(左から)大下容子、安藤優子、有働由美子、膳場貴子

 崖っぷちの岸田内閣。4月末に行われた3つの衆議院補欠選挙では、いずれも立憲民主党が勝利し自民党は全敗。この結果を受け、岸田首相は改めて「解散総選挙は考えていない」と述べた。だが国民の政治不信が極限まで高まったこの状況下では、早くて来月、もしくは秋ごろの解散総選挙もありうるのではないかとささやかれている。

 “新しいリーダー”の待望論が根強いなか、週刊女性が今年2月に行った「総理になってほしい女性政治家」の読者アンケートでは、上位5人のうち実に4人をアナウンサー、もしくはキャスター出身者が占めるという結果に!

 もはや、政治の信頼を取り戻せる救世主は女性アナウンサーしかいないのかも……!? そこで今回は「政治家になってほしい女性アナウンサー」についてアンケートを実施。30代~60代の男女1000人から回答を得た。放送作家でコラムニストの山田美保子さんと、結果を見てみよう。

「政治家になってほしい女性アナ」TOP5

 5位にランクインしたのはテレビ朝日の大下容子アナウンサー。2019年から昼のワイドショー『大下容子ワイド!スクランブル』のメイン司会を務めている。局の一社員である女性アナウンサーの名前を、番組名に冠することは異例中の異例。さらに現役アナウンサーとして初めて同局で役員待遇となるなど、周囲からの信頼も厚い。

局アナとしては唯一トップ5にランクインした大下容子

「誠実で知識もあり、一般人の気持ちに耳を傾け寄り添ってくれそう」(秋田県・50歳・女性)

「政治家と対等に渡り合えそう」(東京都・64歳・男性)など、特に50代以上からの支持を集めた。

50歳を過ぎたベテランアナで、新人アナの指導者でもありますがまったく偉ぶらない。細かい心遣いもできる方です。個人的にはSMAP解散騒動のとき、忖度のない誠実なコメントをされていたことが心に残っています」(山田さん、以下同)

 2017年に放送終了した『SmaSTATION!!』(テレビ朝日系)で、香取慎吾と16年間にわたり共演した大下アナ。'16年のSMAP解散時には、涙をこらえながら「非常に不条理なものを感じる」と一歩踏み込んだ発言をしたことが話題となった。

「女性政治家の方々の言動を見ていると、一部の方をのぞき、結局は男性の政治家に忖度している方がとても多いなぁという印象です。でも大下さんは、相手が男性だろうがきちんと自分の意見を言える方。だからこそ、議員バッジをつけた大下さんも見てみたいですよね」

 ちなみに、現自民党参議院議員で822万円もの裏金キックバックが指摘されている丸川珠代氏も、テレビ朝日の元アナウンサーで大下アナとは同期。信用ガタ落ちの丸川氏はお役御免となり、大下アナが出馬を要請される日も近いかも?

東大出身で報道のイメージが強いアナが4位に

 4位となったのは、NHK出身で現在はTBSと専属契約を結んでいる膳場貴子アナウンサー。NHK入局時は東京大学医学部・看護学科出身として注目を集めたが、プライベートでは意外にも2度の離婚、3度の結婚経験がある。その3人の結婚相手が全員、東大出身の男性であったことも話題となった。

報道特集での説得力のあるコメントが高評価の膳場貴子

「フリーになって深めた見識や、知識を生かしてほしい」(北海道・67歳・男性)

「言いたいことをしっかり説明し、説得力がありそう」(山形県・67歳・女性)など、高齢者の支持が厚い。

「約8年間キャスターを務められた『報道特集』(TBS系)では、現場を大切にして積極的に取材に出向き、ご自分の言葉で伝えている姿がとても印象的でした。政治家になっても同じような行動力を発揮してくれるのではないかという期待が大きいですね」

 また山田さんは、膳場アナのファッションにも注目する。

「斬新なコーディネートが多めの大下アナに比べて(笑)、膳場アナはいつもシンプルな装い。女性政治家がよく着ているようなスーツ姿もすごく似合いそうですし、国会で冷静に質問している姿がなんとなく想像できますよね」

弁護士資格が強みになっている元フジテレビアナ

 3位は元フジテレビアナウンサーで、現在は弁護士として活動している菊間千乃氏。'07年に、本格的に弁護士を目指すため10年以上在籍したフジテレビを退社。その後見事、司法試験に合格し、局アナから弁護士への転身を果たした異色の経歴の持ち主だ。この時期を含め数年間テレビから姿を消していたが、最近は情報番組のコメンテーターとしても活躍している。

弁護士目線の意見が欲しいとの声が多数寄せられた菊間千乃(画像は松尾綜合法律事務所HPより)

「弁護士資格を取るなど頭の回転が速そうで、しっかりと自分の言葉で意見を伝えられそう」(東京都・61歳・男性)

「法律家目線と女性の立場から、公平な主張と具申を期待したい」(兵庫県・66歳・男性)など、法律の専門家である弁護士ならではの活躍を期待する声が多い。

「今でも忘れられないのが、フジテレビアナウンサー時代の転落事故。多くの視聴者にとっても非常にショッキングな出来事でした」

 1998年、朝の情報番組『めざましテレビ』(フジテレビ系)でのこと。火災時などに高所の窓から避難するための器具を、菊間氏が体験リポートすることに。その際、器具の設置不備によりビル5階、高さ13メートルの窓から転落。一時的に記憶を失い、上半身を中心に13か所骨折するなど重傷を負った。彼女が転落して動かなくなるまでの一部始終は生中継でそのまま放送され、お茶の間に衝撃が走った。

