妻夫木聡、二宮和也、福山雅治、山田孝之

 現在、亀梨和也主演でドラマ『ゲームの名は誘拐』(WOWOW)が放送中など、毎年のように映像化されている作家・東野圭吾の作品。警察ものから復讐劇、探偵ものまでそのテーマは幅広く、名作と呼ばれる作品も多い。そこで、全国の20〜50代の女性1000人に、これまで放送された東野圭吾原作のドラマの中で、“実に面白い!”と思った作品をアンケート。1位に選ばれたのは……?

東野圭吾ドラマベストテン

 まずはトップ5から見てみよう。5位に入ったのは、妻夫木聡演じる獣医と吉高由里子演じる謎の美女が30億円の遺産をめぐる壮大な謎解きに挑む『危険なビーナス』('20年 TBS系)。「最後まで遺産の絵の場所がわからなくてドキドキした」(福岡県・49歳)、「サスペンスなのに、時折笑える部分もあって楽しめた」(富山県・29歳)などの支持の声が集まった。

妻夫木聡

 テレビウォッチャーで漫画家のカトリーヌあやこさんは、

「この順位は意外でした。確かに最後まで遺産の絵の隠し場所がわからなかったりと、サスペンスの部分はさすが東野さんだなって思います。

 ただ、これはオリジナル要素なのか、なぜか妻夫木さん演じる男性が妄想の中で、吉高さん演じる美女と恋に落ちるシーンが毎回あるんです。このお約束いるのかなって(笑)。“時折笑える”なんてコメントもあったので、逆に妄想タイムが好きな人も一定数いたんだな、とあらためて気づかされましたね」

 と評価する。

 4位は阿部寛扮する刑事が鋭い観察眼で事件を解決に導く、加賀恭一郎シリーズの人気作『新参者』('10年 TBS系)がランクイン。「阿部寛ファンにはたまらない渋い演技にハマった」(福島県・51歳)、「東京下町の情緒ある雰囲気の中で起きる事件と、人間模様が面白かった」(栃木県・48歳)などの意見が。

阿部寛

日本橋の人形町が舞台なんですが、東野さん自身の生活拠点の一部だったみたいなんです。

 実在のお店もドラマに出てきて、たい焼き屋に阿部さんがいつも並んでいるんですが、今の朝ドラ『虎に翼』の松山ケンイチさん演じる裁判官じゃないですけど、買おうと思ったら直前で売り切れて食べられないみたいなお約束も(笑)。

 物語的にも下町が舞台のせいか、すごく人情味あふれる事件が多かった。人間ドラマとしても素晴らしい作品でした」(カトリーヌさん)

 そして、3位には山田孝之と綾瀬はるかの好演が光った『白夜行』('06年 TBS系)。初恋の少女を助けるために父親を殺した少年と、少年をかばうために母親を手にかけた少女の、その後の14年を描いた運命の物語だ。

山田孝之

「初めにラストシーンが流れ、これから2人がどうなっていくのかハラハラしながら見守った」(神奈川県・45歳)、「残虐な物語だったが、若かりしころの綾瀬はるかと山田孝之の演技に見ごたえがあった」(東京都・52歳)と2人の演技を評価する声も多かった。

「殺人は許されないことだけど、親を手にかけざるを得ない状況にまで追い込まれた2人の心情を見事に描いた、まさに東野作品の名作ともいえるドラマだと思います。

 “お互いの存在が太陽”というセリフが何度も出てきて、不幸が次々と襲いかかってくるのですが、綾瀬さんの透明感のある演技と、山田さんの闇を抱えた陰のある演技が素晴らしかった。残酷な場面も多いので、コンプライアンス的に地上波では難しいですけど、菅田将暉さんと小松菜奈さんとかでもう一度ドラマ化してほしいです(笑)」(カトリーヌさん)

〈もう一度のドラマ化を夢見て『白夜行』を読もう〉

1位には偏屈な天才物理学者のドラマが

 2位に入ったのは、宮藤官九郎が脚本を担当した『流星の絆』('08年 TBS系)だ。二宮和也、錦戸亮、戸田恵梨香がきょうだいを演じ、小学生のころに両親を殺した犯人を見つけるべく共に暮らしている絆の物語だ。

