ドラマ『ブルーモーメント』に注目が集まっている。気象災害から人命を守るため、現場の最前線で災害に立ち向かう『特別災害対策本部』(SDM)の活躍を描く作品。その中心にいるのが、山下智久(39)演じる気象研究官・晴原柑九朗だ。気象学で災害に立ち向かうという、これまでにない設定のドラマとなっている。
合格率が5%の狭き門
“気象のプロ”といえば、思い浮かぶのは気象予報士。昨今ではこの資格を習得する芸能人も多く、Snow Manの阿部亮平や、石原良純、窪塚俊介などの名前が上がる。この資格、合格率が5%という狭き門の国家資格。そんな資格の“実態”を、気象予報士の千種ゆり子さんに聞いてみた。
「試験は年に2回、1月と8月にあります。最近は1回にだいたい、4000人くらいが受験し、200人ほどが合格しているようです。3〜5回くらいの受験で受かるのが標準的な回数だと思います。私は3回目で合格しました」
その試験内容はというと、
「“一般”と“専門”に分かれ、それぞれが15問ずつのマークシートです。“一般”は力学、降水過程、太陽の放射から気候変動までといった基本原理の知識が問われます。“専門”は、予報の仕組みや警報の種類など気象の専門的な知識を問う試験になります。
そのほかに“実技”がありまして、予報士として現場に入ったら行う作業、例えば天気図を解析して、この地域は大雨に気をつけなければいけない、などを予測し、記述していくものになります」(千種さん、以下同)
気象予報士の本懐とは
気象予報士というと、お天気キャスターというイメージが強いが、
「テレビに出ている人は目立ちますから、そう見えるのかもしれませんが、製造業や教育関係に勤めていたり、気象予報会社で天気予報を作っている人のほうが多いんです。
ただ、この資格を取ったから何か仕事に就ける、といったものではないと思います。資格を取る人の中には、趣味としてお天気が好きな人や、気象についての知識を身につけたいという理由で習得する方も多くいらっしゃいますね」
『ブルーモーメント』では、天気予報は人の命、生活を守るもの、と晴原が気象予報について語っている。千種さんも予報士の存在意義についてこう語る。
「やっぱり人の命を救うところだと思います。例えば、台風や豪雨など、早い段階から情報を発信して、いかに被害をなくすことができるか、危機感を共有できるようにすることが大切だなと」
しかし現実としては、実際に事が起こってからアクションを起こす人も多い。
「発信する側からすると、そこがもどかしいんですよ。こちらは“こういう危険が迫っています”と伝えても、最終的に行動するかを決めるのは情報を受け取ったみなさん。
ただ、行動することでその方だったり、その方の大切な人の命が助かることにつながっていきます。なので、テレビやネットを通して適切に危機感が伝わるように、言葉の表現を日々努力しています」
ここ数十年、日本の気候も激変し、今までの常識では考えられない気象災害が起こっている。明日の天気を伝えるだけではないという、気象予報士の“本懐”をドラマで知る機会になるのかもしれない。