昨年、高い倍率をくぐり抜け、第一志望の小学校に合格したチャン家の長女。たまたま受けたテストで天才級のIQを認められ、メンサ会員となった。IQは生まれ持ったものと、環境が半分ずつ影響するという説もあるが、チャン家では、どんな育児を行ってきたのだろうか―。
知能テストを受けさせてみたらなんとIQが139!
「4、5歳で300ピースのパズルを完成できるのがすごいってことは、後から知ったんですよ」
そう長女の特異なエピソードを語るのは、お笑い芸人のチャンカワイさんだ。現在、7歳と5歳の娘のパパであるチャンさんは、昨年、テレビ番組で、長女がメンサの会員であることを公表し、一躍話題になった。
メンサとは全人口の上位2%のIQ(知能指数)の持ち主が入れる国際的な組織。ただ、長女の知能が高いことを知ったのは、非凡さを感じていたからではなくまったくの偶然からだった。
「僕が“ロケ芸人”なんで、コロナ禍の感染が心配で、娘を幼稚園に行かせられなかったんですね。それが原因でクラスになじめなくなってしまって、園の友達とどう距離を詰めればいいのか、区の施設に相談に行っていたんです。そのアドバイスの中で、長女の行動観察のために知能テストを受けさせてみたらIQが139と出て。“これなに!?”っても
特に空間認識能力にすぐれた才能があることがわかり、施設の人のすすめもあってメンサに会員登録した。
「振り返ってみれば、立体駐車場とかで何階のどこに止めたのかも覚えているし、射的とか弓道系の遊びもうまかったんです。以前番組で、元プロ野球選手の鳥谷敬さんから空間認識能力はスポーツに絶対必要な力だと伺ったんです。フライが飛んできてバシッと捕るのは運動神経じゃなくて空間認識能力なんだと。僕や妻はそういうのが苦手なので、両親からの贈り物じゃなく、娘が自力で開拓していった能力なんでしょうね」
とはいえチャンさんの力も大きく影響しているようで、長女が1歳のころにはおもちゃインストラクターの資格を取得している。
「妻に“子育てで役割を持ってほしい”と言われて取ったのがきっかけです。ただおもちゃを与えるのではなく、このブロックはこういう意味で頭の筋肉が鍛えられるとか、これは数字に強くなれるとか、おもちゃの“知育”の側面を知っていれば育児に役立つと思ったんです」
なんとなく買うよりも、一緒に遊びながら楽しく学べる方法を、と選んだのだ。
「でもその後、僕のほうから子どもに仕掛けたことは一度もなくて。子どもが“こういうの欲しい”って言ったら“じゃあこういうおもちゃがあるよ”と提案する感じで。本音では、“パパが教えてくれるおもちゃ面白い!”って喜んでもらって、子どものヒーローになりたかったからなんですが、思わぬところで資格が生きました(笑)」
IQは筋肉と一緒で鍛え続けないと能力が落ちていく
そこで気になるのが、天才を育てたチャン家のおもちゃだ。
「パズルが大好きで3歳ごろからいっぱい与えていました。300ピースでも箱の見本を見ながら作っちゃうんですよ。将棋の藤井聡太さんが小さいころに遊んでいたことで爆売れした、三角の立体になるマグネットのパズルもよく遊びましたね。
頭で描いてから組み立てる『ニューブロック』や『ころがスイッチ ドラえもん』(プログラミング思考が身につくというバンダイの知育おもちゃ)でも、空間認識能力が育ったのかな。ただ楽しく遊んでいる様子で、遊びと知育になんの隔たりもなかったですね」
IQが高いことがわかってから子育ての方針に変化はあったのだろうか。
「IQは筋肉と一緒で鍛え続けないと能力が落ちていくらしいんです。だから能力を維持するために、数学に特化した図形教室に通ってるんですが、僕には太刀打ちできないくらい難しくて。けど本人は楽しんで通っているので、大切な居場所のひとつなんだと思います」
小学校は国立を選択した。
「メンサの会員になる前から受験は考えていました。僕は三重の田舎出身なので私立も国立もよくわからないんですが、妻の父が国立出身でその良さを聞いていたので」
