小林製薬の「紅麹」を使ったサプリメントの服用により、健康被害を訴える人が増えたため、厚生労働省から関連商品の自主回収を命じる行政処分が下された。
主な症状として腎機能の異常が挙げられ、これまでに5人が死亡、延べ196人が入院(4月4日現在)。いまだに不調を訴える人が後を絶たず、さらなる被害の拡大が予想される。
台湾では紅麹は一般的
現在、回収対象となっているのは小林製薬の紅麹が使用されたサプリとその関連商品であるにもかかわらず、紅麹を使用した商品すべてに疑惑の目が向けられている状態で、風評被害は否めない。
そんな紅麹を、日常的に摂取している国があるという。日本と友好関係にあり、海外旅行先としても人気の隣国、台湾だ。
「日本では、今回の一件で初めて紅麹の存在を知ったという人が多いかもしれませんが、台湾では紅麹はとても一般的で、人々がよく口にするものなんです」
と話すのは、台湾在住の雑誌編集者だ。
「ピンク色のチャーシューを見たことはありますよね? あれは、紅麹を発酵させたもの(紅糟)の色です。料理に発酵紅麹を使うと、鮮やかな色と甘い香りがつき、さらに保存もきくようになるので、古くから使用されています。また、紅麹を使ったビスケットなどもスーパーのお菓子コーナーに並び、うちの子も好きでおやつによく食べています」(同・編集者、以下同)
ヘルシーなイメージもあり、生活に完全に溶け込んでいるというが、実際に健康被害はないのだろうか。
林口長庚紀念病院の毒物専門家で腎臓専門医の顏宗海医師は、大手オンラインニュースメディア『TVBS新聞網』の記事内でこう答えている。
「紅麹を使った食品の紅麹菌の濃度はサプリメントの100分の1~1000分の1なので、その食材が腐敗していない限りは問題ありません」
“赤ちゃんのミルクは絶対日本製”
台湾国内では、紅麹食品よりもむしろ、日本の衛生環境に不安を覚えるといった指摘がSNS上でも多い。
《大手の小林製薬がミスをしたなんて……》
《できればメーカーに返金を求めたい》
《日本製はもはや品質保証ではない》
最近、台湾では中国から輸入された唐辛子粉などの香辛料に工業用染料・蘇丹紅が混入していることがわかり問題となった。肝臓や腎臓の機能低下などをもたらす可能性のある物質で、今のところ健康被害は確認されていないが、台湾当局による検査の甘さが要因ではないかとされている。
こういった事情から、食品の安全性に敏感になっている台湾人は多く、日本での今回の騒動に関しても厳しい目が向けられる。
「台湾の人は、日本の薬やサプリが大好き。私が一時帰国する際は“コンドロイチンサプリを買ってきて”“フルコート(傷薬)を買ってきて”などのリクエストが絶えません。台湾では昔から“日本のものは安全”という認識があるため、今回の件で衝撃を受けた人は多いです。“赤ちゃんのミルクは絶対日本製”という人もいるくらいですから」
訪日外国人の6分の1が台湾人といわれている。インバウンドの大きな要である台湾人からの信頼回復は急務。せっかくの友好関係が発酵どころか腐敗してしまう前に!
取材・文/6線ストライプ制作