『ガールズメッセ2023』に臨席された佳子さま(10月22日)

「最初の3年間はオンライン授業で、最後の1年はこのキャンパスに通い、たくさんの新しい学びを得て、充実した4年間を過ごすことができました。素晴らしい先生方や友人たちと出会えたこともうれしく、またありがたく思っております」

愛子さまの受け答えで思い出す風景

2022年11月、秋季雅楽演奏会を一緒に鑑賞した愛子さまと佳子さま

 2024年3月20日、天皇、皇后両陛下の長女、愛子さまが東京都豊島区にある学習院大学を卒業した。桜色の振り袖に袴姿の愛子さまは、卒業式直前に取材に応じ、「大学生活を振り返られて、いかがですか」と記者たちから尋ねられ、冒頭のように答えた。

 この様子をニュースなどで見ながら私は、彼女がまだ生後8か月だった2002年8月26日、母親の皇后雅子さまに抱かれて静岡県下田市の須崎御用邸の浜辺を、いとこの佳子さまたちと散策した風景をふと思い出した。

 静養のため須崎御用邸に滞在していた上皇ご夫妻(当時は天皇、皇后両陛下)、それに天皇ご一家(当時は皇太子ご一家)と秋篠宮ご一家の総勢9人が浜辺を歩き、談笑しながら和やかな時間を過ごした。帽子をかぶり、水色のベビー服を着た愛子さまは笑顔で手を振っていた。

 丸首の水色のTシャツ、白いキュロットスカート姿の佳子さまは、7歳で小学校2年生。波が打ち寄せる砂浜で貝殻を拾ったり、愛子さまを愛おしそうに見ながらそばに寄ったりした。上皇后美智子さまは海藻を拾い、それを愛子さまに見せるなど親と子、そして、孫の3世代が同じ時間と空間の中で、生き生きと、愛情にあふれる家族の団らんのひとときを過ごしていた。

 それから3か月余りが過ぎた'02年12月4日、記者会見で「敬宮愛子さまのお相手をするときの(筆者注、佳子さまたちの)『お姉さんぶり』などご成長が垣間見られるエピソード、またはそのお子さまとの日常の触れ合いを通じて感じたことなどがあればお聞かせください」と尋ねられた秋篠宮ご夫妻は、夏の思い出を次のように紹介した。 

大変和やかな時間

須崎御用邸に滞在中、近くの海岸を散策するご一家。生後8か月の愛子さまを佳子さま(右端)が見守るような場面も(2002年8月)

「須崎御用邸で皆さまと大変和やかな時を過ごさせていただきました。その折には、眞子と佳子が自分たちは小さいとき、どのようなことで喜んだのかと私に尋ねながら、御用邸でどのようにすれば敬宮さまがお喜びになるかを相談しながら旅の支度をしておりました。

 御用邸ではしっかりと座られるようになりました敬宮さまと娘たちが整えたおもちゃで遊びましたり、初めて浮き輪をおつけになって海で泳ぎになりました敬宮さまのそばで娘たちも泳ぎましたり、お可愛らしい表情豊かな敬宮さまと娘たちは夏の時を大変楽しく過ごさせていただきました」(紀子さま) 

「どういうんでしょうか。やはり小さい1歳未満の子どもでも、例えば私たちを見るのとは少し違う感じでうちの娘たちのことを見ていたような感じもいたします」(秋篠宮さま)

「娘たちはどのおもちゃがよろしいか選んでおりますときも、これはやわらかくて遊びやすいとか、これはちょっとまだ硬くて危ないのではないかと考えながらおもちゃを選んでいるところは、どうでしょうか?」(紀子さま) 

「そうね。可愛らしいという気持ちを強く持って、遊んでいたんでしょうね」(秋篠宮さま)

 ご夫妻はこのようなやりとりをしながら、佳子さまたちが愛子さまを妹のように可愛がる様子を振り返った。

 前年の'01年4月、佳子さまは学習院初等科に入学したが、同じ年の12月1日、愛子さまが生まれている。愛子さまにとって佳子さまは、姉のような存在だ。

美智子さまの想い

2007年の正月を迎えた上皇ご夫妻、天皇ご一家、秋篠宮ご一家。愛子さまと佳子さま、眞子さんの3人はすごろく遊びを

 上皇后美智子さまは'07年10月20日、誕生日に際して宮内記者会の質問に対する文書回答の中で次のように答えている。

《私自身の育児体験をふり返り、孫たちの成長ぶりに感想やアドバイスを、との質問ですが、もうずい分以前のことですので……。ただ、祖母として幼い者と接する喜びには、親として味わったものとも違う特別のものがあること、また、これは親としても経験したことですが、今、また祖母という新しい立場から、幼い者同士が遊んだり世話しあったりする姿を見つめる喜びにも、格別なものがあるということは申せると思います。

 愛子は、眞子や佳子と遊ぶ時、大層楽しそうですし、眞子と佳子も、愛子を大切に大切にしながらも、大人とは異なる、子ども同士でのみ交せる親しさをこめて相手をしています》

 '22年3月17日、愛子さまが成年皇族となって初めての記者会見が行われた。この中で、愛子さまは皇室の役割について、

「上皇陛下が折に触れておっしゃっていて、天皇陛下にも受け継がれている、『皇室は国民の幸福を常に願い、国民と苦楽をともにしながら務めを果たす』ということが基本であり、もっとも大切にすべき精神であると私は認識しております」と、語った。また、

「一つひとつのお務めを大切にしながら少しでも両陛下や、ほかの皇族方のお力になれますよう、私のできる限り精いっぱい努めさせていただきたいと考えております」

 と、抱負を述べた。

 '22年11月5日、愛子さまと佳子さまは一緒に宮内庁楽部で開催された秋季雅楽演奏会を鑑賞したように、今でも2人は姉と妹のような親しい間柄なのだろう。この連載で指摘したが、皇位継承者を「男系男子」に限るとする皇室典範を見直し、女性・女系天皇を認める皇室典範改正の動きが悠仁さまの誕生で止まったという経緯があるが、今でも国会などで、女性皇族が結婚後も、皇室にとどまれるようにする動きが活発化している。

 このように、未婚の内親王である佳子さまと愛子さまの立場は、近年、とみに不安定となっている。頼りになる人生の先輩としての佳子さまの存在は、愛子さまの中でますます、大きくなっていくのかもしれない。

<文/江森敬治>

えもり・けいじ 1956年生まれ。1980年、毎日新聞社に入社。社会部宮内庁担当記者、編集委員などを経て退社後、現在はジャーナリスト。著書に『秋篠宮』(小学館)、『美智子さまの気品』(主婦と生活社)など