「精神的にも肉体的にも大変な経験をされたにもかかわらず、その後新たに弁護士を目指すなど挑戦し続ける姿が素晴らしい。年齢を重ねるごとに輝きが増していらっしゃいますし、アナウンサー時代よりも今のほうがずっと生き生きしているように見えます」

 弁護士資格を保有している国会議員は全体の約5%とされ、女性では自民党衆議院議員で防衛大臣の経験もある稲田朋美氏、社民党党首で参議院議員の福島みずほ氏などがいる。

「弁護士に対しては、頼りになりそうだとか、弱者へ寄り添ってくれそうだというイメージを国民のみなさんもお持ちになっているのでしょう。今回ランキングで名前があがった方たちの中でも、菊間さんは特に政治の世界に近いイメージです。政治家に限らずとも、各省庁の委員などに抜擢されてもおかしくない方だと思います」

生放送のお昼の情報番組といえばこの人

 2位にランクインしたのは、ジャーナリストとして約40年活動を続けてきた安藤優子キャスター。'20年、メイン司会を務めた昼の情報番組『直撃LIVEグッディ!』(フジテレビ系)の放送終了に伴い、'87年から継続してきた生放送の報道生活を卒業。現在は情報番組のコメンテーターなどとして、不定期でメディア出演を続けている。

安藤優子が野党の議員として活躍する姿を想像した人も多い

「女性の不利益に関することを率先して変えていってくれそう」(大阪府・45歳・女性)

ぜひ野党系の議員として自民党の膿を出してもらいたい。安藤さんのようなしっかりと落ち着いたベテランの人が適任」(新潟県・68歳・男性)など、男女問わず幅広い層から支持を得た。

「安藤さんと聞いて私が真っ先に思い浮かべるのは、ヘリコプターに乗って生き生きと中継されている姿(笑)。もちろんお花見のリポートなんて生易しいものじゃなくて、険しい現場の上空を飛ぶような取材です。長年にわたり報道番組のキャスターを務められていましたが、これほどまで現場が似合う方はいませんよね」

 上智大学外国語学部卒で、英語が堪能であることも強み。サッチャー元首相やブッシュ元大統領、クリントン元大統領など世界のリーダーへのインタビュー経験もある。

もし政治家になったとしても、国会で何時間も議事堂内にいなきゃならないなんて安藤さんには退屈すぎるかも(笑)。それよりも現場で国民の声を聴いて、それを代弁するようなことをやってくださるのではないかという期待感はありますね」

断トツで支持を集めたのは元NHKアナ

 ダブルスコアに近い差をつけて1位となったのは、NHK出身で現在はフリーの有働由美子アナウンサー。結婚への憧れを自虐的に語り、熱心な阪神ファンを公言するなど親しみやすいキャラクターで男女問わず人気を集めている。

有働由美子が大差で1位に。男女問わず人気があることが表れている

「自分の発言に責任を持ち、国と国民のことをバランスよく考えてくれそう」(千葉県・48歳・女性)

「政治に見識もあるし、堂々と自分の主張を示して政治活動ができそう」(千葉県・63歳・男性)などの意見が。

「有働さんの魅力を全国に広めた番組は、やはり『あさイチ』(NHK)。共にメイン司会を務めていた、イノッチ(井ノ原快彦)との軽妙なかけ合いが最高でした。正義感にあふれ、なおかつ普通の感覚もきちんと持ち合わせている方なので、今回1位に選ばれたのも納得です」

 3月には、約5年半にわたりメインキャスターを務めた『news zero』(日本テレビ系)を卒業。本人は「自らの希望で」と語っていたが、後任に日本テレビを退職してフリーになったばかりの藤井貴彦アナウンサーが選ばれたことから「本当に円満卒業?」とさまざまな臆測を呼んだ。

「個人的には、このタイミングでの卒業は意外です。新しい音楽番組『with MUSIC』(日本テレビ系)の司会に抜擢されていましたが、先日はラジオ番組で徳光和夫さんから『有働さん、あんまり歌に関心ないでしょ』とツッコまれていました(笑)。せっかく報道でキャリアを積まれていたのに、少し残念ですね」

アナウンサーが政治家になってほしくない?

 実は1位の有働アナよりもさらに多い、236票を集めたのが「政治家になってほしい女性アナウンサーはいない」という意見だった。

「アナウンサーやキャスター出身の女性政治家には幻滅しているから」(大阪府・55歳・女性)

「アナウンサーやタレントが政治家になったって何もできっこない」(大阪府・55歳・男性)などの声が聞かれた。

「丸川珠代議員の裏金問題や小池百合子都知事の学歴詐称問題など、アナウンサー出身の方々の不祥事が取りざたされている真っ最中のアンケートだったのでこの結果は仕方ないかも(笑)。ただ女性アナウンサーの方々は選挙に当選するための知名度を十分に持ち合わせており、いわば最初から全国区。候補者として圧倒的に有利なので、擁立されやすいのでしょう」

 女性アナウンサーに限らず、芸能人、スポーツ選手などの著名人は各党にとって便利な“集票マシン”。最多となった「政治家になってほしいアナウンサーはいない」という国民の声を、永田町はどう受け止めるか。

政治家になってほしい現役&元女性アナランキング5

1位 有働由美子(フリー) 184票(男性96/女性88)

2位 安藤優子(フリー、キャスター) 94票(男性54/女性40)

3位 菊間千乃(元フジテレビ、弁護士) 68票(男性49/女性19)

4位 膳場貴子(フリー) 67票(男性52/女性15)

5位 大下容子(テレビ朝日) 50票(男性31/女性19)

山田美保子 放送作家、コラムニスト。テレビ・ラジオのコメンテーターとして『サンデージャポン』(TBS系)などに不定期出演中

取材・文/植木淳子