いくつかの企業や団体が協力して新しく生み出した「コラボ食品」が、次々ヒットしている。
売り切れが相次ぐコラボ食品の背景
今年2月にはタレントの江頭2:50のYouTubeチャンネル「エガちゃんねる」とファミリーマートのタッグで生まれたポテトチップスが、発売直後に完売。4月の再販でも即完売となった。
5月からは松本幸四郎が主演する『鬼平犯科帳』の新シリーズ制作を記念し、カルビーとコラボした『堅あげポテト 鬼旨(おにうま)ブラックペッパー』がコンビニで発売され話題だ。
「エンタメと食品のコラボは目を引きやすく、期間限定商品は売り切れになることも。価格も手頃で手に取ってもらいやすくなり、新たな需要を広げています」
そう話すのは、フードアナリストの吉岡杏奈さん。
「人気の定番商品同士のコラボも面白いですね。例えば『ファンタ』と『ハイチュウ』のマッチングは“どんな味だろう”と、それぞれのファンでなくとも興味をそそられる。
既存の商品に付加価値を与え合うコラボは消費者にとって、新しい“食体験”の機会なのです」(吉岡さん、以下同)
企業にとってもメリットは大きいと語る。
「SNSの投稿などで話題になれば、その企業の商品を知らなかったり、今まで商品を購入したことがない人の認知度を上げ、売り上げアップを狙えるチャンス。
企業にとって双方の“売り”や“強み”を生かして新しい顧客を取り込めるのは“うまみ”が大きく、新しいマーケティング策として、今後も活発に検討されるでしょう」
近年のトレンドは異業種と地方に
食品メーカー同士の組み合わせだけでなく、異業種の企業同士が協働して、今の流行や消費者ニーズに合わせた新商品も増えている。特に目立っているのがヘルスケア企業とのタッグだ。
例えば、飲料メーカーのキリンとサプリメント『カロリミット』を販売するファンケルのコラボ。
「健康志向の高まりを受け、低アルコール飲料の市場は伸びています。ファンケルの『カロリミット』は、糖や脂肪の吸収を抑制する効果が期待できる成分を配合したサプリメント。互いに手を組むことで、新しい価値を提供しているといえるでしょう」
キリンホールディングスの発表によれば、ファンケルとのコラボ商品シリーズの昨年の販売数量は前年の3倍強とファンを増やしている。
体組成計などを販売するタニタが運営するタニタカフェとドレッシングでおなじみのピエトロは、ヘルシータイプのドレッシングやスープなどを発売。売れ筋の『pietro daily plus ドレッシング レモン&ナッツ』は、定番品『ピエトロ ドレッシング和風しょうゆ』と比べ、塩分を大幅にカットしながらおいしさはキープ。
「コロナ禍以降、塩分カットや低GI値の商品が増え、健康寿命を延ばしたいシニア層やその家族にも人気です」
異業種コラボ食品のトレンドは、地方にも及ぶ。栄養科のある大学との産学連携プロジェクトも見受けられる。
「地方創生や地域活性化の流れに乗りやすいという理由からも、コラボ開発は進んでいます」
ほかにも、圧倒的なシェアを誇る地元企業と協力し、商品開発を行うケースも。
例えば、沖縄の酒造メーカー「オリオンビール」は三菱食品の北海道支社と連携し、それぞれの名産品マンゴーとメロンをかけ合わせたチューハイを作り、全国販売に乗り出した。
オリオンビールは沖縄県内では高いシェアを持つが、全国的にはビール業界の中で大手に次ぐ5番目に位置する。三菱食品は外食企業の仕入れ先として知られる会社だ。
「この商品は売り上げの一部が北海道と沖縄の自然保護に取り組む団体に寄付されます。地域の特産品を後押ししながら、社会貢献もできる。食のコラボの大きな可能性を感じます」
単においしいだけじゃない“コラボ食品の世界”。期間限定の商品も多いので売り切れる前に味わってみて。
健康志向のコラボ食品が増加中!
