「ヤバい女になりたくない」そうおっしゃるあなた。有名人の言動を鋭く分析するライターの仁科友里さんによれば、すべてのオンナはヤバいもの。問題は「よいヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、仁科さんがさまざまなタイプの「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」を分析していきます。
第101回 加護亜依
昨年8月に写真週刊誌「FLASH」に、指定暴力団幹部男性との韓国旅行写真を掲載された元モーニング娘。の加護亜依(以下、加護ちゃん)。反社との黒いつながりという記憶がさめやらぬ中、‘24年6月11日発売の同誌が「加護亜依“夜の女”に転身していた! ミニスカ&頬被りで『港区の隠れ家』ラウンジに隠密出勤」と報じたのです。
週刊誌報道に反論も…ちょっと無理がある?
しかし、加護ちゃんに言わせると、これらの報道は自分の釈明を無視した、一方的なものなのだそう。5月28日配信の「集英社オンライン」にて、加護ちゃんは“真実”を語っています。まず韓国旅行の件は、加護ちゃんの親友と二人で韓国旅行に行ったところ、韓国のホテルのトイレで別のママ友に偶然出会い、男性二人を紹介された。ビールをごちそうしてもらった手前、写真撮影を断れなかった。男性とは全くの初対面であり、旅費など出してもらった事実はない。つまり、相手の身元は知らないし、断りづらかったのだから、しょうがないと加護ちゃんは言いたいのでしょう。しかし、その言い訳にはちょっと無理があると思いました。
芸能人と写真を撮るときのポイントの1つは、芸能人の顔がはっきり映っていることだと思うのです。あの有名人と写真を撮ったのだということが他人に伝わらないと、その写真に価値がなくなってしまうからです。けれど、写真の加護ちゃんはサングラスをかけている。これでは「芸能人との記念撮影」というより、友人グループとの旅行の際の、気の置けない写真のように見えてしまいます。加護ちゃんが膝を立てて座っていることも、くだけた関係を連想させてヤバい。
加護ちゃん曰く、この報道の結果、テレビの出演やライブがキャンセルになってしまった。夫も体調を崩して、以前のように働けていない。そんな時に、義妹が飲食店をオープンすることになり、お給料をもらわない形で、週に1~2回、友達や知り合いが来るときに接客しているだけで、ラウンジ嬢に転身したわけではないと釈明しています。
なぜ加護亜依はこうも週刊誌に撮られたり、記事を書かれたりするのでしょうかという質問に対し、加護ちゃんは「そういう星に生まれています。確信しています」と答えています。無責任なコメントのようにも思えますが、確かに「そういう星」なのかもしれないとも思うのです。
加護ちゃんの来し方を振り返ってみましょう。わずか12歳でモーニング娘。入りした加護ちゃんは、子どもっぽさや末っ子的なキャラで人気を博しますが、実生活では大のオトナ以上の活躍を見せます。’11年9月29・10月6日号の「女性セブン」によると、加護ちゃんの両親は離婚しており、母親は再婚しています。継父はビジネスを立ち上げますが失敗、借金だけが残ります。その借金を返したのが、芸能界入りしてスターとなった加護ちゃんだったのです。デビュー2年目に高額納税者となった加護ちゃんですが、それでもお金は足りなかったそうで、お母さんから「事務所にお金を借りられないか」と相談されたこともあったそうです。
18歳年上の男性との温泉旅行と喫煙で契約解除
複雑な家庭に育った少女がスターとなり、親孝行をするのは日本人好みの美談ですが、加護ちゃんは未成年時の喫煙を「FRIDAY」に報じられ、1年間の謹慎処分を受けることになります。謹慎中に今度は18歳年上の男性との温泉旅行と喫煙が「週刊現代」に掲載されると、所属事務所に契約を解除されてしまうのです。悪いことは重なるもので、この頃、両親は離婚をし、加護ちゃんは母親ときょうだい3人の生活費用を稼がなくてはいけなくなってしまったそうです。
