ドラマにバラエティー、かつては隆盛を誇ったフジテレビ

 重大事件が起きても、編成内容を変えることなくブレずにアニメ(再)放送。そんな“独自路線”で知られるテレビ東京が、ゴールデン帯(夜7時~10時)の世帯平均視聴率で、開局以来初の最下位脱出を果たした('24年1月1日~3月31日)。

「テレ東は5・48%。ついにと言うべきか、最下位に転落してしまったのが、フジテレビで5・41%でした」(芸能プロ関係者)

 “月9”を筆頭にドラマでは夜の街からOLを消し、「楽しくなければテレビじゃない」のフレーズのとおり大人気バラエティー番組を量産。'80年代以降、フジテレビはトップオブトップのテレビ局だった。

「役員がキャバクラに行って…」

「もう無理です」

 かつての古巣をそう嘆くのは、元フジテレビアナウンサーの長谷川豊氏。今回、何人かの“元フジ”に“凋落の理由と再建策”について取材を依頼。しかし、多くが口をつぐみ、応対したのは長谷川氏のみだった。

「ラーメン店に例えればわかるのですが、ラーメンがおいしくないから客が来なくなってるんです。単に“面白い番組を作る”ことがフジだけじゃなくすべてのテレビ局やYouTubeなどのコンテンツ産業の基本。これって“センス”ですべてが決まるんです」(長谷川氏、以下同)

 長谷川氏はフジ時代、長らく朝の情報番組『とくダネ!』を担当。同番組終了時('21年)に以下のように話していた。

「在籍当時から口が酸っぱくなるほど言い続けてきました。今のままではフジテレビはダメになる、視聴率も売り上げも落ちる、制作現場の制作費を削って、役員がキャバクラに行って領収書を切る会社に未来はない。プライドの高いコネ入社の役員のみなさま方はあの当時、僕を罵りましたが、すべて僕の言ったとおりになっています」

「センスのない“常識人”が出世してしまう」

 事実、視聴率は下がった。

「今のフジテレビ上層部は間違いなくセンスがないんです。結果が出ていないのですから。僕はフジの室長以上の幹部は総辞職する必要があると思っています。それだけで結構変わると思います」

 長谷川氏によれば、何が「おいしい(面白い)」かわからないセンスがない人物が多いという。

「センスのない“常識人”が出世してしまうことが問題なんですね。実は当然のことで、センスがあって面白いコンテンツを作れる人間っておかしいというか変な人が多い。その人たちには周りがバカにしか見えないから態度が悪くなるんですね。“何でわかんねーんだよ”と思っちゃう。なので、コミュニティーの中では孤立しますし、出世しようなんて1ミクロンも思っていない。だって面白いものを作ることしか考えてないから」

元フジテレビアナウンサーの長谷川豊氏

 現場のスタッフはまだセンスがある?

「社員が1300人もいるので、中にはセンスのいい人間もいます。ほとんど辞めてますけど。“へ~”と思う某人気番組のP(プロデューサー)はバラエティー班の出世レースの犠牲者で、某室長となり毎日座るだけの生活を送っています」

 最後にあえて、光明があるのかを聞いた。

「もっと不動産を買ってフジ不動産会社に名前を変更すべきです。テレビ事業はサイバーエージェントの藤田(晋)社長に売却するのがいいと思います

 “楽しくなければ”の先に残ったものは─。