5月28日から31日まで、上皇ご夫妻は栃木県日光市を私的に旅行された。
「おふたりが日光を訪れるのは'01年以来、23年ぶり。学習院初等科時代の上皇さまは太平洋戦争末期、日光で約1年4か月の疎開生活を送られました。その思い出を巡るため、今回の旅行が計画されたようです」(皇室ジャーナリスト、以下同)
過去、日光への旅行は実現せず
実は、ご夫妻はこれまでに3度、日光への旅行を計画されていたが、どれも実現することはなかったという。
「'15年9月に1泊2日で日光を訪問するご予定でしたが、その1週間前に関東と東北を豪雨が襲いました。被害状況を慮って、計画は断念。その翌年の5月に再度、旅行計画を立てられたものの、4月に発生した熊本地震の被害状況を考慮して取りやめに。さらにその翌年の'17年5月にも計画を立てられましたが、陛下のお風邪のため、急きょ中止となりました」
最後の日光旅行の計画から7年がたった今、再び旅行を計画された理由について、『皇室の窓』(テレビ東京系)で放送作家を務めるつげのり子さんはこう分析する。
「今年4月にご夫妻は65回目の結婚記念日を迎えられました。おふたりは、お住まいの仙洞御所で控えめにお祝いをされ、その日は毎年のようにこれまでの思い出を振り返って、“あの場所をもう一度訪れたい”というお話をされてきたのではないでしょうか。最後に日光へのご旅行を計画されたのは'17年。その後、'19年の退位に向けてお忙しい日々を送られました。退位後は、新型コロナウイルスの流行で、旅行どころではなくなってしまい、しばらく訪問のタイミングがなかったのでしょう」
ようやく叶った今回のご旅行では、上皇さまゆかりの地を多く訪問された。
「到着された初日、上皇さまが約80年前に疎開生活を送られた旧田母沢御用邸のお庭を散策されました。途中、上皇さまは建物を指さし、“あそこで勉強した”と美智子さまに説明しておられました」(前出・皇室ジャーナリスト)
2日目はお疲れもあってか、お出かけにはならず、ホテルで過ごされた。
「ご夫妻が滞在されたのは中禅寺湖のほとりにたたずむ高級ホテルで、おふたりがいらっしゃるとあってか、直前に改修工事が行われていたみたいですよ」(近隣住民)
3日目の午後は、短時間で3か所を回られた。
美智子さまも驚く歓迎ムードの日光
「午後2時ごろ、学習院が保有する郊外施設の『日光・光徳小屋』をご訪問。学習院の学生が奥日光の探索をする際などに立ち寄る山小屋で、ご夫妻は日光を訪れるたびに立ち寄られるそうです。'63年、美智子さまが流産された際、体調を心配された上皇さまがお連れになったこともありました。おふたりにとって忘れられない場所なのでしょう」(前出・皇室ジャーナリスト、以下同)
ご夫妻はその足で奥日光へ赴かれた。
「上皇さまは終戦の直前、戦局の悪化のため、田母沢御用邸から、奥日光湯元の南間ホテルへと滞在先を移られました。上皇さまはそこで終戦の玉音放送をお聞きになられたのです。現在、南間ホテルは廃業となり、跡地には別のホテルが建てられています。おふたりは、その付近の2か所を訪問されました」
まず、奥日光の自然に関する案内や展示を行う、日光湯元ビジターセンターをご訪問。職員から30分ほど説明を受けられた後、湯ノ湖を散策された。
「上皇さまが疎開中に滞在された南間ホテルは、湯ノ湖のほとりにありました。当時、学習院初等科の制服をお召しになった上皇さまが、ご学友と湖畔の周辺を散策するお姿がたびたび見かけられたそうです。おふたりは湯ノ湖に20分ほど滞在した後、午後5時ごろホテルへとお戻りになられました」
湯ノ湖周辺では、ご夫妻の姿をひと目見ようと、大勢の人が列をなしたという。たまたま観光に訪れていた女性はこう振り返る。
「おふたりは、奉迎に集まった人が手をふっていることに気がつくと、何度も手をふり返してくださり、大変感激しました! ただ、美智子さまは上皇さまと手をつなぎ、反対の手ではハンドバッグをお持ちになっていたので、うまくお手ふりができなかったようで……。
笑顔の反面、“きちんと手をふり返せずごめんなさい”といった、困ったような表情をしていらっしゃいました。そのためか、上皇さまが車に乗り込まれてから、美智子さまはわざわざ私たちを振り返って、バッグを持っていないほうの手で、あらためてお手ふりをしてくださったんです」
陛下を支える美智子さま
さらに、ビジターセンター前で奉迎に加わったという別の女性は、印象に残ったことがあるようで、
「入館の際、おふたりは施設前の階段を上るときに、手を取り合っておられました。陛下が転ばれないよう、美智子さまがしっかりとお支えになっているように見えました。
また、お帰りの際、美智子さまは車の窓を開け、マスクをわざわざ下げ、笑顔で手をふってくださいました。その際、美智子さまのほうが感激されたようなご様子だったことがとても印象に残っています。
たくさんの人が集まって、“お気をつけて”や“お元気で”などと声をかけていたので、歓迎ムードに驚かれたのかもしれませんね」
現地の歓迎ムードの一方で、心無い声もネット上では散見された。
「今回の旅行を巡って、SNS上では“税金の無駄遣い”“いくら思い出の場所でも何度も行く必要はない”といった書き込みが多数見られました。最近は、上皇ご夫妻が旅行やご静養でお住まいを離れるたび、そうした声が上がっています」(前出・皇室ジャーナリスト、以下同)
誹謗中傷のようなネット上のコメントを重く受け止められたのか、おふたりはある気遣いをされていて、
「ご夫妻は日光への往復に、東武特急『スペーシアX』を利用されました。スペーシアXは6種類の座席があり、通常座席だけでなく、個室やソファ席が備わっています。さらに、プライベートジェットをイメージしてデザインされた“走るスイートルーム”をコンセプトにした車両があるなど、贅沢な空間を売りにしています。
しかし、ご夫妻が利用したのは、往復共に6種の座席の中で最も価格の安い、スタンダードシート。国民感情を考えると、私的旅行といえど贅沢はせず、あえて質素な車両を望まれたのでしょう。車窓からは、奉迎の人々に対して、にこやかに手をふられるなど、どこにいても、おふたりの配慮が見受けられました」
念願叶った旅行中でも、おふたりが国民への気遣いを忘れることはない─。