ダウンタウン

 30年以上にわたりバラエティー界を引っ張り続けてきたダウンタウンの松本人志がテレビから消え、そろそろ半年がたとうとしている。それによってバラエティー業界の勢力図は変わったのか。それともさほど変化はないのか……。

 あらためてバラエティー界の今を知るため、20〜50代女性1000人にアンケートを取り、嫌いな&好きなバラエティー番組を徹底調査。はたして結果は……?

好き&嫌いバラエティー番組総選挙

 まずは嫌いなバラエティーから。5位は『ニンゲン観察バラエティ モニタリング』(TBS系)。「いたずら系は苦手。見ていて心が痛む」(神奈川県・50歳)、「ヤラセ感がぬぐえず、好きじゃない」(北海道・56歳)と一般人をドッキリに引っかけるという企画自体に拒否反応を示す人が多かった。

 テレビウォッチャーの漫画家・カトリーヌあやこさんは「ドッキリにはヤラセ疑惑がつきものですが、この番組は手が込んでいる分、余計に仕込みの匂いがしちゃうのかも。最近は透明カラオケみたいな歌番組的な企画も多く、企画のブレも感じます」と分析する。

 4位はゲストを招いてのトーク番組として長年人気を誇ってきた『しゃべくり007』(日本テレビ系)がランクイン。

「ゲストへの余計なおふざけが多くて、うんざり」(東京都・38歳)、「一般人が出てくるコーナーが増えたが、知らない人が出てきても面白くない」(福井県・34歳)などの意見が。

「バラエティー番組にとって怖いのは、マンネリとコンプライアンスと高齢化なんですけど、『しゃべくり~』の場合は高齢化の弊害がもろに出ています。

 くりぃむしちゅー、ネプチューン、チュートリアルの3組は昔のようなキレもなく、最近は若い女性ゲストが出るとウザ絡みするおじさんに見えちゃう(笑)。

 あと一般人を当てる企画が面白くないという意見には私も同意。マンネリからの脱却を図った企画がハマってないんですよね」(カトリーヌさん)

 そして3位は『有吉の壁』(日本テレビ系)。

「内輪だけで盛り上がっている」(東京都・46歳)、「毎回同じような内容で鮮度がなくなってきている」(千葉県・43歳)。有吉弘行が若手芸人たちを鍛え上げていくお笑い番組だが、放送開始から9年がたち、マンネリ感が出てきたか。

「内村光良さんの『内村プロデュース』の後継番組で、有吉さん自身『内村~』で再ブレイクしたこともあり、内村さんに代わって若手芸人を引き立てようという感じで、スベり散らかすことを含めて楽しい感覚がある。

 それを内輪受けや互助会的に感じたら“嫌い”となっちゃうんでしょう」(カトリーヌさん)

 2位は松本人志という柱が抜けてしまった『水曜日のダウンタウン』(TBS系)。

水曜日のダウンタウン(番組HPより)

 やはり「松ちゃんがいなくなって面白さが減った」(大阪府・52歳)という意見が多かったが、「ときどき不愉快な企画がある」(埼玉県・38歳)と相変わらずの攻めの姿勢に異議を唱える声も。

「松本さんの不在が最も大きいのが“水ダウ”。説を検証したVTRからスタジオに戻っての松ちゃんのひと言。これが見どころのひとつだったとあらためて感じます。

 松本さんがどういう視点でこのVTRを見たのかが番組にとってすごく大事なんですよね。松本さんの番組って内輪受けが多く、芸人ファーストというか芸人が面白がっていることが面白いみたいな番組が多い。

 視聴者がそれを面白いと思うには松ちゃんの視点が必要で、それがなくなったからつまらないと感じる人はいるでしょう」(カトリーヌさん)

 水ダウを抑え、1位に選ばれてしまったのは『ジョンソン』(TBS系)だ。

TBS系バラエティー番組『ジョンソン』(番組公式サイトより)

 '00年代、ダウンタウンをメインに人気を誇った『リンカーン』の後継番組として大々的に始まったが、まさかの体たらく。好きなバラエティーにはランクインしていないので、実質断トツの1位だ。

「『リンカーン』と比べたら面白さが半減している」(千葉県・36歳)、「企画がイマイチ。ゲストのアイドルに頼りすぎ」(大阪府・48歳)と、演者と企画の両方にダメ出しが。

「『リンカーン』の後を継いで『ジョンソン』なんてタイトルにしたのがそもそもの間違い。ダウンタウンを中心に当時の人気芸人がこぞって出ていた番組を、かまいたち、見取り図、ニューヨーク、モグライダーで後を継ぎますって言われても……。俺のベストキス発表会なんか誰得だよって。

『リンカーン』でやっていた企画を今やるのはコンプライアンス的にも難しいし、そういう意味でも無理があるんです」(カトリーヌさん)

 6位以下は、『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)、『アッコにおまかせ!』(TBS系)、『ぐるナイ』(日本テレビ系)、『バナナサンド』(TBS系)と10位『バナナ~』以外は老舗番組が並び、マンネリと高齢化問題を如実に表す結果に。

マツコの番組を抑え1位に輝いたのは?

