加藤清史郎 撮影/齋藤周造

「あの“コナン”を自分が演じるのか」

 加藤清史郎(22)が、ゆっくりと噛み締めるように語る。宮崎駿の初監督アニメ『未来少年コナン』が、加藤主演で舞台化されることが発表された。

名作アニメの舞台化で座長に

 トヨタ自動車CMの“こども店長”など子役時代の活躍が印象的だが、近年はドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』の好演など、実力派俳優として頭角を現している加藤。次は名作アニメの舞台化に臨む。

「出演が決まって最初に感じたのは、自分がコナンを演じるのか、というプレッシャーです。それと同時に、やってやるぞという気持ちも湧いてきました。うれしさよりも、相当な覚悟を持って取り組まないといけない作品に出合ったな、と身の引き締まる思いでした」

 インタビューしたのは、本稽古の前段階としてのレッスンをしている時期だった。

「今は演出家のインバル・ピントさんに身体表現を教えてもらいながら、修行しています。超人的なコナンを舞台上に存在させるには、まずは自分の身体を知ることが土台になると思ったので、普段は使うことのない感覚や部位を刺激しまくって、敏感で繊細でしなやかな身体づくりをしています。毎日行っている、自分と向き合う修行です」

加藤清史郎 撮影/齋藤周造

 本稽古に向けた準備を日々の“修行”と称して己を律するところに、彼のストイックさが垣間見える。座長という役割に対するプレッシャーも強く感じているのではと思ったが、

「それは感じようとしたらいくらでも感じられてしまうので、あえて今は考えないようにしています。座長という部分に重きを置いてしまうと、コナンとして舞台に立てなくなっちゃう気がしていて。

 座長ができることは身に余る光栄ですし、自覚は常に持っていたいと思っていますが、かといって特別に意識したくはないというのが本音です。自分から考え込みにいくのは、やめておこうかなと。

 でも最終的には、清史郎があんなに頑張ってるなら、と周りの人に思ってもらえるような存在になりたいと思ってます」

 と、なんとも頼もしい答えが返ってきて“こども店長”の成長ぶりに思わず驚いてしまう。

人のために心を燃やす

 彼の演じるコナンは、超人的な身体能力を持つ、素直で正義感の強い男の子。自身との共通点については、

「コナンは本当に人を超えていて、僕は普通の人間なので……。だって僕、飛行機から親指だけでぶら下がったりできないですよ(笑)」

 と、コナンに似ているなんてとてもいえないと笑いながら、

内面なら、少しだけ似ているかもしれません。コナンは自分の大切な人を助けるためなら、自分のことを考えずに突っ込んでいくんですよ。そういうところに共感できます。

 僕はコナンほどできた人間ではまったくないですが、人のために心を燃やせるのは素敵だなと思うので、見習っていきたいです

 と、謙虚に語った。

加藤清史郎 撮影/齋藤周造

僕の原点は人との出会い

 宮崎駿監督のアニメーションの原点ともいわれている『未来少年コナン』。子役時代からキャリアを築いている彼は、原点についてどう考えているのだろう。

「この質問を受けてびっくりしたんですけど、ちょうど3日前くらいに、僕自身の原点について考えたんです。

 最近同窓会で中学の仲間に会ったときに、ここは僕の原点だと感じたんです。具体的な出来事ではなくて、出会いそのものが原点だな、と。僕は人との出会いで変わっていく人間なんだと気づかされました。

 そういう意味では、コナンでの出会いもきっと僕の原点になるし、原点にしないといけないと思っています。いつか振り返ったときに、コナンを演じたから今の自分がいると思えるように生きていきたいです」

 この舞台で、加藤清史郎の原点に立ち会える。

超人的な力がもらえるなら?

 どんな能力ももらえるなら、時間を超越する力が欲しいです。僕、時間が足りないんです。1日が72時間あったら、仕事をする、遊ぶ、寝る、がすべて満足するまでできると思います。

 48時間じゃ足りないです。今は睡眠を削りがちなので、時間を超越できたら思う存分寝たいな。あ、この答えだと夢がなさすぎますか?(笑)

 もちろんコナンのように空を飛んだりもしてみたいですよ!

加藤清史郎 撮影/齋藤周造

舞台未来少年コナン
5月28日(火)~6月16日(日) 東京芸術劇場プレイハウスにて上演


撮影/齋藤周造 ヘアメイク/入江美雪希 スタイリング/山田莉樹