『ドラゴンボール』の孫悟空、『名探偵コナン』の江戸川コナン

 漫画家・北条司の代表作『シティーハンター』が、今年、日本で初めて実写化され、大きな話題を呼んだ。1980年代の作品だが、いまだに根強い人気を誇る同作。特に鈴木亮平が演じた主人公・冴羽リョウは、女性人気がすさまじく、今回の実写化で恋心が再燃したという人も多いよう。

 というわけで今回は、「大人女性に聞く、私が恋した少年漫画のキャラクター」をランキング! 最も“乙女”の心を奪ったキャラはいったい誰なのか? ランキング結果をもとに、漫画家のかなつ久美さんに話を聞いた。

少年漫画はルックスではなく生き方で魅せる

 まずは、同率9位のキャラクターを紹介。1人目は『キャプテン翼』の主人公である大空翼。

「純粋で穏やかでリーダーシップもあり理想の男性だった」(岩手県・49歳)、「日本人も世界で戦えることを教えてくれた」(福岡県・47歳)。

 日本のサッカーを世界へと導いた存在として、「ほかのキャラとはちょっと格が違う」と、かなつさん。「世界を変えた男というのは強いですよね。世代を超えて影響を与え続ける姿は尊敬の域です」(かなつさん、以下同)

 そもそも、わかりやすいイケメンを描いて読者に恋させる少女漫画に対し、少年漫画は内面や生き方重視。イケメンじゃないのになぜかカッコよく見えるのは、かなつさんによると「主人公の成長の過程を見せることが多い少年漫画ならでは」の特徴だそう。

 同じく9位の『北斗の拳』のケンシロウも、そんな内面を評価されてのランクイン。

「背負っているもの、ユリアへの愛が、心に響いた」(北海道・50歳)、「過酷な運命を真正面から受け止める心の強さに感銘を受けた」(宮城県・54歳)など、人間性に惹かれたというコメントが多く寄せられた。

 8位には『るろうに剣心』の主人公、緋村剣心がランクイン。実写版映画のシリーズでは佐藤健が演じ大ヒット。「剣を握ったときの表情と、薫に翻弄されているときの表情のギャップに萌える」(宮崎県・49歳)。二面性が女子を惑わせた。

「普段は穏やかだけど、いざとなると強いという二面性にも女性は弱いですよね。原作の絵柄もきれいで、女子ウケしそうなルックスです」

『SLAM DUNK』からはあの2人がランクイン

 7位は『SLAM DUNK』の流川楓。「衝撃的にカッコよかった」(兵庫県・49歳)、「中学生のころ、本気の恋愛感情を抱いていた」(大阪府・43歳)など、“ガチ恋した”というコメントが多数。

「少年漫画において、魅力的なライバルの存在は不可欠ですが、流川はその筆頭だと思います。ただカッコいいだけじゃなく、どこか陰のある雰囲気も女性を虜にした要因でしょう」

 6位は『鬼滅の刃』の煉獄杏寿郎。今回ランクインした作品の中では、唯一の2000年代以降に誕生したキャラクター。

「身も心もすべてが強く、まっすぐで温かい。今思い出しても泣くほどに好き」(富山県・43歳)、「コロナ禍に映画を見たが、落ちた気持ちを奮い立たせてくれた」(福岡県・49歳)。その生きざまが大人女性たちの心を震えさせた。

「近年の漫画作品の中でも、久々にやってきたヒーローという感じがします。本当に惜しい人を亡くしました」

 5位は再び『SLAM DUNK』から。主人公の桜木花道が、ライバルを振り切ってランクイン。

「作中ではイケメンとして描かれていませんが、絵がきれいなので、カッコよく見えます。どうしようもないヤンキーだった桜木が、バスケに出合い、必死に努力する姿を見たら、恋に落ちるのは当然です」

 アンケートのコメントでは、「ヤンキーは嫌いだけど、桜木花道だけは別。ちょっとおバカなところも可愛い」(青森県・44歳)、「バカだけど、バスケと晴子ちゃんには真剣な花道に、何度も泣かされたし、元気をもらった」(埼玉県・47歳)など、まっすぐな性格が支持を集めた。

 続く4位は、『ドラゴンボール』の孫悟空。「悟空の大人になった姿に惚れた。強い敵と戦うシーンは、うっとりしながら見ていた思い出」(東京都・45歳)、「大人になって孫ができても、上を目指し続けるポジティブさが好き」(新潟県・61歳)など、圧倒的な強さを持ちながら、いつまでも子どものような無邪気さを忘れない悟空に、母性本能をくすぐられた女子が多かったようだ。

