2022年の参院選、無所属で出馬した乙武洋匡氏

「選挙演説で、2m以上の高さがある電話ボックスの上に乗っかり、怒鳴り声をあげている男性がいました。近くに警察官はいましたが、とくに注意はしていなくて。でも、公衆電話という公共施設なのだから、勝手にのぼったら器物破損の罪とかにならないのかしら」(居合わせた女性)

 4月17日、『爆サイ.com』のX(旧Twitter)に、ある選挙演説の動画が投稿された。

「累計発行部数600万部越えのベストセラー『五体不満足』の著者である、乙武洋匡(ひろただ)さんが宣伝カーの上で演説していた動画です。しかし、注目されたのは、乙武さんと同じ高さの目線で声を荒げる男性。

 東京の江東区『亀戸』駅前の電話ボックスの上に乗り、片膝立ちの姿勢で乙武さんの演説を妨害する姿に、ネットでは“モラルは守ろうよ”“公共物を何とも思っていない”といった批判が殺到しました」(テレビ局報道記者、以下同)

 衆院選東京15区では補欠選挙が告示され、4月28日の投票日に向けて選挙戦は真っ只中。無所属の乙武氏を含む9人が争っている。

本来の利用目的を害する行為

乙武さんに怒号を飛ばしていた男性は、立候補している9人の関係者です。たしかに選挙演説は目立つことも必要ですが、やり過ぎはかえって悪印象になります」

 前出の動画には警察の姿も見られるが、注意する素振りは見られない。

 こういった行為は罪に問われないのか。

 弁護士法人『ユア・エース』代表の正木絢生(けんしょう)弁護士に話を聞いた。

「その場所本来の利用目的を害する行為のため、軽犯罪法違反で処罰される可能性があります。

 電話ボックスの上に乗る行為は、通話することを直接、妨害するものではありませんが、一般人は、その電話ボックスを利用することに抵抗を覚え、自由に通話することができません。そのため、電話ボックスの上に乗る行為も、処罰の対象となる可能性があります」

『爆サイ.com』が投稿した動画には、電話ボックスの上でしゃがんで乙武洋匡氏にヤジを飛ばす男性の姿が

 では、器物損壊についてはどうか。

一般人が自由に通話する利益を侵害

「損壊とは、物の物理的な損壊に限らず、物の利用目的を害するいっさいの行為をいいます。

 動画内の行為は、電話ボックスの上に乗っていただけで、物理的に損壊したわけではありません。しかし、電話ボックスの上に乗る行為は、一般人が自由に通話する利益を侵害する可能性があります。

 そのため、電話ボックスの上に乗る行為も損壊にあたり、器物損壊罪が成立する可能性があります

 法律上は罪に問われる可能性があるという。

 警視庁にも問い合わせしてみたが、

「個別の事案については回答を控えさせていただきます」

とのことだった。

 投票日まで残り僅か。モラルなき選挙戦に、投票する人が呆れなければいいが……。


◆弁護士プロフィール
正木絢生 弁護士
弁護士法人ユア・エース代表。第二東京弁護士会所属。消費者トラブルや借金・離婚・労働問題・相続・交通事故など民事事件から刑事事件まで幅広く手掛ける。BAYFM『ゆっきーのCan Can do it!』にレギュラー出演するほか、ニュース・情報番組などメディア出演も多数。YouTubeやTikTokの「マサッキー弁護士チャンネル」にて、法律やお金のことをわかりやすく解説、配信中。
 

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