木村拓哉、山下智久

 4月期ドラマも5月に入り、序盤戦の評価が出揃ってきている。

 今期のドラマは旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP./STARTO ENTERTAINMENT)のタレントと、ジャニーズを辞めたタレントがいずれも複数のドラマで主役や準主役を担っていることでも話題だ。

 まず“旧ジャニ”勢が主役・準主役で出演のドラマは次の4本。

木村拓哉(51・元SMAP)が主役/『Believe-君にかける橋-』(テレビ朝日系)
森本慎太郎(26・SixTONES)が主役/『街並み照らすヤツら』(日本テレビ系)
永瀬廉(25・King & Prince)が主役/『東京タワー』(テレビ朝日系)
亀梨和也(38・KAT-TUN)が準主役/『Destiny』(テレビ朝日系)

 次に“辞めジャニ”勢が主役・準主役で出演のドラマは次の3本。

山下智久(39・元NEWS)が主役/『ブルーモーメント』(フジテレビ系)
北山宏光(38・元Kis-My-Ft2)が主役/『君が獣になる前に』(テレビ東京系)
錦戸亮(39・元NEWS、元関ジャニ∞)が準主役/『Re:リベンジ-欲望の果てに-』(フジテレビ系)

 果たして“旧ジャニ”ドラマと“辞めジャニ”ドラマはそれぞれどのような評価となっているのか。ドラマ批評のコラム連載を持ち、年間約100本以上のドラマ記事を執筆している筆者が振り返っていきたい。

ヤバいのはキンプリ永瀬の不倫ドラマ?

 注目を集めているのは数々のヒット作で主演してきたキムタクと山Pのドラマ対決のため、まずはそれ以外の作品の評価を簡単に解説していこう。

 “旧ジャニ”勢のドラマはどうだろうか。

 森本慎太郎の『街並み照らすヤツら』は批判的な声が多いわけではないが、そもそもあまり注目を集めておらず“無風”といった感じ。

 ただ、この枠はもともとムロツヨシ(48)の主演ドラマが放送される予定だったものの、『セクシー田中さん』の原作者急死問題の余波でムロが降板しており、森本にはかなり急遽のオファーだったことは想像に難くない。そのため、もし今作がコケても森本に批判は集まらず、むしろ同情票が多く集まるのではないだろうか。

 永瀬廉の『東京タワー』は23時放送なので視聴率の高低はあまり気にしなくていい枠だが、内容がとにかくひどい。

 一昔前の不倫ドラマを元にしたコントなのかと思うほどセリフや演出が古臭く、観ていてこっちが恥ずかしくなるクオリティだ。キンプリのファンもドラマ好き中年女性も、どちらにも刺さらないまま終わるのではないだろうか。

 亀梨和也の『Destiny』は石原さとみ(37)の主演作。第1話では亀梨や石原や田中みな実(37)といった主要キャラたちが大学生を演じたことで、30代の役者では老けすぎていてさすがにムリがあると叩かれまくっていた。

 しかし、過去の事件と現在の事件が絡み合っていく構造で、サスペンスミステリーとしての質は高いとの評価が多い印象である。

 続いて“辞めジャニ”勢のドラマ。

 北山宏光の『君が獣になる前に』はテレ東の深夜枠のドラマのため、視聴率などの数字が悪くても失敗作の烙印が押されにくいので、比較的に気楽に主演できる枠だろう。

 多くの人が亡くなった史上最悪のテロ事件が都内のターミナル駅で発生。北山演じる主人公は過去にタイムリープし、テロを起こした幼馴染みの女と向き合っていくというサスペンスのため、結末が気になる見応えのあるストーリーになっている。

 錦戸亮の『Re:リベンジ-欲望の果てに-』は、大病院を舞台にした権力争いを描いたドラマで、錦戸は赤楚衛二演じる主人公に敵対する役どころ。

 主人公が大切にしている父との約束や最愛の恋人を次々奪っていく、ミステリアスで怪しい男を錦戸が好演。残念ながら視聴率は右肩下がりしているが、錦戸は主演ではないためそこまでダメージは大きくないだろう。

キムタクvs.山P……現状は山Pが優勢か

 いよいよここからはキムタクの『Believe-君にかける橋-』と山Pの『ブルーモーメント』についてだ。

 両作を比較したネットニュースのコメント欄には、次のような視聴者の声が挙がっていた。

《キムタクドラマは主演級の俳優さんを取り揃えて天海さん斎藤さん竹内さんファンあたりも見るのでしょう。俳優さん達へのギャラが半端なさそうです。そして、キムタクはやはり拙い演技力で悪目立ちしています。一方、山Pのドラマはロケにすごくお金をかけている様子ですが、フレッシュなキャスティングに舘ひろしが良いスパイスでとてもバランスが良いと思います。特に山Pは意外に知性的な役が似合う。ブルーモーメント推しです》