「死んだ後も戦うような戦闘好きなので、付き合ったら大変そう。私の中では子ども時代のイメージが強いので、恋愛対象にはなりませんが、応援したくなる気持ちはわかります」

「普通っぽいけど努力してる」あの人が1位に

 いよいよベスト3! ここで『シティーハンター』の主人公、冴羽リョウが登場。実写版映画の大ヒットによって、再び脚光を浴びることになった凄腕スイーパーが、堂々の3位に。

「エッチで可愛い面と、正義感あふれるカッコよさのギャップがいい」(大阪府・60歳)、「軽薄そうに見えて、思慮深く、情に厚い。粋なところもあって最高」(東京都・58歳)など、普段は三枚目キャラの冴羽が、仕事で見せるハードな姿にときめいたという意見。この結果には、かなつさんも納得。

「私も冴羽リョウは大好きです。顔はカッコいいし、身長も高くて、完璧。普段のふざけた姿を見ていると手が届きそうに思えるけど、絶対に届かない存在というのも魅力的」

 2位は『名探偵コナン』から工藤新一がランクイン。同作では近年、安室透の人気がすさまじかったが、やはり連載30年を超える作品の主人公は強かった。

「事件を解決する推理力だけでなく、何か国語もしゃべれるなど、知識の量もすごい」(大阪府・51歳)、「頭脳明晰で、スポーツ万能なところが好き」(埼玉県・42歳)

 など、完全無欠な面を推す声がある一方で、

「恋愛には奥手なところがキュート」(埼玉県・40歳)、「どんな事件が起きても、蘭ちゃんを一番に大事にしているところが好き」(千葉県・61歳)と、恋にいちずなところも人気を後押し。

「作品自体の人気がすごいですよね。幅広い世代に受けているし、今年の映画も大ヒットでした。ただ私は、新一はちょっと子どもすぎるなという感じ。大人な男性が好みなので、安室透のほうが好きですね(笑)」

 そして栄えある第1位は、野球漫画の金字塔『タッチ』の主人公、上杉達也。スイーパーや剣士など並み居る強豪を抑え、高校球児がトップに立った。

「いいかげんそうに見えて、ちゃんと努力しているところが好き」(兵庫県・51歳)、「飄々として何を考えているかわからないが、実はとても気の利く優しい人」(東京都・53歳)、「平凡に見えるけど、本当は天才。弟亡き後、南を甲子園に連れて行くために、頑張る姿が泣けた」(東京都・53歳)と、ひたむきな姿に魅力を感じる声が多かった。

「タッちゃんは、すごく普通の男の子なんです。見た目も決してイケメンではないし、スタイルもよくない。でもその普通さが、かえって女子に親近感を抱かせ、恋をさせたのだと思います。弟の遺志を引き継ぎ努力する姿は、好きにならずにいられません」

 いまだに大人女性をキュンキュンさせてくれる、漫画のキャラたち。やっぱり2次元は最高!

大人女性に聞いた「私が恋した少年漫画の登場人物」

1位 上杉達也/『タッチ』(1981年) 112票
2位 工藤新一/『名探偵コナン』(1994年) 87票
3位 冴羽リョウ/『シティーハンター』(1985年) 83票
4位 孫悟空/『ドラゴンボール』(1984年) 66票
5位 桜木花道/『SLAM DUNK』(1990年) 64票
6位 煉獄杏寿郎/『鬼滅の刃』(2016年) 63票
7位 流川楓/『SLAM DUNK』(1990年) 47票
8位 緋村剣心/『るろうに剣心』(1994年) 37票
9位 大空翼/『キャプテン翼』(1981年) 34票
  ケンシロウ/『北斗の拳』(1983年)

※インターネットアンケートサイト「Freeasy」にて4月下旬、全国の40歳以上65歳以下の女性1000人を対象に選択方式で実施

かなつ久美 漫画家。代表作はドラマにもなり多くの女性に支持された『OLヴィジュアル系』。自他共に認める大の犬好きであり、近年は保護犬活動に尽力。著書に『もしボクにしっぽがなかったら』(みなみ出版)など。最新作は『アラフィフヴィジュアル系』(電子書籍)

取材・文/中村未来