BTS

 韓流ファンにとって最大の試練は、推しが兵役のため活動休止してしまうこと。約1年半も会えない寂しさは相当なものだけど、戻ってくるのを待ちながら楽しむ推し活=待ち活でロスを乗り越えたお役立ち(?)体験談を強者ファン3人が告白

兵役はメンバーとファンとの絆を試す試練

 K-POPアイドルや韓国の俳優が好きな人にとって、推しが兵役に行ってしまうことは哀切極まりない。それはまるで遠距離恋愛や単身赴任のようで、遠く離れた恋人や家族を待つことを彷彿とさせる。

 約550日もの間、推しに会えないロスは大きいが、あるアイドルグループのメンバーはこんな“名言”を残したという。

「兵役はメンバーとファンとの絆を試す試練」

 推しが戻ってくるのをただ黙って待つのではなく、さまざまな「待ち活」で寂しさを紛らわせ、新しい世界を知った人たちの体験とは─。

 もともと音楽が好きで、ジャンルを問わずに聴いていたリンコさんだが2000年代の初め、東方神起が現れたときの衝撃は忘れられないと話す。メンバー全員が歌うま、ダンスうま、ルックス&性格よし! 一気に沼にハマってしまったという。

「最初に好きになったのが東方神起です。デビューからすごい人気でしたし、魅力もすごかったし、ハマらない要素がなくて。なので、最初に兵役のニュースを聞いたときの私のロスっぷりは、重症でした。軍隊に行く推しを見送るのは初体験でしたので、どうしていいかわからず。毎日どうしようとオロオロするばかりで、どんなときでも自然と涙がポロポロと……。家族や友人だけでなく、職場の人も心配するほどでした

仏様の下絵を筆ペンでなぞり描きすると、ざわつく気持ちを静める効果が

 そう語るリンコさんを救ったのが、写仏だったという。

これでもやって気を落ち着かせなさい!と友人から贈られたのが写仏キットです。ボロボロの私を見ていられなかったのでしょう。キットには、模写の見本になる仏様が20体ほど入っていて、ひと月に1体、なぞり描きして仕上げるというものでした。気持ちが静まっていれば迷いのない線で描くことができるのですが、1体目の仏様はガタガタ(笑)。

 それぞれの仏様には御利益があって、またそれが慰めにもなりました。薬師如来は衆生の病気や患いを救う仏様なので、私の恋煩いも救われた気がしましたね。さまざまな煩悩を鎮める仏様を20体仕上げたのが約2年後、ちょうど推しが除隊するタイミングで待ち活に最適でした。完成した絵は可愛いファイルに入れてあります。

 以来、他のK-POPグループにもハマって、何人かの兵役を見送っていますが、やっぱり1人目の喪失感がいちばん大きかったですね」

 写経が心の安定につながることは知られているが、写仏もなかなかよさそうだ。好きな音楽への愛も深まったと、リンコさんは微笑む。

JINとおそろいのデニムジャケット、Tシャツをゲット

 ARMY(=BTSのファン)のチマさんがハマったのは、「ソンミンス」。ソンミンスとは、推しが使っている持ち物や服装、髪の色などをおそろいにすることだ。

貯金を取り崩して推しと同じヴィトンを購入

 音楽番組で『Dynamite』を歌っていたBTSに心を射抜かれた彼女の推しメンは、2022年12月に入隊したJIN。彼が身に着けているものと一緒にしたいと思い、ひたすら同じグッズを集めたという。しかもその多くが『ルイ・ヴィトン』!

JINくんとおそろいのものがとにかく欲しくて、貯金を取り崩して買ってましたね。空港ファッションや、配信で着ていた洋服、アンバサダーで持っていたバッグ、靴、インテリアグッズ……ちょうどハマった時期に、仕事を辞めたので退職金もありましたから。

 私、教師をやっていたんですけど、ずっと働きづめでそれまではお金を使う先もなかったんですよね。プラス、貯めていたものもあったので奮発しちゃいました。男性がよく退職を機にご褒美として好きな車を買うのと同じような感じです

 もちろん全部がヴィトンではないが、いったいどれだけ

お金を使ったの!?という待ち活の結果、まさかのサプライズが起きたという。

なんと昨年、ヴィトンさんからパリのコレクションに招待されたんです。招待席で観覧し、Stray Kidsのフィリックスさんもいて、遠目に見ることができたのはまさにご褒美でした