二宮和也

「完全にクドカン節でしたが、コメディーの振り切り方がとにかく面白かったです」(東京都・47歳)、「きょうだいの秘密や両親の死の真相など予想外のことが多くて毎回ハラハラドキドキだった」(北海道・35歳)など、原作とはひと味違った展開にハマったという声が寄せられた。

「錦戸さんのことを“ぬれ煎餅”って言ったり、桐谷健太さんが演じた妄想課長を“ポストイット高山”って呼んだり、出てくる人がみんな面白くて、まさにクドカンワールド。ここまで原作との違いを許した東野さんに度量の深さを感じます(笑)。

 でも、これだけコミカルになってもドラマが成立したのは、主人公の3人を演じた二宮さん、錦戸さん、戸田さんの演技力の賜物。明るいシーンとシリアスな部分をすごく上手に切り替えて、バランスを取って演じていたと思いました」(カトリーヌさん)

〈第2位となった『流星の絆』の原作はコチラ〉

 多くの名作を抑えて“実に面白い!”と1位に輝いたのは、福山雅治が頭脳明晰な天才物理学者・湯川を演じた『ガリレオ』('07年ほか フジテレビ系)だ。事件のさなかに起こる超常現象を、湯川が解き明かし解決していく、映画化もされた人気シリーズ。

『ガリレオ』

「犯罪の巧みな仕掛けに驚かされるとともに、登場人物の人間関係も面白い」(岐阜県・46歳)、「科学的な観点から描かれていたり、人間の葛藤や心情も見事に描かれていた」(群馬県・47歳)など高評価の声が。

「まさに福山さんのハマり役で、演じる湯川先生のキャラ立ちがすごい。手をフレミングの左手の法則にして顔に当てて、“実に面白い”っていう決めゼリフに、音楽とともに黒板に数式を書き出したりと、映像化したことでより印象的で面白くなったと思います。

 原作では湯川先生のバディになるのは北村一輝さん演じる草薙刑事でしたが、ドラマでは柴咲コウさん演じる内海とか、女性刑事にかわった。そこも、月9っぽくてよかったのではないかと思います」(カトリーヌさん、以下同)

〈1位に輝いた『ガリレオ』シリーズの第1作目『探偵ガリレオ』〉

 6位以下を見ても、今年4月にNHK総合で放送された『天使の耳〜交通警察の夜』は、交通事故をテーマにしたものだったりと、東野氏が扱うジャンルは幅広く、物語もきっちり作り上げられているため、映像化に向いているのだそう。

東野さんの作品って、どれをとっても最終回は涙なくしては見られない人間ドラマになっているところが、ドラマ向きだなって思います。

 もう一つは最近、犯人が怪物だったりサイコパスっていう物語が多いじゃないですか。でも、東野さんの作品の多くは、犯人は私たちと同じ普通の人間なんです。

 例えば9位の『さまよう刃』は、竹野内豊さん演じる父親が、娘が凄惨な姿で発見され、あまりにもひどい手段で殺される映像を見たことから、犯人に復讐していくという少年法に切り込んだドラマ。

 父親は加害者であり被害者で、理不尽な苦しみだったりと、抜き差しならぬ事情から犯罪に手を染めてしまうんです。視聴者もそういう事情を知ってしまうから、心をえぐられる。

 制作スタッフにとってもやりがいがある作品ばかりですし、これからも多く作られていくんだろうなと思います」

実に面白い東野圭吾ドラマTOP10

1位 『ガリレオ』 167票
 '07年ほか フジテレビ系 出演/福山雅治

2位 『流星の絆』 132票
 '08年 TBS系 出演/二宮和也

3位 『白夜行』 99票
 '06年 TBS系 出演/山田孝之

4位 『新参者』 85票
 '10年 TBS系 出演/阿部寛

5位 『危険なビーナス』 52票
 '20年 TBS系 出演/妻夫木聡

6位 『秘密』 37票
 '10年 フジテレビ系 出演/志田未来

7位 『天使の耳~交通警察の夜』 31票
 '24年 NHK総合 出演/小芝風花

8位 『浪花少年探偵団』 27票
 '12年 TBS系 出演/多部未華子

9位 『さまよう刃』 25票
 '21年 WOWOW 出演/竹野内豊

10位 『ダイイング・アイ』 23票
 '19年 WOWOW 出演/三浦春馬

カトリーヌあやこ 漫画家&テレビウォッチャー。著書にフィギュアスケートルポ漫画『フィギュアおばかさん』(新書館)など