「ヤバい女になりたくない」そうおっしゃるあなた。有名人の言動を鋭く分析するライターの仁科友里さんによれば、すべてのオンナはヤバいもの。問題は「よいヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、仁科さんがさまざまなタイプの「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」を分析していきます。
第99回 小倉優子
「離婚というものを私は二回経験しているんですよ。今、どんどんメンタルが強くなって、もう最強のところにいてー」
4月10日放送「上田と女が吠える夜」(日本テレビ系)において、自分の離婚経験をネタにしてみせたタレント・ゆうこりんこと、小倉優子。そんなことができるのも、今の彼女がすでに離婚キャラに変わる、“新キャラ”を手に入れたからではないからでしょう。第二子を妊娠中に夫の不倫が露見し、離婚したゆうこりん。再婚をしたものの、再び離婚。そんなゆうこりんはバラエティ番組の企画で、大学受験に初挑戦することになります。いくら番組が用意した受験のプロがサポートしてくれるといっても、実際に勉強、受験するのはゆうこりんです。大学受験未経験で、現役世代と比べれば、体力も記憶力だって落ちているでしょう。仕事をして三人のお子さんの子育てもしなければならないゆうこりんの挑戦は一見無謀にも思えましたが、第一志望の早稲田大学教育学部には手が届かなかったものの、無事に合格を手にしたのでした。
無視されたママ友に3年間挨拶を続けた
出産後はママタレとして、お子さんの食育や教育に力を入れてきたゆうこりん。離婚して妻ではなくなっても、母であることに変わりはありませんから、ママタレと名乗っても問題はありません。しかし、離婚も2回目となると「ゆうこりんにも、何か問題があるな」とバイアスをかけて見る人もいるでしょう。しかし、大学受験に合格したことで、尋常じゃない頑張りやにうまいことキャラ変したと言えるのではないでしょうか。けれど、同番組でゆうこりんが語るエピソードを聞いていると、頑張りやとヤバいは紙一重なのかもしれないと思ったのでした。
同番組のテーマは、すぐ凹んじゃうメンタルが弱すぎる女VS強すぎる女。ゆうこりんは強すぎる女枠での出演で、お子さんが幼稚園生の時に通っていた小学校受験のための幼児教室での出来事を明かしています。お子さんの送り迎えで一緒になったママさんに、ゆうこりんは挨拶をしますが、無視されてしまったそう。それでも挨拶し続けたゆうこりんでしたが、「しばらくして、あれ、これって無視されてる?」と気づいたそう。おそらく多くの人は「理由はわからないけれど、むこうはどうもこちらと接点を持ちたくないんだから、あまり近づかないようにしよう」と思うことでしょう。しかし、ゆうこりんは「ここで私がやめたら、もう終わってしまうと思って」、3年間挨拶を続けたそうです。
幼児教室最後の日にいつもどおり「さようなら」と挨拶をすると、そのママさんが「ねぇ、公園行かない?」と声をかけてきたそうで、「今ではそのママとすごい仲良しになったんです」と言うゆうこりん。なぜそのママが無視をしてきたかと言うと、受験においては子ども同士はライバルだから、最初から誰とも親しくならないと決めていたのだそう。けれど、無視した理由はそれだけではないようで、「どこの馬の骨かわからなかったから、無視した」と出自を重要視するようなことを言われたことも明らかにしていました。共演者であるオアシズ・大久保佳代子とでか美ちゃんがひいていたように見えたのは、気のせいでしょうか。私も正直怖かったです。
挨拶をすることは「正しいこと」
無視をされてもゆうこりんが挨拶し続けたのは、芸能人なのでネットに何か書き込まれたら困るという自己防衛なのかもしれませんが、挨拶をすることは「正しいこと」だからだと思うのです。ゆうこりんは「決まりは守るべきだ」「正しいことをすべきだ」という主義なのではないでしょうか。
正しいことと言えば、2017年4月1日放送の「有吉反省会」(日本テレビ系)においても、ゆうこりんの正しさを追求するかのようなエピソードが紹介されていました。ゆうこりんとギャル曽根ともう一人の友人と待ち合わせをした際、ギャル曽根が遅刻をしてしまったそう。ギャル曽根の遅刻はこの日が初めてではなく、頻発していたこともあって、怒ったゆうこりんはその日1日ギャル曽根と口をきかず、無視。ギャル曽根は「正直、思い出しただけでも、めちゃくちゃこわくて泣きそう。あの人は怒らせちゃダメ」とその怖さに気付いて、それ以来ゆうこりんとの待ち合わせは15分前行動を心掛けているとか。
ゆうこりんがなぜここまで怒ったかというと「待ち合わせの時間は守るべきだから、遅刻は正しくないから」だと思うのです。ゆうこりんだって忙しいのに、ちゃんと身支度をして時間を守っている、つまり正しいことをしているのに、なぜあなたは正しくないことを平気で出来るのかと思った場合、「正しくないことをするギャル曽根が許せない」となるのではないでしょうか。
正しさの追求が招くトラブル
しかし、人間関係において「正しいこと」を追求すると、人を追い詰めたり、揉め事の元となりえます。たとえば、仲良しのママ友に「3年間無視された」「どこの馬の骨かわからなかったから、無視した」と言われたことが事実だったとしても、それをテレビで話してしまったら、そのママが特定されて、周囲に「あの人ってヤバい」と見られてしまう可能性もゼロではないでしょう。
ゆうこりんとしては、自分の身に起きた出来事をそのまま話しただけで、嘘はついていないのだから後ろ暗いところはない、つまり、自分は正しいと思っているのかもしれません。しかし、あの話し方では、公共の電波を使ってママ友に復讐しているようにも見えないこともなく、ゆうこりんがやられたらやり返す、執念深い人だと思う人もいるのではないでしょうか。ゆうこりんは万事きっちりしていて、正しく生きられるタイプなのだと思いますが、自分が正しいからといって、他人にも正しくあれと強要することはできません。正しさを追求しすぎると、自分の株を下げたり、対人トラブルが起きやすくなってしまうと思うのです。
ゆうこりんのすごさとヤバさは紙一重
その一方で、正しさを追及することが好きな人、「やられたら、やり返す」ばりのガッツや集中力、粘り強さを持っている人は、受験に向いていると思うのです。受験勉強には必ず正解があり、自分が正しいのか間違っているのかがハッキリしています。受験生は間違った問題を繰り返し解いて、本番までに正しい答えが出せるようになる必要があり、自分の苦手分野をしつこくしつこく潰していく根気が求められるからです。
短所と長所は表裏一体と言いますが、ゆうこりんのすごさとヤバさも紙一重なのかもしれません。ゆうこりんの長所をいかすには、人と密に関わるよりも、勉強することが一番なのかもしれません。大学院にも興味があるような話をしていたゆうこりん。かつての第一志望、早稲田大学を目指すとう手もありますが、いっそのこと、日本の最高学府を目指したらどうでしょうか。ヤバいくらいの頑張りで、数年後、赤門の前には微笑むゆうこりんがいる・・・。そんな気がしてなりません。
<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」