 お金がかかるのでおすすめはできないが、究極の待ち活といえる。

コレクションを見られたのも一生の思い出ですが、飛行機恐怖症で海外にほとんど行けなかった私が、推しを追いかけて韓国だけでなく北米や南米にまで行けるようになって、世界が広がったのがとてもうれしいです。推し仲間もできて、40歳を過ぎて新しい友達と出会えました

 韓国好きの友人に連れられて、新大久保へ行ったとき、たまたま通りがかった店の前のモニターに流れていたEXOの動画に映るメンバーのKAIに釘づけになったというUさん。

お店の前に30分ほどたたずんで見ていて、この人たちは誰?と調べたらEXOだと。しかも、メンバーのKAIくんを目で追っている自分に気づいて……。どうしてもKAIくんをもっと見たくなって、DVDを買って帰りました。その後、KAIくんの親友がSHINeeのテミンくんだと知って、SHINeeにもハマっちゃいました

 EXOやBTS、SHINee推しのファンたちをまとめる『ロス解消部』のUさんの待ち活は、2年前に始まった。“とにかく推しロスの喪失感をなくす”サークル活動を展開している。

推しの兵役中って、ポカンと心に穴があいちゃうんですよね。私はそれを何度か経験しているので、みんながロスにならないようなコミュニティーを作ったんです。推しが戻ってきたらハッピーな気分になる!という意味でのSNSなのですが、なんと200人ほどから入部させてほしいとメッセージが届きました。

 軍白期(入隊して芸能活動ができなくなる期間)が終わったらどんなスケジュールを打ち出してくるのかをみんなで予想したり、未来日記的なものをつけたり、除隊後のライブ時期も予想したりしてます。でも、チケットが取れないと、そもそもメンバーに会えないので、新大久保にあるチケットが当たることで有名な皆中稲荷神社にお参りに行くことも。ロス解消部のキャラクターである亀のイラストを絵馬に描いて、推しが戻ってきたときにコンサートのチケットが当たるように今から願かけしています

NCT 写真:AFP/アフロ

 活動は強制ではなく任意で、やりたい人がやるようにしているという。

仲間が増えたので毎日がとても楽しいです」

韓国スターの最新兵役事情

 ここで紹介した3人のほかに、自家製キムチを漬ける、四国八十八ヶ所の霊場を巡る、推しに似た仏像を彫るなどのエピソードは、発売中の書籍『待ち活/33 K-POP推しが兵役から戻るまでにしたいこと』(間木まき著・徳間書店)に収められている。

 兵役は韓国男性にとって避けて通れない道。日本人にとっては理解が難しく、デリケートな問題でもある。だからこそ、推しを応援する気持ちをなくさないことが、ペン(韓国語でファン)たちの役割だという。

「泣いてばかりはいられない!」と、さまざまな待ち活を模索している彼女たちには脱帽だ。

スターの2024年兵役事情

SEVENTEEN 写真:AFP/アフロ

 ドラマ『社内お見合い』で人気を博した俳優のキム・ミンギュや、『わかっていても』でおなじみのソン・ガンが4月初めに入隊。K-POPグループでは、4月15日にNCTのリーダーであるテヨンが入隊を控え、今年、NCTには兵役ラッシュが訪れるといわれる。

 昨年末の『NHK紅白歌合戦』に出場したSEVENTEENのメンバーも兵役に就く準備が始まったとの報道が。一方、すべてのメンバーの兵役が終了した2PM、CNBLUE、SUPER JUNIORらはすでに再始動を果たしている。

 EXOはKAIとセフンを残して、他メンバーは除隊。SHINeeはテミンが除隊し、約6年ぶりとなる感涙の東京ドーム公演を終えたばかり。そして、BTSの全メンバーが現在、入隊しているが、この6月にはJINが最初に除隊予定だ。

リンコさん 40代、会社員、東京在住。東方神起をはじめ、SUPER JUNIOR、BTSやStray Kids、NCT、SEVENTEENなど、K-POPグループはみんな大好き。

チマさん 40代。教師を辞めた後、現在は教育系の研修講師に。BTS箱推しだが、推しメンはJIN。待ち活のために時々、上京して新大久保に出没。

Uさん 54歳、自営業、神奈川県在住。EXOやBTSの兵役中メンバーの除隊を待ちながら、完全体でのコンサート観覧を夢見て気分を高めている。