「カロリミット ノンアル梅酒テイスト」
メルシャン×ファンケル 290ml/オープン価格
甘くて高カロリーなイメージのある梅酒で、カロリー&糖類&アルコールゼロを実現。食事の糖や脂肪の吸収を抑える難消化性デキストリンが配合されており、罪悪感なくお酒気分を堪能できる。
「pietro daily plusドレッシング レモン&ナッツ」
ピエトロ×TANITA 280ml/594円
塩分40%カットの点でも注目を集め、ピエトロレストランの物販では、ドレッシングカテゴリでベスト3にランクイン。アーモンド、ピスタチオ、玉ねぎの食感に加え、瀬戸内レモンの爽やかさが夏にもぴったり。
「マヌカホワイトエール」MY HONEY×倉吉ビール
330ml/1980円
鳥取県倉吉市に工場を構える2つの会社がコラボしたホワイトビール。製造に使われることの多い砂糖に代えて、血糖値の上昇が緩やかとされる低GI食品・アカシアはちみつを使用。身体に優しい味わいに仕上げた。
吉岡さんイチオシ!見逃せないコラボ食品3選
地域活性化や昭和レトロブームなど、世の中の流行を反映させたコラボ食品が続々と誕生。
ご当地の名産品同士を組み合わせた新たなビールや、現地で絶大な人気を誇る名物グルメとタッグを組んだやきそば、昭和後期の食文化を彷彿とさせる辛甘カレーも登場した。
「オリオン WATTA メロン&マンゴー」
オリオンビール×三菱食品北海道支社 350ml/オープン価格
地方活性化を目指し、沖縄と北海道のメーカーがタッグ!
北海道と沖縄の企業が協働して地方創生を目指す「どさんこしまんちゅプロジェクト」から、両地方のフルーティーな味わいを楽しむことができる、夏にぴったりの缶チューハイが登場。
「日本の北と南をぶつける意外性が魅力。両地域を代表するフルーツであるメロンとマンゴーの組み合わせも、特に女性に人気が高いと思います」(吉岡さん、以下同)
「そばきや 和風とんこつやきそば」スガキヤ×まるか食品
117g/278円
名古屋の名店と人気やきそばブランドが新しい味を創作!
ペヤングソースやきそばでおなじみのまるか食品とのコラボによって、名古屋で人気の「スガキヤラーメン」がインスタントやきそばに変身!
「激辛や量の多さなど、インパクトの強い商品が多かったペヤングのやきそば。このコラボは、和風とんこつ味のなじみある味ということもあって全国的に愛される商品になる予感大」
「焚黒糖入り辛甘カレー」上野砂糖×ココイチ
180g/540円
大阪の老舗砂糖メーカーとのコラボで辛くて甘すぎないレトルトカレー
ココイチと上野砂糖のコラボで焚(たき)黒糖(黒糖やさとうきび由来の原料糖を独自にブレンドした加工黒糖)を使った辛甘カレーが誕生。
「辛さを選べるココイチが、甘さの方面でコラボすることに、まず驚きました。とはいえ、昭和40年ごろまで家庭で作るカレーには砂糖を使うのが当たり前だったので、昭和レトロブームの観点からも面白い一品です」
上野砂糖株式会社:TEL〔06-6561-3034〕
オリオンビール株式会社お客様窓口:TEL〔0120-487-950〕
カルビーお客様相談室:TEL〔0120-55-8570〕
株式会社オールハーツ・カンパニー(パステル):TEL〔0120-96-7722〕
株式会社MY HONEY:TEL〔0120-8383-52〕
寿がきや食品株式会社お客様相談室:TEL〔0120-730-261〕
ピエトロお客様相談室:TEL〔0120-769-300〕
メルシャンお客様相談室:TEL〔0120-676-757〕
森永製菓お客様サービスセンター:TEL〔0120-560-162〕
※商品によっては、販売終了の可能性あり。価格は編集部調べ
お話を伺ったのは……吉岡杏奈さん●1級フードアナリスト。「ヒトの三大欲求プラスα」をテーマに掲げて、食の世界を探求中。ホテルのメニュー開発を手がけるほか、講師としても活躍。
取材・文/オフィス三銃士