「慎吾ちゃんの映画『凪待ち』('19年)も素晴らしかったので、白石(和彌)監督とお仕事できることがうれしいなと思いました」
と、草なぎ剛。時代劇映画への出演は約15年ぶり。
久しぶりって感じはしなかった
「でも大河ドラマ(『青天を衝け』'21年)もやっていたので、それほど久しぶりって感じはしなかったです。撮影初日は衣装やカツラで肩がこったかな。扮装はやっぱり準備に1時間以上かかるので。でもすぐ慣れて、なじんで撮影できました」
主演映画『碁盤斬り』で演じているのは、柳田格之進。覚えのない罪で故郷・彦根藩を追われ、娘(清原果耶)とともに江戸の貧乏長屋で浪人暮らしをしている。しかし、武士の誇りは忘れていない。町の人々と興じる囲碁においても、実直な人柄がにじみ出る。そんな囲碁のシーンは、とにかく時間がかかったそう。
「もう、すごいんですよ。朝9時には支度が終わっているのに、カメラが回り始めるのは13時とか。京都撮影所はこだわりの職人さんが集結していて。碁盤は撮り方が本当に微妙で難しいらしくて。例えば、照明さんも“あ、ダメだね。もう1回”とか。何がダメなのか全然わかんない(笑)。そして完成した画を見ると、職人のみなさんの芸術的センス、気迫や魂がこもっていて。本当に僕が口を出さなくてよかった(笑)」
そんな冗談を交えながらも、苦労したかいがあったと微笑む。ちなみに草なぎの囲碁の腕前は?
「全然ルールわかんない(笑)。でも、碁を持ったときの返しはすごく練習しました。多分、囲碁をやられる方はわかってくれると思う。そんな指先にも注目してもらいたいですね」
ある日、なすりつけられた罪の真相を格之進は知る。自分と亡き妻の誇り、そして娘の未来のため、復讐を決意。前半の江戸情緒あふれる平穏さから一転、怒濤の復讐劇へ。
「柴田兵庫(斎藤工)を復讐のために捜すあたりから、まるで白い生地に血がにじんでいくような感じがあって。どんどんボロボロになっていく男の姿に痺れましたね」
別人になったかのような格之進。すさまじい行動とその信念には、ただただ圧倒される。
生きる時代間違っちゃった
「古くさいというか、どこか固執した考え方でもあるなと思うんですけど……。でも、今では考えられないような時代に、考えられないような気持ちで生きていた男。その気持ちの中には、今にはない素晴らしいものが宿っているんじゃないか。そんな思いで演じました」
そんな格之進は、べらぼうにクール!! 完成作を見た感想を聞くと、
「僕、カッコいいなと思った(笑)。今までの作品の中でいちばんカッコいいかもしれない、いろんな意味で。こういう役もできるようになったんだなと思うと、年を重ねるのも悪くないよね」
その話しぶりからも、大いなる満足感と自信が感じられる。
「あのね、思ったね。僕、生きる時代間違っちゃったんじゃないかなって。江戸時代に生まれていたら、もっと人気者になったんじゃないかなぁ。昭和に生まれて間違ったなと思った(笑)。だってさ、あんなに笠が似合う人、令和にいないと思うんだよ。普段から、笠かぶろうかなぁ?」
クルミちゃんとの近況
本作では、お絹(清原果耶)の父親を演じている。プライベートでの草なぎは、フレンチブルドッグのクルミちゃん&その子どもであるレオンくんのパパ。近況を教えて!
「クルミはね、もう甘えん坊で。僕がウチでギターの練習をしているときに限って“抱っこしろ”って来るんだよね。普段は全然来ないのに。僕がギターを弾くのが嫌みたいで(笑)。いつもそれに困る。大好きなクルミちゃんの要求には応えてあげたいけど、ギターもめちゃくちゃ大事。最終的には僕が寝っ転がってギターを弾くんだよね、クルミは脚の間にいて。そんな感じだから、僕のギターの腕前がさほど上達しないのは、クルミのせいなんです(笑)」
撮影現場で座らない理由
格之進が囲碁で親交を深めていくのは、萬屋源兵衛(國村隼)。彼の店の番頭を演じる音尾琢真によると、草なぎは撮影所で座ることが一切なかったという。
「基本的に座らないですね。僕、“高倉剛”なんですよ(笑)。(高倉)健さんのまねをしているところもあるんですけど、帯をして刀もあるでしょ? やっぱりね、物理的に座ると痛いんですよ。逆にみんな、よく座ってられるなと思って。スタッフさんは気を使って椅子を出してくれるんだけど、僕としては立っているほうが楽なのよ、本当に」