謹慎中にオトコと温泉に行っている場合ではないと私は思いますが、’10年9月30日配信の「ポストセブン」によると、加護ちゃんのお母さんはこの男性を信頼している様子。「雑誌にはいろいろ書かれていますが、実際の彼はとても好感が持てる人物。(中略)。ハワイへは亜依と一緒に行ってくれて、滞在費とかもろもろ面倒をみてくださったようです」と語っています。実際に会ったことのあるお母さんが問題ないと言うのでしたら、外野があれこれ言う必要はないでしょう。でも、「滞在費とかもろもろ面倒をみてくださった」という発言がちと気になりました。娘が芸能人としてがけっぷちに追い込まれているのに、お母さんが気にしているのは、加護ちゃんではなく、相手の懐具合、もしくはカネ離れの良さのように思えたからです。
この男性とは縁がなかったようで、加護ちゃんは会社役員の男性と結婚します。‘14年10月25日配信「日刊ゲンダイ」によると、港区の家賃月100万円はくだらない高級マンションに住むなどセレブな生活ぶりでしたが、経営していた飲食店の多くを手離したほか、登記上の所在地に会社が存在していないなど、ビジネスはうまくいっていなかったそうです。借金を取り立てられた際、男性が山口系暴力団組長の名前をちらつかせたということで恐喝未遂、違法な高金利で貸し付けをする出資法違反容疑でも逮捕されています。‘14年11月13日号「女性セブン」は、この男性を「黒社会との繋がりも深いとされ、以前から“いわくつき”と言われる人物でした」と報じており、善良な市民ですと断言できる人物ではないようです。その後、加護ちゃんはお子さんを連れて離婚します。
“夜の女”は、ヤバい人を見分けるノウハウを持っている
こうやって見ていくと、韓国旅行の写真も含めて、加護ちゃんには、金銭苦と反社の影が交互にちらついているように思えるのです。周囲にまともなオトナがいれば、「保証人でないなら、親の借金を返す必要はない」「お母さんやきょうだいの生活を、すべて加護ちゃんが支える必要はない」などの基本的なアドバイスをしてくれるのでしょうが、加護ちゃんの環境ではそれは難しかったのだと思います。金銭面以外でも、スターにはさまざまな利用価値があります。自分のビジネスがうまくいっているようにみせたい、もしくは自分の力を誇示するために、芸能人とのお近づきになりたいという人が無数に寄ってきて、その中には前夫のように反社と断定できないまでも、法律スレスレのことをしているヤバゾーンの人がいないとは言い切れないでしょう。そういう人にとって、有名人は自分の命綱のようなものですから、表面的には優しくすることでしょう。それを自分への愛情だと勘違いした時、地獄への扉が開くのだと思います。
加護ちゃんから何らかの恩恵を受けたいと思う人にとっての一番の願いは、加護ちゃんが人を疑わず、子どものように素直に自分の言うことを聞いてくれることでしょう。どうして家族の借金を自分が返さなくてはいけなかったんだろうとか、交際相手の会社は、どんなビジネスをしているんだろうというふうな疑問を持たないで、何も考えずに馬車馬のように働いてくれたら、好都合なのだと思います。母となり、36歳となった加護ちゃんは、十分オトナです。しかし、実際は、オトナたちが自分の都合のために、加護ちゃんの成長を止めてしまい、その結果、加護ちゃんは大人になれなくなってしまった。いわば加護ちゃんは「永遠の子ども」のように見えてならないのです。
加護ちゃんは週刊誌に“夜の女”呼ばわりされたことに納得がいっていないようですが、いっそのこと、真剣にやってみたらいいのではないかと思います。芸能人が副業することは珍しくありませんし、夫が体調を崩して働けない、加護ちゃんも反社との写真が影響して仕事が減っているというのなら、収入源は多いほうがいい。そこで出会った人を好きになってしまうとか、新たに反社の人と知り合ってしまうというリスクも大アリですが、お店の女の子たちは、ヤバい人を見分けるノウハウを持っているはずですから、教えを乞うたらどうかと思うのです。だまされない人を目指すのではなく、ヤバくない範囲でほどほどに騙されることができたら、テレビも加護ちゃんを使いやすくなるのではないでしょうか。加護ちゃんの健闘を祈ります。
<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」