ユーモアいっぱいのミステリーが展開していく演出の堤幸彦ワールドが爆発した怪作だ。
「中谷さんと渡部さんの独特の掛け合いが醸し出す空気感が好きでした」(宮崎県・51歳・男性)、「今まで見てきた刑事ドラマとはまるで違っていて、エッジのある演出とコミカルな芝居に夢中になりました」(東京都・48歳・男性)などクセのある斬新な作風にハマった人が多かったよう。
「男同士のバディの場合はキャラ分けをしなきゃいけないので『相棒』の右京さんと亀山みたいなクール&熱血という組み合わせが多い。一方、男女バディはお笑いコンビのようにボケとツッコミになるんですね」とドラマウォッチャーの漫画家・カトリーヌあやこさんは分析する。
「天才や型破りの個性的なキャラがボケ役で、それを相棒が『いいかげんにしなさい!』とツッコむ。男女バディの基本がこれで、その草分けが『ケイゾク』なんです。
中谷さん演じる柴田刑事は天才的捜査能力を持ったキャリアですけど、生活能力が皆無で風呂にすら入らない。
そんな彼女に、渡部さん演じる元公安の強面刑事がクールにツッコんでいく。そのやりとりが今までのバディものとはまるで違っていて抜群に面白かったです」
4位は木村拓哉&松たか子コンビの『HERO』('01年ほか フジテレビ系)。
「つかず離れずの2人のやりとりが物語を盛り上げてくれた」(山形県・55歳・女性)、「検事が主人公のドラマは珍しかったし、絶妙なコンビネーションと検察内の人間関係が面白かった」(千葉県・54歳・男性)。
バディものであると同時に群像劇でもあり、阿部寛、小日向文世、松重豊、杉本哲太ら実力派が演じるキャラの立った登場人物たちも魅力的だった。
「木村さんが型破りな検事で、まじめな事務官の松さんの反感から物語は始まるんですけど、共に時間を過ごすうちに彼にリスペクトを覚え、いつしか……みたいなのは男女バディものの王道パターン。
『好きなのか嫌いなのかどっちなんだい!?』っていう究極の思わせぶりは、まさに男女バディの醍醐味です(笑)」(カトリーヌさん)
男女バディものは刑事&ミステリードラマと法曹ドラマが多いが、3位にランクインしたのは弁護士ものの名作『リーガル・ハイ』('12年ほか フジテレビ系)。
堺雅人が演じた変人弁護士・古美門のインパクトがとにかく強烈で、新垣結衣扮する若手弁護士・黛が振り回される。
「堺さんの早口長ゼリフが最高。ガッキーとの掛け合いも面白かった」(北海道・55歳・男性)、「性格的に相いれない2人が理解し合っていく展開がよかった」(兵庫県・54歳・男性)
「ミステリーと法曹ものが多いのは、男と女が力を合わせて真実を追い求めるという構図が収まりがいいんでしょうね。『リーガル・ハイ』は人格破綻者の古美門と朝ドラヒロインのような品行方正で前向きな黛という王道男女バディもの。
堺雅人さんの役者としての凄みを見せられた作品ですが、ガッキーの的確なツッコミも素晴らしく、彼女が物語を動かしていった感じもあります」(カトリーヌさん)
1位には小ネタ満載のWボケコンビが
2位は福山雅治主演の人気ミステリー『ガリレオ』('07年ほか フジテレビ系)。バディは新人刑事役の柴咲コウなどが務めた。
「福山さんと柴咲さんの噛み合わない会話が妙におかしかった」(大阪府・52歳・男性)、「くっつきそうでくっつかない2人の微妙な距離感もよい」(神奈川県・42歳・女性)
「クセ強教授探偵と新人刑事という王道ミステリーですが、扱う事件はポルターガイストや人体発火のようなオカルティックなものが多く、それを科学的に解決していくというのが斬新でした。
実は東野圭吾さんの原作では、バディ役は北村一輝さん扮する草薙刑事なんですよね。月9だしヒロインが必要ということで柴咲さんの内海薫という役が作られた。しかも、逆に東野さんは途中で原作に内海を登場させちゃった。さすが実写化に慣れてらっしゃる(笑)」(カトリーヌさん)
そして、男女バディといえばやっぱりこのドラマ。『トリック』('00年ほか テレビ朝日系)の仲間由紀恵演じる自称天才マジシャン・山田奈緒子&阿部寛演じる自称天才物理学者・上田次郎コンビが1位に輝いた。
「淡々かつシュールな2人の掛け合いが面白かった」(埼玉県・41歳・女性)、「小ネタ満載の堤ワールドに阿部さんと仲間さんのきてれつなキャラがハマっていた」(熊本県・55歳・女性)などあの世界観を今でも愛する人は多い。
「男女バディものといえばこのドラマが思い浮かぶ金字塔的作品です。唯一、『トリック』だけがボケとツッコミではなくWボケなんですよ。仲間さんと阿部さんという正統派の美男美女が、どちらもクズキャラを演じたのも画期的。
オカルティックな謎を物理学で解いていくという構造はのちの『ガリレオ』を先取りしていますが、こちらは科学的ではなく手品的なトリックでした。
小ネタを入れながらシュールな世界を展開していくという堤ワールドが花開いた作品でもあります。
『ケイゾク』の中谷さんもそうですけど、堤監督は正統派美人女優をボケ役に仕立てるのがお上手ですよね」(カトリーヌさん)
6位の『アンフェア』('06年 フジテレビ系)や8位の『ストロベリーナイト』('12年 フジテレビ系)のようにダークな世界観のシリアスな刑事ドラマの場合は、クールな女性刑事と熱血な部下という組み合わせになりがち……と、男女バディものの型はある程度できあがりつつある。
「最近は昨年の市役所の税務課を舞台にした『ゼイチョー~「払えない」にはワケがある〜』や、'22年の公正取引委員会を舞台にした『競争の番人』のようにあまり知られていない職業をドラマ化する際、男女バディで両方の目線を作って描くパターンが多い。仕事自体の説明がしやすくなるんでしょうね。
ただ、男同士や男女バディがこれほどあるのに、女性同士のバディものがほとんどないのは残念です。メインキャストに男性がいないと企画が通りにくいなどいろいろ理由はありそうですが、クズな女2人のバディものとか見てみたいですよね。バカリズムさんは女の本性を描くのがお上手なので、お願いしたいです(笑)」(カトリーヌさん)
面白かった男女バディドラマTOP10
1位 『トリック』('00年ほか テレビ朝日系) 104票
出演/仲間由紀恵、阿部寛
2位 『ガリレオ』('07年ほか フジテレビ系) 89票
出演/福山雅治、柴咲コウ
3位 『リーガル・ハイ』 ('12年ほか フジテレビ系)81票
出演/堺雅人、新垣結衣
4位 『HERO』 ('01年ほか フジテレビ系)72票
出演/木村拓哉、松たか子
5位 『ケイゾク』 ('99年 TBS系)60票
出演/中谷美紀、渡部篤郎
6位 『アンフェア』('06年 フジテレビ系) 52票
出演/篠原涼子、永山瑛太
7位 『時効警察』('06年ほか テレビ朝日系) 45票
出演/オダギリジョー、麻生久美子
8位 『ストロベリーナイト』 43票
('12年 フジテレビ系) 出演/竹内結子、西島秀俊
9位 『ライアーゲーム』('07年ほか フジテレビ系) 39票
出演/戸田恵梨香、松田翔太
10位 『うちの弁護士は手がかかる』('23年 フジテレビ系) 35票
出演/ムロツヨシ、平手友梨奈
取材・文/蒔田陽平