※写真はイメージです

 タンパク質や食物繊維、発酵食品など、身体にいい食べ物を積極的にとるよう心がけている人は多いだろう。しかし健康のためには、“食べないほうがいいもの”もあることをご存じだろうか。

 腸内環境に詳しい京都府立医科大学の内藤裕二先生によれば、「現代の日本はなんでも食べることができるが、だからこそ食べ物を選ぶ基準がとても重要。特に腸内環境を悪化させる食品を多く摂取すると、さまざまな病気のリスクが高まります」と話す。

悪玉菌を増やす動物性脂肪に注意

 日本屈指の長寿地域で知られる京都府京丹後市の調査研究を行い、長年長寿の秘訣(ひけつ)を探ってきた内藤裕二先生。そこから見えてきた食習慣は、腸内の善玉菌を増やす食べ方だったという。

「京丹後市の人の腸内環境を調べたところ、他の地域に比べて善玉菌が非常に多く存在していたんです。日本海側に位置する京丹後市は海産物が豊富で、食事は魚や海藻が中心。大豆などの豆や根菜、きのこもたくさん食べていました。

 悪玉菌を増やす飽和脂肪酸の多い牛肉や豚肉といった動物性脂肪をあまりとらず、善玉菌のエサとなる水溶性食物繊維をたっぷりとっていたのです」(内藤先生、以下同)

 善玉菌や悪玉菌といった腸内細菌のバランスは心身の働きに深く関わっていて、悪玉菌が増えすぎると老化やさまざまな病気の原因になることが近年の研究でわかっている。

「食生活の偏りなどで悪玉菌が増えると高血圧や動脈硬化のほか、糖尿病や脂質異常症、腎臓病、アレルギー疾患、子宮内膜症、うつ病、がん、認知症などの不調や病気の原因になります」

 逆に善玉菌のエサになるような食べ物を多く食べて善玉菌の働きが活発になれば、腸の免疫細胞の暴走を防ぎやすくなり、老化やがんのリスクを高める炎症物質の発生も抑えられる。つまり腸内環境を整えることは寿命を延ばすことにもつながるのだ。

欧米の肉を食べる食習慣が日本にも浸透し、タンパク質を効率的に摂取できるようになったことで日本人の寿命が延びたといわれることが多いですが、私は違うと考えています。

 確かに肉はタンパク質が豊富ですが、動物性脂肪に多い飽和脂肪酸をとりすぎることは腸内環境に悪影響を及ぼし、肥満や免疫力の低下、さまざまな病気の原因にもなります。特にレッドミートと呼ばれる牛肉、豚肉、羊肉は飽和脂肪酸が多いため要注意です」

 実際に海外の論文でも、中年期から大豆などの植物性タンパク質を多くとる人は、そうでない人に比べて長寿であるという研究結果も発表されている。

「私も日頃のタンパク源は魚や大豆が中心で、牛肉や豚肉を食べるのは週1回程度。量もかなり少なめです。あとは孫が遊びにきたときに食べるぐらいですね。焼き肉や揚げたトンカツはもう何年も食べていません」

 その代わりに、家では奥さまが調理した大豆ミートの料理を食べることが多いそう。

「麻婆豆腐などはひき肉で作るのとまったく変わらずとてもおいしいですよ。あとは大豆ライスも好きですね。お鍋の最後の雑炊は大豆ライスのほうがずっとおいしく仕上がりますよ。

 それから大豆で作ったヨーグルトも毎日食べます。食べやすいので、豆乳が嫌いな人にもおすすめですね」

水溶性食物繊維で腸内環境を整える

 また内藤先生は、ソーセージや砂糖も食べないようにしているという。

ソーセージなどの加工肉は絶対に食べません。WHOは、加工肉を発がん性が確実にあるとされる『グループ1』に認定しています。どうしても食べたい場合は魚肉ソーセージを選ぶといいでしょう。

 また砂糖の摂取は、大腸がんに関係することが研究によってわかってきています。コーヒーショップの砂糖がたくさん入った甘いドリンクなどは、健康には毒といってもいいと思います」

 代わりに内藤先生が積極的にとっているのが、京丹後の人たちも欠かさない水溶性食物繊維。食物繊維には水溶性と不溶性があり便通には両方が欠かせないが、善玉菌のエサになりやすいのは水溶性だ。

「私は食物繊維をたくさんとれるように、豆乳やバナナ、食物繊維の粉末サプリなどを入れたスペシャルスムージーを毎朝欠かさず飲んでいます。日本人はどの世代も食物繊維が不足していますから、ぜひ試してみてください。

 ただし、市販のスムージーには保存料や砂糖などがたくさん入っているのであまりおすすめはできません。家で作るのとはまったく別物だと考えてください」

 重要なのは腸内環境をいかによくするか。善玉菌が喜ぶものを積極的にとり、悪玉菌が喜ぶ食べ物はできるだけ避けることが健康長寿の秘訣なのだ。

内藤先生が“食べない”もの イラスト/幸内あけみ

※持病のある方はかかりつけ医に相談のうえ、実施してください

名医の格言
・動物性脂肪と砂糖は腸内の環境を悪化させ、肥満を招くため要注意
・善玉菌を増やす水溶性食物繊維などの食物繊維を欠かさずに

毎日お手製!モーニングスムージー

 内藤先生が毎朝飲んでいるスムージー。作り方は、豆乳 200ml、バナナ 1/2本、食物繊維サプリ 5g、青汁粉末適量とはちみつ適量をミキサーに入れ、なめらかな液体になるまでよく混ぜる。

 内藤先生のお気に入りの食物繊維サプリは、グァーガム分解物。豆由来の水溶性食物繊維を効率的に摂取できる。

毎日お手製!モーニングスムージー

奥さまの特製!腸が喜ぶ豆おかず

 内藤先生の実際の料理写真。ひじきと大豆の煮物と、金時豆を煮たもの。海藻類や豆類は水溶性食物繊維が豊富で、善玉菌のエサとなり腸内環境改善に最適!

奥さま特製「ひじきと大豆の煮物」
奥様特製「金時豆の煮物」

 

内藤裕二先生●京都府立医科大学大学院医学研究科教授。著書に『100年腸~最強食物繊維があらゆる不調を改善!』(内外出版社)など。

内藤裕二先生●京都府立医科大学大学院医学研究科教授。著書に『100年腸~最強食物繊維があらゆる不調を改善!』(内外出版社)など。

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取材・文/井上真規子