 一方、好きなバラエティー部門で力を見せたのがマツコ・デラックスだ。まずは『マツコの知らない世界』(TBS系)が5位にランクイン。

マツコ・デラックス

「マツコの毒舌とマニアックな世界の深掘りがユニーク」(東京都・43歳)

「マツコさんは人あしらいが絶妙で、スナックのママみたい。そこに常連さんが来て……みたいな番組が多い。『マツコの~』はそれにうんちくが加わって、タモリさん感が強い。深夜番組からメジャーになった点とか共通点も多いし、私はポストタモリさんはマツコさんだと思ってます」(カトリーヌさん)

 4位は『有吉の壁』(日本テレビ系)。好き部門でも入っているのはさすが。「芸人のいろんな姿が見られて面白い。みんな楽しそう」(鹿児島県・28歳)など若手に注がれる有吉の温かい視線を楽しんでいる人も多い。

この番組はコント芸人のアピールの場になっているのと地方ロケが新機軸。佐藤栞里さんの存在も売れない芸人の闇を薄める装置として絶妙です」(カトリーヌさん)

 3位は『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)。

「日曜夜にピッタリの面白さ」(茨城県・40歳)という意見が代表するように安心感と信頼感で好順位に。

「日曜夜8時はイッテQという人が少なからずいて、この安定感はすごい。折々で新しいキャラクターを発掘し、新陳代謝を図っているのもさすがです」(カトリーヌさん)

 2位はまたしてもマツコが登場。村上信五とMCを務める『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)だ。

「奇抜な人たちと彼らへのMCのイジりが面白い」(埼玉県・44歳)

「個性的な人材+個性的な街を紹介する番組ですけど、人も街もその濃さがいい意味で深夜番組的で面白い。松本さんと一緒で、マツコさんの視点があって成り立つ番組だと思います」(カトリーヌさん)

 1位は、松ちゃん不在でも強かった『水曜日のダウンタウン』(TBS系)。「ほかの番組ができないギリギリまで突っ込んだ企画が面白い」(長崎県・47歳)と攻めの姿勢を支持する声は多い。

「ほかの番組と比べると企画が断然強いですよね。今のバラエティーが一番気をつけなきゃいけないコンプライアンスにあえて切り込んでいく。昔のバラエティーのヒリヒリ感を唯一残している番組で、そこも魅力です」(カトリーヌさん)

 ちょっとした毒がなければ笑いは面白くない。賛否両論あって初めて人気バラエティーといえるのだろう。そういう意味では、松本不在でも水ダウは強かった。もちろん、演者も大事だが、バラエティーはやはり企画が勝負ということかもしれない。

嫌いなバラエティー番組TOP10

1位『ジョンソン』57票 TBS系 月曜夜9時
2位『水曜日のダウンタウン』46票 TBS系 水曜夜10時
3位『有吉の壁』40票 日本テレビ系 水曜夜7時
4位『しゃべくり007』38票 日本テレビ系 月曜夜9時
5位『ニンゲン観察バラエティ モニタリング』35票 TBS系 木曜夜8時
6位『世界の果てまでイッテQ!』31票 日本テレビ系 日曜夜8時
6位『アメトーーク!』31票 テレビ朝日系 木曜夜11時15分
8位『アッコにおまかせ!』29票 TBS系 日曜昼11時45分
9位『ぐるナイ』28票 日本テレビ系 木曜夜8時
10位『バナナサンド』26票 TBS系 火曜夜8時

好きなバラエティー番組TOP10

1位『水曜日のダウンタウン』 73票 TBS系 水曜夜10時
2位『月曜から夜ふかし 63票』 日本テレビ系 月曜夜10時
3位『世界の果てまでイッテQ!』 52票 日本テレビ系 日曜夜8時
4位『有吉の壁』 48票 日本テレビ系 水曜夜7時
5位『マツコの知らない世界』 45票 TBS系 火曜夜8時57分
6位『アメトーーク!』41票 テレビ朝日系 木曜夜11時15分
7位『上田と女が吠える夜』27票 日本テレビ系 水曜夜9時
7位『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』27票 日本テレビ系 火曜夜7時
9位『踊る!さんま御殿!!』25票 日本テレビ系 火曜夜8時
10位『それSnow Manにやらせて下さい』23票 TBS系 金曜夜8時

カトリーヌあやこ 漫画家&テレビウォッチャー。著書にフィギュアスケートルポ漫画『フィギュアおばかさん』(新書館)など

取材・文/蒔田陽平