そのために、志望校のある区へ1年前から引っ越して準備をスタート。受験前にはまずくじ引きによる抽選があり、外れれば行きたい学校を受験することすらできない。
「子どもにはその点も前もって教えました。行きたいからって、受験できるわけじゃないんだよ、と。それでも、受験対象の学校のテストの傾向や、特徴なんかも事前によく調べて、家族みんなで話して挑んだっていう感じです」
はたして、望みの学校へ入ることはできたのだろうか。
「もうね、受験しに行って帰ってきたときの目の色が全然違いましたね、ここ行きたい!って」
見事、希望する学校に合格し、この春には小学2年生に進級している。
「4月から7時間授業が始まったんですけど“7時間授業、うれしい!”ってめっちゃ楽しそうで。僕自体は学校が楽しいってあんまり思えなかったので、学校には“ありがとうございます!”って感謝の気持ちでいっぱいです」
帰宅後もスケジュールがびっしり。
「習い事は本人がやりたいと思うものはできるだけやらせてあげたいと思っていて。例えば昨日は、オンラインで英語をやったあと、頭の回転がよくなると世界的に流行っているソロバンをやって、学校の宿題をやって、合間にご飯を食べて数学教室の図形の問題をやって、好きな絵本を読んで、お風呂に入ってギリギリ20時に寝ました」
これだけ詰め込まれていると大人でもぐったりしそうだが……。
「怒涛ですね。次女もソロバンと、受験に向けたオンラインの授業を受けてるんですけど、2人ともめちゃくちゃ楽しんでるんですよ。そのことに親の僕もビックリします」
長女の場合はむしろ「やりたい」があふれてしまい、優先順位をつけるためにそれぞれの習い事のいい面などをわかりやすく箇条書きにして、本人が納得したうえで選ばせているという。
チャンさんの教育法で驚くことのひとつがその“行動力”だ。チャンさんの経験では、自ら「行きたい」「知りたい」と思って行動したことは鮮明に覚えている。だからこそ子どもたちが好奇心を示したときは、即、行動に移すようにしている。
ロケ芸人の仕事が役立っている
「『ドラえもん』を見ていて、ある時“渦潮を見たい”って言い出して。ロケで行った鳴門だな、行き方も完璧にわかるしと実際に連れて行ったら“すごーい”と。もうそれで渦潮のことは覚えちゃって。普段からロケ地の勉強をして番組に臨んでいるので、その知識も披露できて役立っていますね」
子どもが成長するにつれ、SNSやゲームとの付き合い方も気になるところ。
「うちにはまだゲームはないんですけど、欲しいって言ったらやらせたいです。ゲームにも役割があると思うので、どんなゲームをやるのか一緒に探して、ゲームの目的を追求してほしいですね。遊びと教育は隔てるべきではないと思ってるので、ゲームもYouTubeもアニメもただの娯楽と思ってほしくないんです。いろんな疑問を生んでくれて、種をまいてくれて解決もしてくれて……これをダメっていうのはおかしいなと」
疲れてクタクタで帰宅しても、本気のテンションで子どもと向き合い、仕事で自宅を離れているときは毎回1時間以上、妻と電話で子どもたちの情報を共有するというチャンさん。チャン家の子どもたちの非凡さは、この両親の熱意あってこそ開花したともいえそうだ。
「メンサ」ってなに?
1946年にイギリスで創設された、全人口のうち上位2%のIQの持ち主が入れる国際グループ。全世界100か国以上に約13万4000人、日本には4700人(2019年12月時点)の会員がいる。講義やミーティングなどの交流を通して知性や才能を認知、育成し人類の向上に役立てることなどを目的としている(公式ホームページより)。
チャン家の子育ての掟
・興味を持った時が伸ばし時。体験を重視する
・勉強と遊びの境目をなるべくなくす
・やりたいものは自分で選ばせる
・喜びも悲しみも家族全員で。共感を大切に
チャンカワイ えとう窓口とお笑いコンビ「Wエンジン」を結成。グルメを中心に年間250日以上のロケを行う、芸歴24年のロケリポーター。NHK Eテレ『天才てれびくん』、毎日放送『所さんお届けモノです!』などレギュラー多数。