閉店してしまった唐揚げ専門店(画像は一部加工)

《唐揚げ店の倒産 前年比9倍に急増》

 5月初旬に報じられた信用調査会社『帝国データバンク』の発表に基づく記事が注目を集めた。急増した唐揚げ店だがブームが去り、倒産が相次いでいるというもの。

「本当にひどいなと。クレームも入れました」

 そう話すのは、『日本唐揚協会』の八木宏一郎専務理事。リリースには《水面下の閉店や廃業などを含めれば、より多くの唐揚げ店が市場から退出したとみられる》という、どの業種にも当てはまるような記述も。

協会調べの“事実”

「同じ記者さんが何度も。これで同じニュースが3回目。唐揚げに何か悪い思い出でもあるのか。どうにかして唐揚げを叩きたいとしか思えません」(八木専務理事、以下同)

 唐揚協会では現状についてどのような反論があるのか。「協会調べでも、店舗数は確かに減っていまして、昨年は全国で354店舗減。ただ、唐揚げ店はコロナ禍の3年で1943店増えました。昨年減った354店はこの急激に伸びた分の一部が減ったと考えております」

 店舗数が伸びている地域もあるが、都市部は減少傾向。

「千葉や神奈川はほぼ横ばい、東京は前年比で50店舗減少となっていますが、爆発的に増えた'22年と翌'23年の落ち込みと比較すると、現状は減少スピードが遅くなっていると考えます」

 唐揚げ店が急増する“ブーム以前”の'20年の全国の店舗数は2445店。そこから爆発的に増え、淘汰(閉店)もありながら、'24年現在は4034店。コロナ禍というイレギュラーすぎる事象を挟み、1600店ほど増えた状態をキープしているというのが協会調べの“事実”だという。

原材料の高騰による閉店は「聞いたことがない」

 また、前出の記事では鶏肉とキャノーラ油の値上がりが打撃だったとされている。

「唐揚げ店が原材料の高騰で潰れるという話は聞いたことがない。これは真っ向から否定したくて。潰れている理由でいちばん多いのは、集客ができなかった、スタッフが集まらなかったというものです。

 実際に潰れたところを複数件知っていますが、人手不足のためです。店主が動けなくなったけど引き継ぎがいない、スタッフがいないなど。バイトを募集しても来ない。人の問題、もしくはおいしい唐揚げを作れないという味の問題。材料費が上がって値上げしても、ちゃんとお客さんについてきてもらえるかだと思います。苦渋の決断で値上げは皆さんされている」

 記事にはまだ不信感があるという。帝国データバンク発表によれば、倒産が“急増”したという'23年の27件に対し、'20年〜'22年の倒産件数はいずれもひと桁。

「その期間ははっきり言ってもっと潰れていると思います」

コロナ禍に出店ラッシュとなった唐揚げ(写真はイメージです)

 これはコロナ禍の巣ごもり需要などもあり、唐揚げ店が爆発的に増えた期間だ。

「嘘と言うのもあれなんですが……この期間が2件や3件のわけがなくて。知っているだけで潰れた会社はそれ以上あります。今回の記事で“9倍”が言いたいためなのか」

 協会が考える唐揚げ店の現在、そして未来は──。

ミーハーな店舗が一掃され、実力のある店舗が残る時代になってきたと考えます。メディアはブームがどうのと言いたいと思いますが、唐揚げは定番としてより定着していく方向だと思います。

 商売として地域に根づく、そのために期間限定の商品や味の工夫が必要で、それがないと淘汰されてしまう難しさはある。ただ、それはラーメン店でも何でも同じだと思います」