1994年に放送が開始された人気ドラマ『古畑任三郎』シリーズは今年で30周年を迎え、それを記念して5月24日から再放送されているが、6月18日に放送された第3シーズン・第11話『最後の事件・後編』である異変が……。
ドラマに登場したアイドルグループ・SMAPの顔写真が“黒塗り”されていたのだ。当然、物議を醸すことになったのだが、 問題視されたのは、ドラマ冒頭で田村正和さん(享年77)演じる刑事・古畑任三郎が一人語りをするシーン。古畑の背景には、歴代の犯人役を演じた俳優陣の写真がタイル状に並んでいたのだが、画面に向かって右側、最上部に並んだ5枚のパネル写真が黒く塗りつぶされていた。‘99年6月22日にドラマが放送された当時は、この部分に、同年1月3日放送の『古畑任三郎 VS SMAP』で犯人役を演じたSMAPのメンバー全員の写真が並んでいた。なお、今回の一挙放送では、SMAPの出演回は再放送されていない。
「放送できない」裏事情
なぜ、こんな事態になったのか。キー局でドラマ制作を務めるプロデューサーによると、
「グループの場合は権利関係が複雑で、あるいはSMAPを登場させた場合、解散当時に“裏切り者”と罵られた木村拓哉さんが再びバッシングされる可能性があるので、テレビ局が配慮した……と報じているメディアがありましたが、実際の理由はそんなことではなく、もっと単純です。ドラマを再放送するときは出演者全員に許可を取る必要があります。拒否する人が1人でもいたら再放送できません。ちょい役なら出演シーンをカットすればいいのですが、主要なキャストとなればそれは難しいですからね。
役者にとって再放送は本来うれしいものですから、そんなケースはめったにありませんが、‘70年に放送されたTBS系の『冬の旅』というドラマがありました。とてもいいドラマで、TBSは何度も再放送を試みましたが、実現していません。どんな理由からか定かではありませんが、出演していた田村正和さんがOKしなかったからです。また、売れる前に出ていたドラマが黒歴史になるような場合もあります。有名な話で言うと、超人気女優が若いころに出演したドラマで裸のシーンがあったのですが、封印したいのでしょうね、DVD化もされませんでしたし、今後も再放送は望めません。『古畑任三郎』もSMAP側がOKしなかったから、ということなのでしょう。SMAPのうち誰か1人が拒否したら、再放送はできない。逆に5人全員がOKしていたとしても、当時SMAPはジャニーズ事務所を通して仕事を受けているはずですから、解散したとしてもグループに関するさまざまな権利は事務所が持っているため、事務所が許可しなければ映像も使えないんです」
再結成の可能性は「かなり低い」
ジャニーズ事務所が持っていた音楽原盤等の版権は、新会社『STARTO ENTERTAINMENT』に段階的に移管される予定だが、映像に関しては詳細な扱いが明らかになっていない。しかし、1度使用NGになったものがその後OKになることはないという。
「特許のような有効期限や時効みたいなものはありません。『冬の旅』の田村さんの例で言うなら、亡くなって3年経ちますが、本人がOKしないまま亡くなっているので、誰かが代わってOKすることはできず、今後も再放送はできません。SMAPも同じです。当時、許可しなかった事務所自体が今はないため、新しい事務所が代わりに許可することはできない。結局、どこにお伺いを立てたらいいかわからず、テレビ局としても面倒くさいことはしたくないんです」(前出・プロデューサー)
5人での出演作が“永久封印”の状態になっていることに加えて、ファンが切望するSMAPの再結成についても、可能性はかなり低いという。
「そもそも生前、メリー喜多川さんは、SMAPの分裂騒動に関して、かなり複雑な思いを抱えていました。後を継いだ人たちはその意思を尊重しているでしょうし、木村拓哉さんもメリーさんに恩義がある1人。もはやSMAPというグループ自体を“封印”したいのだと思います。ただ、グループの再結成は難しくても、5人にその気があれば結集して新しい名前の、たとえば『シンSMAP』といったような名前のグループを作ることはできる。それでも一定のファンは喜ぶでしょう」(老舗芸能プロ幹部)
しかしそれも、当時の関係者が全員引退し、芸能界に力が及ばなくなったときでなければ難しいだろうという。SMAP再結成のハードルは、かなり高い――。