昨年10月、『ガールズメッセ2023』でジェンダー平等の重要性を述べられた佳子さま

 秋篠宮家の次女・佳子さまは6月1日までギリシャを公式訪問され、日本との外交関係樹立125周年を記念した式典などに出席された。

現地メディアから絶賛の声を浴びる佳子さま

5月25日、ギリシャ公式訪問のため、羽田空港から飛び立たれた佳子さま

「現地メディアから佳子さまは《東洋のダイアナ》だったり、《天性のコミュニケーション力》と絶賛され、一挙手一投足に注目が集まりました。5月29日には『国立ろう者施設』をご訪問。佳子さまは現在、『全日本ろうあ連盟』の非常勤嘱託職員として勤務されているので、手話は堪能でいらっしゃいます。この施設では、現地で習った手話も交えながら交流されました」(皇室ジャーナリスト、以下同)

 佳子さまはギリシャ訪問前、ギリシャの歴史や文化についてのご進講を受けられるなど、事前に入念な準備をされており、現場でも生かされたようだ。

「現地の遺跡や博物館にも足を運ばれましたが、中でもパルテノン神殿を訪れた際は、ギリシャの国旗を象徴するような青と白のお召し物が話題に。ギリシャのイメージを意識した服装で、現地メディアもこぞって取り上げたのです。日本での事前準備が功を奏したのかもしれません」

 そんな佳子さまにとって海外訪問は、少々“苦い思い出”がおありのようで。というのも、'23年の秋に南米のペルーを公式訪問し、マチュピチュ遺跡を訪れた際、同行していた記者団から感想を求められ、“おーという感じがします”とご発言。これがネット上で《語彙力がない》などと、批判が集中してしまったのだ。

 象徴天皇制に詳しい名古屋大学大学院人文学研究科の河西秀哉准教授は、今回の訪問前の準備について、ペルー訪問時との違いを述べる。

「ペルーでのご批判を受けて、事前に相当な準備をされたと思います。通常、皇族は、訪問前には事前に相手国のことを学ばれます。ただ、今回は準備をされているお姿を国民に見せたことが重要でした。ペルー訪問時も、ご進講を受けられたのかもしれませんが、そうしたお姿を積極的に見せることはありませんでした。今回のように、相手国を理解しようとする姿勢を国民に見せることで、批判は少なくなったのではないでしょうか」

ギリシャと皇室の関わり

現地時間の5月28日、首都アテネでギリシャ初の女性大統領であるサケラロプル大統領を表敬訪問された(写真/共同通信社)

 一方、同国の風土や文化について、世界の王室事情に詳しい関東学院大学の君塚直隆教授に話を聞いてみた。

「青く美しい海や白い建物、オリーブやワインなどが有名で、観光地として人気が高く世界中から観光客が訪れます。さらに、ギリシャの文明は“ヨーロッパ文明の源流”ともいわれているのです。そうした背景もあり、ギリシャ国民は自国の遺跡や歴史に誇りを持っている方が多い印象です」

 ギリシャと皇室の関わりについて、君塚教授が続ける。

「日本とギリシャの国交は1899年の修好通商航海条約の締結から始まりましたが、実は両国は縁が薄いのです。今回のご訪問をきっかけに、例えば佳子さまが『日本ギリシャ協会』という団体の名誉総裁になられたり、一層交流を深めることができたらと思います」

 一方、前出の皇室ジャーナリストは、ギリシャ初の女性大統領であるサケラロプル大統領を表敬訪問した“重要性”を指摘する。

「ギリシャは政界に女性が少なく、『欧州ジェンダー平等研究所』が発表する、経済・教育・政治参加などにおける男女間の不均衡を表す『ジェンダー・ギャップ指数』では、ヨーロッパ28か国中で25位。そんな中、'20年に初の女性大統領で元裁判官のサケラロプル氏が就任したのは、ギリシャが“ジェンダー平等を推し進めるため”といわれています。かねて佳子さまも、男女格差についてたびたび公の場で発言されています。今回の面会時も、サケラロプル氏とジェンダー問題に関する話題があがった可能性は十分あるでしょう」(前出・皇室ジャーナリスト、以下同)

 例えば昨秋、『ガールズメッセ2023』でスピーチを行われた際に佳子さまは、

「今後、ジェンダー平等が達成されて、誰もが安心して暮らせる社会になることを、誰もがより幅広い選択肢を持てる社会になることを、これらが当たり前の社会になることを心から願っております」

 と述べられたり、昨年9月の『女子大生誕生110周年』を記念する式典でも、理系を専攻する女性が少ない現状に言及されている。

佳子さまにも影響を及ぼす

女性宮家創設の議論は愛子さまにも影響する(写真は5月29日)

 英王室に詳しいジャーナリストの多賀幹子さんによると、ギリシャにおけるジェンダー平等の試みは、佳子さまにも影響を及ぼすだろうという。

「デンマーク、ノルウェーなどでは女性首相の就任は当たり前となっています。王位の継承に関しても、かなり前に男子優先だったのが第1子優先となりました。日本でいうなれば、女性天皇を認めることと似ているかもしれません。北欧から始まったジェンダー平等の動きに、ギリシャも続こうとしているかのようです。その第一歩なのか、初の女性大統領が誕生しました。佳子さまも大いにインスピレーションを受けられるはずで、学ぶことは多かったかもしれません」

 今まさに、日本の皇室でも“女性皇族の待遇”について話題となっている。

「安定的な皇位継承と皇族数の確保を目的として、議論が活発化しており、女性皇族が結婚後も身分を保持する案と、旧宮家の男系男子を養子に迎える案の2つを議論しています。女性皇族が結婚後も身分を保持する案が通れば、これまで存在しなかった女性宮家の創設が認められることにつながる」(皇室担当記者)

 女性宮家の創設は、ある意味、ジェンダー平等への大きな一歩のように思えるが、以前から佳子さまは「結婚して皇室から出たい」というご希望があるとも報じられてきた。

 前出の河西准教授は「自己矛盾に陥ってしまうのでは」と話す。

「現行の皇室典範では、皇室の皇位継承は男系男子が優先されています。この体制のままジェンダー平等を推し進めて結婚後も女性が皇室に残った場合、佳子さまは結婚しても“皇室を離れたいのに離れられない”という自己矛盾に陥るおそれがあります。ただ、自己矛盾に陥ることをわかっていて、それでもジェンダー平等を進めようとする発言をされている可能性もあります」(河西准教授、以下同)

 自己矛盾に陥りながらも、提言を続ける理由とは─。

「国民に切実な思いだと伝えることができるし、こうして記事になることでジェンダー平等の考え方を広めていくことにつながります。ジェンダー平等をあえて提言することで、現在の皇室に問題提起をされているのかもしれません」

 ギリシャ初の女性大統領との接見が、プリンセスを奮い立たせるか。

多賀幹子 ジャーナリスト。ニューヨークとロンドンに、合わせて10年以上在住し、教育、女性、英王室などをテーマに取材。『孤独は社会問題』ほか著書多数
君塚直隆 関東学院大学国際文化学部教授。イギリス政治外交史などを専門とし、著書は『立憲君主制の現在─日本人は「象徴天皇」を維持できるか─』ほか多数
河西秀哉 名古屋大学大学院人文学研究科准教授。象徴天皇制を専門とし、『近代天皇制から象徴天皇制へ―「象徴」への道程』など著書多数