開幕から2か月足らず、98試合を残しながらも「休養」が発表された埼玉西武ライオンズ・松井稼頭央監督。指揮官は「(休養を)意識していなかった」と漏らしただけに、実質上の「解任」と見られている。
監督に就任した2023年シーズンを5位、巻き返しが期待された今シーズンだったが、5月28日時点で15勝30敗の最下位と低迷。首位の福岡ソフトバンクホークスとは15・5ゲーム差をつけられ、早くも自力優勝の可能性は消滅。
松井監督に代わって代行を務めるのは渡辺久信GM(ゼネラルマネジャー)で、28日から始まる中日ドラゴンズとの交流戦から指揮を取る。
「投高打底の傾向にある今シーズンとはいえ、12球団最下位のチーム打率.214(得点は11位)が物語るように、とにかくチャンスで1本を打てるバッターが少ない。
主力選手が毎年のようにチームを離れていき、“おかわり君3世”こと渡部健人ら期待の若手が結果を残せていないことも一因でしょう。正直なところ、松井監督の責任というよりも、誰が指揮を取っても変わらないと思わせる、“ドン底”のチーム事情と言えるのかもしれません」
スポーツ紙・野球担当記者が嘆くように、これまで浅村栄斗(東北楽天ゴールデンイーグルス)、秋山翔吾(シンシナティ・レッズ→広島東洋カープ)、森友哉(オリックス・バファローズ)と日本代表クラスの選手が去り、昨年には山川穂高がFA権を行使してホークスに移籍。
ライオンズで育った選手がFA権を取得するや移籍し、他球団に大型契約で迎えられて活躍する。そんな選手らを目の当たりにして、一番悔しい思いをしているのは一所懸命に応援し続けるファンだ。そんなファンの心理を表したかのような“事件”が、松井監督の休養発表の1週間前に起きていた。
サヨナラの場面で山川が死球交代
ホークスの本拠地・みずほペイペイドームで行われた5月19日のライオンズ戦。1対1で迎えた9回裏ワンナウト二塁、一打サヨナラの場面でバッターボックスに立ったのは絶好調の四番・山川穂高。
マウンド上のアブレイユが投じた157キロのストレートは、山川の左手に直撃する死球(デッドボール)。球場内が騒然とする中で山川は一塁に向かうことなく、そのまま代走を送られてベンチに下がったのだった。
怪我の具合を心配するホークス応援席からは「山川コール」の大歓声が沸き起こったのだが、その一方で、
「西武ファンが陣取るビジター応援席からも、一部から拍手と歓声が起きたのです」とは、地方ローカル局の情報番組でスポーツコーナーを担当するディレクター。ところが、西武ファンによる“拍手と歓声”は明らかに山川を応援するものではなかった。
「SNS上でも、問題シーンを現地で撮影していたお客さんの動画が拡散されていますが、“いいぞ!アブレイユ!”“よくやった”などと、さも山川選手の死球交代を喜ぶような声も入り込んでいます」
またSNSでも同様に、死球を受けた山川を「ざまあ」と嘲笑う声、それを咎めるホークスファンや野球ファンによる舌戦が繰り広げられている。
ゴミ箱に捨てられた山川のユニフォーム
相手選手へのブーイングはプロ野球、メジャーリーグのみならずプロスポーツの試合ではよく見る光景だが、怪我をした選手に、また怪我をさせた選手に対して拍手や歓声を送るのは褒められた行為とは言えない。
山川に関しては4月の開幕後にも、西武時代のユニフォームに赤いテープでバツ印を貼られ、ベルーナドームのゴミ箱に無惨に捨てられた画像がSNSで物議を醸したばかり。
「プライベート問題で西武球団に迷惑をかけ、ホークスに移籍したかと思えばホームランを量産する活躍ぶり。翻って自チームといえば打てずに最下位と、フラストレーションが溜まるばかりのファンが、山川のアクシデントに乗じて溜飲を下げたい気持ちもわからなくはありません。
それでも選手も人間です。現在、プロ野球選手会は選手に対する誹謗中傷への対応に本格的に取り組み、悪質な事案には法的措置も講じ、また相手を侮辱するような応援や度を超すヤジに関しても各球団が意注意喚起を促しています。軽い気持ちのつもりが、自分に返ってくる時代であることも理解したほうがいいでしょう」
ちなみに19日の試合は、山川の後に続いた近藤健介がサヨナラ打を放って2対1でホークスが勝利。試合後の場内では『ピンクフルデー』のイベント仕様で流された、『可愛くてごめん』の歌詞《ムカついちゃうよね?ざまあw》に合わせて、ホークスファンの大歓声が起きたことは言うまでもなくーー。