切り干し大根

 地味な見た目に反し、驚くべき栄養価を誇る切り干し大根。生の大根と比べて、鉄は15倍以上、カルシウムは約22倍、カリウムは約15倍もパワーアップ!貧血や骨粗鬆(こつそしょう)症のリスクが高まる中高年女性にはうってつけの食材だ。

「生の大根は90%以上が水分ですが、乾燥させることで食物繊維やタンパク質も凝縮されますし、ビタミンB1やビタミンB2も豊富。腹持ちがいいので食べすぎ防止や便秘解消、代謝を上げる効果も期待できます」

 教えてくれたのは管理栄養士の吉野愛さん。自宅で干し野菜を作るほどの乾物好きで、切り干し大根は常にストックしている。

賢く食べて効果UP 組み合わせるべき食材は

「切り干し大根は、ビタミンD、ビタミンK、ビタミンCを含む食材と組み合わせることで効率的に栄養が吸収され、健康効果が高まります」(吉野さん、以下同)

 切り干し大根に含まれる鉄は、吸収率が非常に低い非ヘム鉄で、吸収されるときに活性酸素を出して粘膜を攻撃してしまう特徴がある。

「それを防ぐには、ビタミンCやタンパク質、クエン酸を含むレモンや梅干しが◎。鉄の吸収を促します」

切り干し大根は干すことで栄養濃縮!

 次にカルシウムは、腸管からの吸収を高めるビタミンD、骨の形成を促すビタミンKを含む食材と一緒にとると吸収効率が上がる。

「卵、海藻、ブロッコリーが役立ちます。ビタミンDとビタミンKは脂溶性なので、油を使って炒め物にするといいですね。マグネシウムをプラスすると高血圧予防にも」

 また、体内の水分と塩分を調整するカリウムも豊富だが、水に溶けやすいため、もどさずそのまま加えるか、もどし汁ごと食べる料理が向いている。

「同じく水に溶けやすいビタミンB1とビタミンB2は糖質や脂質の代謝を促進するので、ごはんなど炭水化物に炊き込む調理もおすすめです」

腸内環境が整う“ヨーグルトもどし”が最強

 食物繊維では“リグニン”という不溶性食物繊維が特に多く含まれていて、腸の蠕動(ぜんどう)運動を促したり、便のかさを増やしたりする働きが期待できる。

「さらに効果を高めるなら、切り干し大根を無糖のプレーンヨーグルトに漬けてもどしましょう。善玉菌が含まれるヨーグルトの乳酸菌と善玉菌のエサになる食物繊維をセットでとることで腸内環境が整いますし、流出しがちなビタミン類も逃しません」

 ただし食べすぎは禁物。不溶性食物繊維は腸内の水分を吸収してふくらむため、便の量が多くなりすぎると詰まって排泄されにくくなってしまう。少量ずつ試し、水分をしっかりとることも忘れずに。

 切り干し大根の新しいおいしさに出合えるレシピをご紹介!

ヨーグルトでもどせばコクUP!

少ない調味料で美味!時短&簡単アレンジ

 切り干し大根を、おいしく気軽に調理するコツは?

甘みとうまみが凝縮されているので、煮物や汁物にするときはだし汁不要。砂糖やしょうゆの量を減らしても味が決まります。もどす際はひたひたの水で短時間(約20分)が基本。やわらかくしすぎないほうが、食感が楽しめて栄養の流出も防げます

 毎回もどすのが面倒な場合は、1袋分の切り干し大根を一度に水もどしするのがおすすめ。後日使う分は水けをしぼってラップで包み、ジッパー付き保存袋に入れて冷凍室へ。1か月程度は保存がきき、加熱する料理なら凍ったままサッと加えられる。

「刻む手間がない切り干し大根は調理の時短にも。和洋中を問わず、活用してください」

食べやすい長さに切るときは、もどした状態でキッチンバサミで切るとラクチン♪

切り干し大根Q&A

Q.調理前に洗ったほうがいい?

A.天日干しで作られるものには砂ぼこりが混じることもあるので、流水でもみ洗いしましょう。洗いすぎると水溶性の栄養素が流れてしまうので手早くサッとでOK。

Q.独特のにおいを減らすには?

A.においの正体は大根に含まれる「メチルメルカプタン」という成分。水洗いで軽減しますが、しっかり炒めたり、香辛料をきかせたりするとカバーできます。

切り干し大根アレンジレシピ

 もどし汁も活用してうまみたっぷり!

切り干し大根チャンプルー

 肉なしでも味がキマってボリューム満点

切り干し大根チャンプルー

材料と作り方(2人分)

(1)切り干し大根30gはサッと洗ってひたひたの水に漬けてもどし、食べやすい長さに切る(もどし汁大さじ3を取り置く)。にんじん20gは短冊切り、ニラ15gは5cm長さ、厚揚げ1個はひと口大に切る。

(2)フライパンにサラダ油大さじ1を中火で熱し、厚揚げを入れて両面に焼き色をつけ、切り干し大根、にんじん、もやし50gを加えて炒め合わせる。

(3)もどし汁、しょうゆ小さじ1、ニラを加えてサッと炒め、溶き卵1個分を回し入れて全体を炒め合わせる。塩・こしょう各少々で味をととのえ、器に盛ってかつお節適量をかける。

切り干し大根入り炊き込みチャーハン

 炒めずラクチン&カロリーオフ

切り干し大根入り炊き込みチャーハン

材料と作り方(2人分)

(1)米2合は洗ってザルにあげ、水けをきる。切り干し大根20gはサッと洗ってから水1カップに漬けてもどし、3~4cm長さに切る(もどし汁は取り置く)。チャーシュー50gは1cmの角切り、長ねぎ40gはみじん切りにする。

