「栗山民也さんの演出で、主演は宮沢りえさん。お二方とお会いしてみたい思いがあったので。このチャンスに“やります!”という感じでした」
5人がそれぞれ複数役を演じる
6月29日から幕が上がる、舞台『オーランド』に出演するウエンツ瑛士(38)。本作は20世紀モダニズム文学の主要作家のひとり、ヴァージニア・ウルフの代表作とされている。
16世紀のイングランド。麗しき青年貴族・オーランド(宮沢りえ)は7日間眠り続け、目を覚ますと女性に変身していた……!そしてなんと20世紀まで、オーランドは性別も時代も超え、出会いと別れを繰り返しながら、自立と真の己を獲得していく。
「りえさんは、変わりゆく芸能界にずっといらっしゃった方。まさにオーランドといっても過言ではないと思うんです。お芝居としての魅力を含め、りえさんにたくさんのお話を聞いてみたいなと思っています」
と、期待を膨らませる。ウエンツが演じるのは、オーランドが各時代で出会う面々。ルーマニアの皇女、ハリー大公……ほか、片手ではおさまらない。
「そもそもキャストが5人という時点で、大変だと覚悟していたので(笑)。出ずっぱりのりえさんはとにかく大変ですからね。
視覚的な変化に加え、われわれ(4人)の動きによって、りえさんが反射で動けるように。大先輩に“助ける”は失礼ですけど、手を携えられたらいいなと思っています。
本当に演劇的で、見る人によって感想が違うだろうなと思いますし、僕自身も台本を読む日によって違うことを思ったり。うまく形容できないところもこの作品のひとつの魅力なんですが、取材者泣かせなんですよね(笑)」
リラックスをして初めて本領発揮できる
オーランドのように、目覚めたら性別が変わっていたら?女性になったらやってみたいことを含めて聞いてみると、
「うーん。そう思ったことは全然ないな(笑)。オーランドが生きる時代と今、性別が変わることの意味や戸惑い、生きやすさは全然違うと思うので」
物語の舞台であるイギリスに、ウエンツは'18年から1年半留学している。その経験が本作に役立っていると思うことは?
「今のところないです(笑)。この地名は知ってるな、ぐらい?」
ただ、作品への臨み方はイギリス留学を経て変化があったという。
「口では“大丈夫”って言っても絶対疲れていることはある。だから、意図的に休んでみる。リラックスをして初めて本領発揮できるというか。その時間を経て現場に行ったら、もう言い訳ができないですしね」
4歳から芸能界で活躍してきたウエンツ。仕事と距離を置いたのは、物心ついてからは初めてだった。
「失敗はできないというか。ずっと緊張状態がノーマルだったと思うし。偶然の産物ではあるんでしょうけど、帰国した自分は自然とその状態になっていましたね」
変化や転機、自分ではあんまり感じられない
現在、38歳。芸歴は35年近い。宮沢りえ同様に、やはりウエンツも長い時間の中で変化をしてきたはず。
「歌をやっていた時代があったり、映画をやったり、ミュージカルを始めさせてもらったり。その中でも、僕自身はあんまり変わってないですね。
歌をやっていた時代と今では、バラエティー番組でもちょっと感じが違うというか。それはたぶん、僕自身としてはやっていることは何も変わっていなくても、周りの見る目が変わっていて。
年を重ねて“しっかりしたね”と言われることもあるけどピンとこないし、大人になった気も全然ないし。だから変化や転機について、自分ではあんまり感じられないんですよね」
俳優として、タレントとして。今後の像についても、まったく考えていないと笑う。
「ただ、年下から明らかに気を使われることもあって。少し前のほうが、もっとざっくばらんだった。自分が変わっていなくても、他人からはやっぱり少し違って見えていることは自覚しなきゃいけないなとは思っています」
リラックスするために
稽古に入る前には、少しだけ休み、リラックスタイムを設けたというウエンツ。どんなふうに過ごしていたの?
「台本を読む時間を制限したりしていましたね。やっぱり台本があると読むし、考えるので。それって素敵なことだとずっと思っていたんですが、必ずしもそうではなくて。
自分が解決できない不安を、読むことで解決しているふうになってしまう。だから意図的に遠ざけていました」
PARCO PRODUSE 2024舞台『オーランド』
6/29〜30=彩の国さいたま芸術劇場。7/5〜28=PARCO劇場。その後は愛知、兵庫、福岡〔https://stage.parco.jp/program/orlando2024〕
撮影/渡邉智裕 ヘアメイク/豊福浩一(Good) スタイリング/作山直紀