「クランクイン前日は寝られなかったです」
4月9日スタートの新ドラマ『Destiny』に、検事の西村奏役で主演する石原さとみ。'22年に第1子を出産後、約3年ぶりに連続ドラマへ復帰する。
漠然とした不安と緊張
「去年3月に映画『ミッシング』(5月17日公開)の撮影をして。それが産後復帰初だったので、もう尋常じゃないくらい緊張して(笑)。ただ、お芝居の面白さには改めて気づきました。まるで新人のような気持ちで(笑)。それを経ての今作。まず“育児と両立できるんだろうか”“大丈夫かな”という漠然とした不安と緊張がありました」
だが、現場に入ると、その気持ちは消え去った。
「共演の亀梨(和也)さんがムードメーカーとして場を盛り上げて、ずっと引っ張ってくださって」
石原演じる奏は、中学生のときに検事だった父を亡くし、母と長野へ移り住む。地元の大学の法学部に進学し、4人の仲間と出会ったことで、閉ざしていた心に温かな風が吹き始める。
「クランクインが5人の仲の良さが絶頂の大学時代のシーンからだったので、一瞬で現場に溶け込めました」
その仲間とは野木真樹役の亀梨のほか、宮澤エマ、田中みな実、矢本悠馬。
「大学生の設定だから“ちょっと頑張ってスキップでもしてみよう”みたいな(笑)。ちょっと浮足立つ感じをみんなでやると、“昔からの友達だっけ?”というくらい、すっごく仲良くなって。いいクランクインだったなと思います」
奏と真樹はみんなに内緒で付き合い始めるも、ある事件によって全員の青春は突然終わる。12年後、検事として働く35歳になった奏の前に、事件以来、消息不明だった真樹が現れる。父の死の真相、仲間の秘密の顔。バラバラに見えていたピースが次々とはまっていき……!
「奏は自分で自分を鼓舞し、他力本願じゃないところがカッコいいなと思いました。だけど“もうちょっと素直になって甘えればいいのにな”と思うところも多々あって。“少し力を抜いていいよ”と言ってあげたくなるキャラクターですね」
ずっと味方でいてくれた人
共演の亀梨は、石原に対して“リーダーシップと熱量をもって誠実に作品に向き合っている”とコメントしていた。
「本当ですか? ありがたいです。自分ではリーダーシップとか、意識してないんですけど」
と照れ笑い。そして、
「本当に“亀梨さんこそ”ですよ。私は、真ん中(主演)だからという気持ちは正直、一切なくて。もう一日一日を乗り越えることで精いっぱい。必死でした」
そんな撮影期間中、亀梨は“ずっと味方でいてくれた”と振り返る。
「いろいろ相談しながら、委ねられた気がします。“この場面って、こういう意味かな?”とか。台本には書かれていない細かい居方……立ちなのか座りなのかも“一回やってみます?”という感じで。撮影中、ずっと一緒に考えたり、話したりしてくれて。優しく励ましてくださったのも心の支えでした」
寝かしつけはセリフを覚えながら
育児をしながらの連ドラ撮影。どうやって乗り越えていたのだろう?
「子どもが生まれるまでは、家に帰っても役を引きずったままプライベートを過ごしていました。でも今は、現場を離れた瞬間に切り替えないといけないので。というか“切り替えなきゃ!”と思う暇もなく、そうせざるを得ない(笑)。それが大変ではあったのですが、仕事とは違うところにある幸せや悩み、充実した時間があることで自然とリカバリーされていたのかもしれないです」
仕事への取り組み方も大きく変わったという。
「すっごい集中力がつきました。セリフを覚えられるタイミングは、生活の中で決まっているので。夜、子どもを寝かしつけながら、携帯でスクショしたセリフを見てずーっとブツブツ繰り返して。時々寝落ちしてしまって“ハッ! ダメだ!! この取り調べのシーンは絶対覚えないと!”なんてことも。だから、寝かしつけながら、取り調べをしていました(笑)」
おちゃめなキュートさは変わらないが、母となってさらに輝きが増したよう─。
初の検事役、役作りはどのように?
「脚本に“整頓する”“整える”など、奏のきっちりした性格をうかがわせる描写があるので、髪もタイトにセットし、しっかり顔を見せて隙を見せないように。でも家で悩むシーンなどでは、ちょっと髪も乱れさせて。逆に大学時代はそういうことを一切意識していない感じにして」
35歳の検事と大学生。演じ分けるのは大変だったのでは?
「大学時代は、亀梨さんやエマちゃん、みな実さん、矢本くんとの空気感に助けていただきました!」
<取材・文/今井ひとみ>