世間を震撼させた衝撃的な事件から、1年が過ぎた。‘23年5月、澤瀉屋の看板役者だった四代目市川猿之助が、自宅で父親である市川段四郎さんと母親の3人で一家心中を決行。ところが、猿之助だけが一命を取り留め、結果、両親の自殺幇助の罪で起訴された。同年11月、懲役3年・執行猶予5年の有罪判決が確定し、現在は事件を起こした自宅に戻って隠遁生活を送っているという。
6月中旬、事件により公開が延期されていた劇場版『緊急取調室 THE FINAL』が、猿之助の代わりに石丸幹二を新キャストに迎え、改めて撮影が行われることになると報じられたが、現状、猿之助自身の仕事復帰に関しては何も聞こえてこないし、本人も沈黙を貫いている。
「1日でも早く戻ってきてもらいたい」
目立った動きといえば、猿之助のいとこで二代目市川猿翁さんの息子である市川中車(香川照之)が、今年2月に上演されたスーパー歌舞伎で、自身の実子である市川團子が猿之助から指導を受けたことを明かしていたことくらいだ。
歌舞伎関係者に話を聞くと、
「世間は犯罪者が舞台に立つことを許さないと思いますが、私たちは違います。猿之助さんの罪は殺人ではなく自殺幇助で、すでに判決が下っており罪を償うことが決まっている。以前は俳優が不祥事を起こしたときに“出演作品にも責任を取らせる”みたいな風潮がありましたが、最近は“作品に罪はない”と言われるようになりました。歌舞伎はより顕著で、世間様の声も、猿之助さんのプライベートも関係ないんです。歌舞伎界の人たちとファンは、1日でも早く彼に戻ってきてもらいたいと、みんな願っています」
歌舞伎界の現状と猿之助の意向
松竹関係者も同じだと言う。
「現状については白紙ですが、戻れるなら早く戻ってほしいです。というのも、坂東玉三郎さんが引退し、尾上菊五郎さんと松本白鸚という大看板はご高齢で今ひとつ体調がよくない。中車さんも頑張ってくれていますし、若手の活躍も目立ちますが、猿之助さんほどの人気を得るにはまだまだ時間がかかるでしょう。市川團十郎白猿さんだけでは、新しくお客さんの動員数を増やすことが見込めず、歌舞伎ファンを獲得するのも難しい状況です。猿之助さんに早く戻ってきてもらいたいと願っていますが、世間の反応を考えると……会社サイドとしては、何も言えないですね」
歌舞伎関係者の思いは、猿之助が事件を起こした直後と一貫して変わっていない。果たして、その思いは本人に届いているのだろうか。
「中車さんとは連絡をとっているようですから、周りが復帰を願っていることは伝わっていると思います。ただ、本人にその気がないのでしょう。そもそも事件を起こしたきっかけは、週刊誌でスキャンダルが発覚しそうになり、それを気に病んだこと。あれくらいのスキャンダルは正直、歌舞伎役者にとって、それほどダメージになるとは思えません。謝罪してしまえば、あとは時間が経つにつれて、みんな忘れてしまっていたでしょう。ドラマや映画は別ですが、歌舞伎出演に異を唱えるファンはいません。それでも世間の声を気にするなら、半年ほど活動を休止すればよかったのだと思います。現に、スキャンダルが報じられた中車さんは、ドラマはダメでもすぐに歌舞伎に出ていますからね。猿之助さんはとても“気にしい”で、繊細な人。それが演技にも活かされているんですけどね」(スポーツ紙・歌舞伎担当記者)
今でも世間の目を気にしていて、少なくとも執行猶予が明けるまで復帰はないだろうという。ただ、本人は現在、裏方に回る意思が強いという話も。役者として復帰するにしても、まだまだ時間がかかりそうだ――。