「絵画を見ているような気分になる作品でした」
5月17日から始まる映画『湖の女たち』で、福士蒼汰(30)が主演を務める。滋賀県・琵琶湖を舞台に、介護施設での殺人事件からストーリーが展開していく。福士が本作で演じた、事件の担当となる若手刑事・濱中圭介が、取り調べで出会った介護士(松本まりか)と歪んだ関係になっていく。
「圭介は、自分と重なり合う部分がなくて、完成した作品を観ても、どこか距離がありました。
映画のなかには抑圧されている人たちが沢山登場しますが、誰が“悪者”なのかをハッキリと決めることができません。立場によって変化していく善悪を見ていて“人間は主観的に生きているんだ”と改めて感じました」
“俳優観”を見つめなおすきっかけに
本作への出演は、これまでの“俳優観”を見つめなおすきっかけになった。
「大森監督の現場では、準備していったものをすべて剥がしてお芝居しました。お芝居をするときは何も考えず、本当に思ったことをセリフとして口に出していました。準備をして臨んでいた、これまでの作品への向き合い方とのギャップを感じました。
ラブコメ作品など、コミカルな役を演じるときに大切にしていたのは、いかに面白く見えるか、格好よく見えるかということ。
特にテレビなどのドラマの場合は、45分間のなかで“どこかに目立つ部分を入れないといけない”という意識があって、短い時間のなかでも感情をプッシュしていました。
一方で本作のお芝居は、“アート”のようで……。映画ということもあり、長い尺のなかで自分の感情が自然に出てくるまで、時間をかけて作り上げていったのが印象に残っています」
シリアスな作品ながらも、撮影期間中には和んだ瞬間もあった。
「撮影場所は滋賀県の山奥で、ご飯屋さんもあまりない地域。数少ないお店で、関係者の方たちと居合わせることが多かったです。あるとき、撮影終わりにマネージャーさんとご飯を食べにいったときも、スタッフの方が既にいらっしゃって。みなさんは僕たちがお店にいることに気付いていなかったので、帰るときに顔を出して驚かせた思い出があります(笑)」
英語や韓国語など、さまざまな言語の学習を続けている福士。大人になっても、新しいことに挑み続けるモチベーションとは?
「僕は元々好奇心が強いタイプ。いろんな人に会って、その人自身の話を聞いていくうちに、面白そうなものがどんどん見つかっていきました。幸い、俳優という職業はどんなことも役柄に活きる可能性があるので、無駄になることがありません。今、言語のほかに力を入れているのは、柔術という格闘技。頑張って取り組んでいることが、役者人生の糧になったら嬉しいです」
本作品では、登場人物たちに、さまざまな“理不尽”がふりかかる。福士自身は些細なことでも、臆さずに立ち向かうタイプのようだ。
「例えば、定食屋さんのメニューの写真に載っていた漬物と実際に出てきた漬物の食材が違っていた場合、理由が気になって聞いてしまいます。勇気をかけて話しかけた結果生まれる会話や、偶然に発生する雑談が好きなので、進んでアクションを起こします」
これまでのポップな役柄だけでなく、英語を活かした海外での作品など、演技の幅を広げている福士だが、これから挑戦していきたいのは“パパ”役だ。
「家族を題材にした作品に挑戦みたいです。今年31歳になるので、家庭がある役柄もできる年齢になりました。人の心を描いた温かいヒューマンドラマにも出演してみたいです。
プライベートでも挑戦したいことは沢山ありますが、今年の目標は“やりすぎない”こと。興味の幅が広いので、ついつい手を出してみたくなってしまうのですが、言語と体づくりの2つに絞って、思いっきり突っ走っていきたいです」
5月17日(金) 全国公開
配給:東京テアトル、ヨアケ
(C)2024 映画「湖の女たち」製作委員会