(2)炊飯釜に米を入れる。切り干し大根のもどし汁、顆粒鶏がらスープの素小さじ1/2ごま油大さじ1塩小さじ1/3こしょう少々を混ぜて炊飯釜の2合の目盛りまで入れ(足りない分は水を足す)、(1)の具材をのせて炊く。

(3)炊き上がったら溶き卵1個分を回し入れ、ふたをして5分ほど蒸らす。よく混ぜ合わせて塩・こしょう各少々で味をととのえる。

切り干し大根のコンソメスープ

 じんわり甘いもどし汁でコク出し

切り干し大根のコンソメスープ

材料と作り方(2人分)

(1)切り干し大根40gはサッと洗って水2カップに漬けてもどし、食べやすい長さに切る(もどし汁は取り置く)。ウインナー3本は1cm厚さの斜め切り、ブロッコリー1/4株は小房に分ける。

(2)鍋にオリーブオイル小さじ1を中火で熱し、切り干し大根とウインナーを炒め合わせる。もどし汁、固形コンソメ1個を加え、沸騰したら3分煮込み、ブロッコリーを加えて1分煮込む。塩・こしょう各少々で味をととのえる。

切り干し大根とひじきの豚バーグ

 乾物のクセをおいしくカバー

切り干し大根とひじきの豚バーグ

材料と作り方(2人分)

(1)切り干し大根10gひじき1g無糖プレーンヨーグルト60gに漬けてもどす。切り干し大根は5mm幅に切る。玉ねぎ80gはみじん切りにして耐熱ボウルに入れ、ふんわりラップをして電子レンジ600Wで1分半加熱し粗熱をとる。

(2)ボウルに(1)、豚ひき肉100g、酒小さじ2、しょうゆ小さじ1、塩小さじ1/6、こしょう少々を入れてよく練り混ぜ、4等分して小判形にまとめる。

(3)フライパンにサラダ油大さじ1を中火で熱し、(2)を入れて両面に焼き色がついたら水大さじ2を加えふたをする。7分ほど蒸し焼きにし、大葉4枚を添えて器に盛る。

(4)フライパンをサッと拭き、ポン酢大さじ2、みりん・酒各大さじ1を入れて中火にかけ、煮立ったら火を止めて(3)にかける。

切り干し大根のツナマヨ風サラダ

 マヨを使わずクリーミーに

切り干し大根のツナマヨ風サラダ

材料と作り方(2人分)

(1)切り干し大根15g、乾燥わかめ2gは無糖プレーンヨーグルト90gに漬けてもどす。切り干し大根は食べやすい長さに切る。ミニトマト3個は半分に切る。

(2)ボウルに(1)、ツナの缶詰1/2缶、酢小さじ2、オリーブオイル小さじ1、塩小さじ1/6を入れて混ぜ合わせる。器にレタス2枚を敷いて盛りつける。

切り干し大根入り棒棒鶏風

 辛みまろやか後ひくおいしさ

切り干し大根入り棒棒鶏風

材料と作り方(2人分)

(1)きゅうり1/2本は斜め薄切りにし、塩少々をふって水けをしぼる。切り干し大根15g無糖プレーンヨーグルト90gに漬けてもどす。切り干し大根は食べやすい長さに切る。サラダチキン40gは食べやすい大きさに裂く。

(2)ボウルに(1)、ごまドレッシング(市販)大さじ2、レモン汁小さじ1を入れて混ぜ、塩少々で味をととのえる。器に盛りラー油少々をかける。

切り干し大根のコチュジャン漬け

 ごはんが進むピリ辛味

切り干し大根のコチュジャン漬け

材料と作り方(2人分)

(1)切り干し大根30gはサッと洗って水けをしぼり、食べやすい長さに切る。セロリ70gは筋を取って斜め切りにし、塩少々をもみ込んでしんなりしたら水けをしぼる。にんじん20gはせん切り、ニラ15gは5cmの長さに切る。

(2)ボウルにコチュジャン・ごま油各大さじ1、酢小さじ2、しょうゆ小さじ1、砂糖小さじ1/2を入れてよく混ぜ、(1)を加えて混ぜ合わせる。

切り干し大根のめかぶあえ

 たっぷりの薬味が香りと食感のアクセント

切り干し大根のめかぶあえ

材料と作り方(2人分)

(1)切り干し大根20gはサッと洗って水けをしぼり、食べやすい長さに切る。みょうが1本、大葉3枚はせん切りにし、サッと水にさらして水けをきる。

(2)しょうが1かけは針しょうがにして、サッと水にさらして水けをきる。

(3)ボウルに(1)、味つきめかぶ2パックを入れて混ぜ、味が薄ければ白だし適量でととのえる。器に盛って(2)をのせる。

吉野愛さん●管理栄養士、フードスタイリスト。大学卒業後、製薬会社に勤務し、高齢者の嚥下障害や低栄養改善に取り組む。企業の商品・メニュー開発、雑誌やwebでのレシピ考案のほか、高齢者の食の資格・シニアフードアドバイザーの監修にも携わっている。

教えてくれたのは……吉野 愛さん●管理栄養士、フードスタイリスト。大学卒業後、製薬会社に勤務し、高齢者の嚥下障害や低栄養改善に取り組む。企業の商品・メニュー開発、雑誌やwebでのレシピ考案のほか、高齢者の食の資格・シニアフードアドバイザーの監修にも携わっている。


レシピ作成・調理・スタイリング/吉野 愛 取材・文/廣瀬亮子 撮影/矢島泰輔(レシピ)