那須御用邸で静養中、秋篠宮さまが捕まえたトンボを手にする悠仁さま(2008年8月)

「9月の6日に満1歳になったわけですけれども、そのころは、こういう机とか、そういうものにつかまって伝い歩きという感じだったんですけれども、それからしばらくたって今はまあ数歩ぐらいでしょうか、(紀子さまを振り向いて)数歩ぐらいだね、1人で歩くようになりましたね。いろいろ行動範囲も広くなっているわけですけれども、例えば明かりがつくものとかですね。それから音が出るものとか、そういうものに興味があるみたいです」

秋篠宮家の長男、悠仁さまの成長

2023年9月、17歳の誕生日を迎えた悠仁さま。現在は高校3年生

 2007年9月6日、秋篠宮家の長男、悠仁さまは1歳となった。この年の11月22日に行われた秋篠宮さまの誕生日会見で秋篠宮さまは長男の健やかな成長の様子について冒頭のように語った。さらにご夫妻は、姉の佳子さまたちが弟をとても大事にしている様子について、次のように語った。

「上の2人の子どもたちにとっては、やはり非常にかわいい存在なんだと思いますね、だいぶ年齢も離れていますのでね。ですからとても可愛がっています。子どもの部屋に、あれは何て言うんでしょうね、厚紙って言うか、ああいうものを組み立てて作る小さい家があるんですね。それは基本的に無地なんですけれども、そこに上の2人の子どもが家族全員の似顔絵を描いたりとか、それからそのほか何かもろもろ……」(秋篠宮さま)

「例えば花とか」(紀子さま)

「あ、そうね。そういう絵を描いたりとかして、そこで一緒に遊ぶとか、あとはさっき音が出るものが好きと言いましたけれども、ピアノの鍵盤なんか、やはりいじってみたいわけですね。ところが背伸びしてもなかなかまだ届かない。だけど一所懸命たたこうとしているとイスに座らせてたたかせたりとか、そんな様子でしょうかね」(秋篠宮さま)

 紀子さまも、佳子さまが悠仁さまを可愛がる様子をこう紹介した。

「長女の眞子が3歳のときに生まれてきた佳子を可愛がって世話をしたように、佳子は食事から遊びまで、悠仁の世話をよくしてくれます。

 眞子も佳子も悠仁に優しい眼差しで接して、私たちが仕事をしているときや仕事で長く宮邸を留守するときなども悠仁が寂しくないようにそれぞれ時間があるときにそばにいてくれるので大変助かります」

赤坂御用地を散歩する家族5人

秋篠宮さまの誕生日に公開された家族写真。1歳2か月になった悠仁さまを中心に(2007年11月)

 秋篠宮さまの誕生日の映像には赤坂御用地を散歩する家族5人が映っている。向かって右端から小室眞子さん、その隣は秋篠宮さま、その隣にはベージュ色のジャケットに濃いグレーに見えるパンツ姿の佳子さまが悠仁さまの乗ったベビーカーを押している。悠仁さまはとても楽しそうに笑って両手を振っている。それを紀子さまが愛おしそうに見つめている。悠仁さまは姉たちと一緒に過ごす時間が大好きな様子だ。

 1965年11月30日の秋篠宮さまの誕生以来、実に40年以上も皇室に男子が生まれず、天皇の位である皇位を、安定して継承するうえで危機的な状況が続いていたと、この連載で何度か触れた。実は悠仁さまが生まれる前、小泉純一郎首相(当時)の私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」は、皇位継承者を「男系男子」に限るとする皇室典範を見直し、女性天皇と母方だけに天皇の血筋を引く女系天皇を容認し、さらに「長子優先」とする報告書をまとめた。

 しかし、紀子さまの懐妊がわかり、政府は国会への典範改正案の提出を見送っていた。そして、悠仁さまが生まれたことで、女性・女系天皇を認める皇室典範改正の動きは急速にしぼんだ。将来、天皇となる皇位継承順位第1位は秋篠宮さま、第2位は悠仁さまだが、仮に今、政府の有識者会議が提言した皇室典範の改正が行われたとしよう。

 その場合、皇位継承順位第1位は、愛子さまとなる。第2位は秋篠宮さま、第3位は佳子さま、そして第4位に悠仁さまという順番になるはずだ。佳子さまは結婚しても皇室に残ることとなり、将来、「佳子天皇」となる可能性もあったということになる。

 悠仁さまが生まれなかったとしたら、佳子さまの人生は、今とはまったく違ったものになったかもしれなかった。

天皇陛下の背中を見る悠仁さま

 今年2月21日、天皇誕生日を前にした記者会見で天皇陛下は、次のように甥である悠仁さまについて触れ、注目された。「皇位継承順位2位の悠仁さまの成長についてどのようにご覧になっていらっしゃいますか。今後期待されていることをお聞かせください」などと、記者たちから尋ねられた陛下はこのように発言した。

「悠仁親王は今年18歳となり、成年を迎えます。小さいときから甥として成長を見守ってまいりましたが、近頃は、地方や都内への訪問であったり、外国の方々との交流であったり、少しずつ、皇室の一員としての務めを果たしてくれていることを頼もしく思っています。

 会ったときなどには、トンボの話や野菜の栽培、また、クラブ活動として行っているバドミントンの話など、生き生きと話してくれますので、充実した日々を送っているのではないかと思います。これから、大学への進路についても考えを深めていくことになると思います。本人が関心を持ち、学びたいこと、やりたいこともあると思いますので、自身の将来をしっかりと見つめながら実り多い高校生活を送ってほしいと願っております」

 悠仁さまは伯父にあたる天皇陛下の背中を見て、触れ合うことで「天皇とは何か」をしっかりと学ぶ。父、秋篠宮さまのなさりようを見聞きしながら皇族としてのあり方を勉強する。生きた教材ともいうべき方たちが悠仁さまの身近に存在している。伯父や父親から直に学び、吸収することが何よりの「帝王教育」ではなかろうか。

 世間の一部はとかく、愛子さまと悠仁さま、天皇ご一家と秋篠宮ご一家を比較し、優劣をつけがちだが、はたしてそれでいいのだろうか? 

 皇室は、天皇陛下を頂点とし、一つにまとまっているからこそ価値がある。安定しているからこそ、国民は、自分たちの心の大きなよりどころとして、皇室を尊敬し信頼するのではないのか。幼少のころ、悠仁さまは虫を捕るためしばしば、御所を訪れ、天皇、皇后両陛下(現在の上皇ご夫妻)と交流した。これからは、忙しい勉強の合間を縫って、御所を訪れ、悠仁さまは両陛下と会う機会をより増やしてほしい。皇室がしっかりまとまっている印象を与えるのは、「令和皇室」にとってより望ましいことだと思う。

<文/江森敬治>

えもり・けいじ 1956年生まれ。1980年、毎日新聞社に入社。社会部宮内庁担当記者、編集委員などを経て退社後、現在はジャーナリスト。著書に『秋篠宮』(小学館)、『美智子さまの気品』(主婦と生活社)など