「第71回産経児童出版文化賞」贈賞式での佳子さま(2024年6月5日)

「新しい経験となるわけですけれども、いろいろな方からお導きいただきながら、2人でいい家庭を築けたら幸いと思っております。皇族としての抱負といたしましては、天皇をお助けする立場でございますし、与えられた皇族としての仕事を一つひとつ、大切に果たしていくつもりでおります」

秋篠宮さまと紀子さまの「結婚の儀」

秋篠宮さま、紀子さま'90年6月29日、結婚の儀(写真/JMPA)

 佳子さまの両親である秋篠宮ご夫妻は1990年6月29日に結婚、34回目の結婚記念日を迎えた。古装束の束帯姿の秋篠宮さまと十二単姿の紀子さまの「結婚の儀」が皇居・賢所で行われた。

 この後、天皇陛下(現在の上皇さま)から当時の礼宮さまに「秋篠宮」の宮号が贈られ、新しく「秋篠宮家」が創立された。

 このとき秋篠宮さまは24歳、紀子さまは23歳で、初々しいロイヤルカップルの誕生だった。

 結婚前の1989年9月12日、皇室会議で婚約が正式に決まった後、2人は記者会見に臨んだ。報道によると、記者たちから「ご結婚されると、独立され、宮家を営まれるわけですが、今後のご自身のあり方、抱負というものがございましたら、伺いたいと思います」と、尋ねられた秋篠宮さまは冒頭のように答えた。

「ご結婚されたらどんな家庭を築いていきたいとお考えでしょうか」と、記者たちに聞かれた紀子さまは「礼宮さまとご一緒にのんびりと明るく、和やかな家庭を築けたらと思っております」と、話した。

新婚時代の新居を紹介

結婚から25年を迎えた秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま、眞子さん(2015年11月15日)

 秋篠宮ご夫妻は結婚満25年を迎えた2015年6月、2人の対談形式による文書を発表した。その中で、《けっこう思い出がある》という新婚時代の新居を紹介している。木造平屋建て105平方メートルで、庭にはナマズを飼うための池があった。私も何度かこの新居を訪問したことがある。事務棟は、屋根つきの渡り廊下で自宅と結ばれていたが、現在の宮邸と比較すると何もかもずっとコンパクトだった。事務所の職員用のイスに秋篠宮さまが座っていて、驚いたこともあった。

《少しばかり新居となった家のことを話しましょうか。というのは、私にとって10年ほど過ごしたこの家には、けっこう思い出があるからです。(略)たしかに大勢の人とそこで会うのには適当ではありませんでしたが、こぢんまりとしていたぶん、非常に落ち着く場所でもありました。玄関を入って少し大きな声で呼べば、どこにいても大抵聞こえたのではないでしょうか? 結婚後の生活をあの家でできたことはよかったと思っています》(秋篠宮さま)

《約60年の木造家屋を、二人で過ごせるように直して、新しい生活がはじまりました。そして、娘たちの誕生にあわせて部屋を増やしました。その中で、娘たちは成長していき、子どもたちの元気な声が響き、ギターやピアノの音もよく聞こえる、温もりの感じられる家でした》(紀子さま)

《今の家からは近くにあるので、この前行ってみたのですが、子供たちが小さい頃に遊び回っていたことを想い起こし懐かしく感じました。彼女たちも気に入っていましたよね》(秋篠宮さま)

《はい。今の家に移りましてから、またあちらの家で住みたい、と娘たちが話していたこともありましたね》(紀子さま)

 結婚後のご一家は多くの人が知るとおり、穏やかな日々を重ねてきた。しかし、2006年9月6日、長男の悠仁さまが生まれたことで秋篠宮家の運命が一転する。皇室にとって、1965年11月30日、秋篠宮さまの誕生以来、41年ぶりとなる男子の誕生は、国民にとっての大きな喜びでもあった。

現行の皇室典範

 現行の皇室典範では「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と定められている。秋篠宮さまが、天皇の位を継ぐ皇位継承順位第1位の皇嗣となり、悠仁さまが皇位継承順位第2位となったが、将来、天皇、皇后両陛下の長女、愛子さまは天皇にならず、結婚すると皇室を離れることになる。

 明治から大正、そして、昭和、平成、令和と天皇の位である皇位は、父から長男へと、代々、受け継がれてきた。しかし、令和の次の時代は、現行の皇室典範に従えば、天皇の位は父から長男ではなく、兄から弟へ、さらに次の時代には弟の長男へ移ることになる。こうした直系から傍系へと皇位が移るという事態は、近現代史上、日本人にとって初めてのことであり、決して小さな出来事とはいえない。

 現在も続く、秋篠宮家批判の異様な盛り上がりも、その原因のひとつは、長女、小室眞子さんの結婚騒動にあるだろう。

 しかし、長期的な視点で考えてみると、皇嗣となった秋篠宮さまとその家族が、これまで以上に国民から注目され、期待され始めたことが、秋篠宮家批判の遠因として挙げられるかもしれない。目立つからこそ叩かれる、という喜ばしくない事態が起こってしまったのだろうか。

「結婚につきましては、将来的にはしたいと思っておりますが、来年の春から、また再び大学生になりますし、現在は考えておりません。理想の男性像は、一緒にいて落ち着ける方がいいと思っております」

 2014年12月15日、成年を迎えるにあたっての記者会見で佳子さまは、記者たちから「ご自身のご結婚についてのお考えと、理想とする男性像についてお聞かせください」などと尋ねられ、このように答えた。

 また、2019年春、国際基督教大学(ICU)の卒業にあたり宮内記者会から、「結婚の時期や、理想の男性像についてどのようにお考えでしょうか」などと質問された佳子さまは、《結婚の時期については、遅すぎずできれば良いと考えております。理想の男性像については、以前もお答えしていますが、一緒にいて落ち着ける方が良いと考えております》などと文書で回答した。

 今年、30歳になる佳子さまの結婚は国民の大きな関心事である。24歳と23歳で結婚した秋篠宮ご夫妻もまた、娘の幸せな結婚を望んでいる。両親のときのように国民が心から祝い、喜ぶことができる佳子さまの結婚が、多くの人たちに期待されている。

<文/江森敬治>

えもり・けいじ 1956年生まれ。1980年、毎日新聞社に入社。社会部宮内庁担当記者、編集委員などを経て退社後、現在はジャーナリスト。著書に『秋篠宮』(小学館)、『美智子さまの気品』(主婦と生活社)など