《両方録画で観ました。 山Pの方は人を救う系大好きなので。 キムタクの方は予想より面白かったです。明るい話ではないから追い詰められたりしたら辛くなってきそうだけど。 天海祐希さんとの夫婦は確かにどちらもキャラ固定されてて違和感はあるかな……一瞬キントリ(テレビ朝日系ドラマ『緊急取調室』)の取り調べに見えたり。でもまだ1話だしそのうち慣れるはず。 ドラマの粗探ししてたら楽しめないので純粋にどちらも楽しみたいです》

《『believe』期待してなかったけど面白かった! 初回で固定客の多い日曜劇場以上の結果を出したって事はなんだかんだ言って木村拓哉は数字を持ってるって事。演技に関してもいつもなら何をやってもキムタクという常套句が今回は散見されないので自然に役に溶け込んでると思う。今後の展開が楽しみな良いドラマだと思う》

 データで比較してみると、『Believe-君にかける橋-』の視聴率は

 第1話 世帯11.7%/個人6.8%
 第2話 世帯10.1%/個人5.9%
 第3話 世帯9.6%/個人5.8%

 対して『ブルーモーメント』は

 第1話 世帯8.6%/個人4.8%
 第2話 世帯8.4%/個人4.8%
 第3話 世帯6.9%/個人3.8%

 と推移。

 視聴率で勝っているのは『Believe-君にかける橋-』だが、両作とも下落傾向なのは気になるところ。

 また、見逃し配信での人気の指標となるTVerでのお気に入り登録数は、『Believe-君にかける橋-』が71.9万に対し、『ブルーモーメント』が89.8万(データは5月9日現在)。こちらは『ブルーモーメント』に軍配が上がっている。

 作品の評価としては、『Believe-君にかける橋-』にはさまざまな角度からツッコミが入っており、ドラマファンからはネガティブな意見が多い印象だ。

 主人公が設計した建設中の橋で、死傷者を出す崩落事故が起こってしまい、主人公は会社を守るために真相を隠ぺいして全責任を被り、実刑を喰らってしまう。けれど妻ががんを患っていることを知り、脱獄を計画して……というストーリーになっている。

 主人公がかかわった橋の建設の工程や裁判の判決、そして脱獄計画などについて、各業界の専門家から粗を指摘されまくっていたり、ただただキムタクをかっこよく見せる演出にうんざりする視聴者が続出したりと、残念ながら評判はかんばしくない。

『ブルーモーメント』も初回からある指摘が相次ぐ事態が発生。

 それは山P自身の代表作『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』シリーズ(2008年、2010年、2017年/フジテレビ系)と、鈴木亮平(41)主演の日曜劇場『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』(2021年/TBS系)に似ている要素が多く、両作を足して2で割ったような内容だというツッコミが殺到していたのである。

 実際、主人公が現場にヘリで駆け付けて人々の命を救うという設定が『コード・ブルー』に酷似しており、災害現場で大型特殊車両を基地のようにする“スーパー戦隊”感は『TOKYO MER』に酷似。

 確かにそういった他作品との類似点はかなり多いのだが、とても丁寧に作られており、ストーリーもちゃんと緊迫感があっておもしろい。第1話の雪崩シーンのCGなどにもチープさはさほど感じないし、ダイナミックな映像も見どころだ。

――旧ジャニ・辞めジャニのドラマ7作の序盤戦の評価を見て来たが、いかがだっただろうか。評判はいまいちのドラマが少なくないようだが、中盤以降で挽回していってもらいたい。

堺屋大地●コラムニスト、ライター、カウンセラー。 現在は『文春オンライン』、『CREA WEB』(文藝春秋)、『smartFLASH』(光文社)、『週刊女性PRIME』(主婦と生活社)、『日刊SPA!』などにコラムを寄稿。これまで『女子SPA!』(扶桑社)、『スゴ得』(docomo)、『IN LIFE』(楽天)などで恋愛コラムを連載。LINE公式サービス『トークCARE』では、恋愛カウンセラーとして年間1000件以上の相談を受けている(2018年6月度/カウンセラー1位)。公式Twitter:https://twitter.com/sakaiyadaichi