肩を出して腕組みポーズをとる佐久間清来容疑者(本人のフェイスブックより)

「毎年夏が近づくと、保育園のスタッフが“今年もプールをやりますのでよろしくお願いします”とご近所を回るんです。子どもの遊ぶ声が“騒音扱い”されかねないご時世ですから、周辺とトラブルにならないように気配りしているんでしょう。きちんと運営されていると思っていたので、園児に暴行する先生がいたとは驚きました」(同保育園近くに住む男性)

 東京都世田谷区の私立認可保育園に勤務する保育士・佐久間清来(せいら)容疑者(26)が男子園児への暴行容疑で警視庁世田谷署に逮捕されたのは6月25日のこと。園内で5月7日と同9日、担任として受け持つ男児の頭髪を引っ張るなどの暴行を加えた疑い。

「いずれも同じ男児に対し、髪の毛を強く引っ張ったり、乱暴に手を引いて無理やり立たせるなどした。下半身を踏みつけるなど蹴りも入れていた。“髪の毛を引っ張ったり、引き倒したりしたのは私がしたことです。言うことを聞かなかったのでイライラしていました”などと容疑を認めている。警察は、暴行を繰り返していた可能性も視野に入れ、捜査を進める方針だ」(全国紙社会部記者)

 母親が手のアザに気付き、男児に聞くと「髪の毛を引っ張られた」などと話したという。母親は園と世田谷区に通報したが、すぐに暴行が発覚したわけではなかった。

事態を重くみる世田谷区役所

「区は5月13日に保護者から“5月9日に担任保育士による身体的虐待があった”と通報を受け、その日のうちに園に出向いて事実確認と報告を求めました。翌日、園長から“当日の防犯カメラ映像をチェックし、職員へのヒアリングをしたが虐待行為は確認できなかった”と報告があり、保護者にその旨を伝えました」(世田谷区の子ども・若者部保育課)

 ここで保護者が引き下がっていたら、暴行は闇に葬られていたかもしれない。

「再び保護者から同27日に連絡があり、“園と運営法人に再調査をお願いしているが誠意ある対応がない。区からも誠実な対応をするよう働きかけてほしい”と要望がありました。そこで、法人に入ってもらって、前後の日付を含めて再調査し、法人としてきちんと確認するよう求めました。あらためて法人が全職員にヒアリングしたところ、“5月7日に虐待があったのではないか”との証言が出たと報告があったんです」(前出・同課)

 区は6月3日、再び同園に入り、法人同席のもとで防犯カメラ映像を確認した。そこには信じがたい行為が記録されていた。

助けを求めた園児にあまりに乱暴すぎる対応

 5月7日の昼寝前のこと。リュックサックをロッカーに片付けるとき、男児はなかなか自分で戻すことができず、約10分後に担任の佐久間容疑者に助けを求めた。佐久間容疑者は男児のお漏らしに気付き、乱暴に手を引っ張って立ち上がらせたり、うしろ髪をつかんでのけぞるほどの強さで引っ張った。男児がその場を離れようとすると、後方から首元をつかんで強く引き寄せ、押し付けるように座らせたかと思うと、すぐに脇に抱えて勢いよく立ち上がらせたという。

 佐久間容疑者の動きを追うかぎり、漏らした箇所が床などにつかないよう手を出したと考えられるが、あまりに乱暴すぎる。

 同園を訪ねると、入り口前で門番のように職員2人が立っていた。園長が取材対応する予定はないか尋ねると、「ありません。すべて本社に聞いてください」。佐久間容疑者がどのような同僚だったか尋ねても、「それも本社に聞いてください」の一点張りだった。

「普通の先生だったみたいですよ」

タイトなワンピースを着る佐久間清来容疑者(本人のフェイスブックより、画像は編集部で一部加工)

 運営法人に尋ねると、まず以下のような社のコメントを読み上げた。

「当社に勤務していた元従業員の佐久間が当社在籍中に園児に対する暴行をした疑いで逮捕されたと報道に接しました。現在、詳細を把握中であります。被害に遭われたお子さま、そしてご家族のみなさまに深くお詫び申し上げるとともに、当社としてもこの事態を厳正に受け止め、今後とも警察への捜査に全面的に協力いたします。本件の詳細につきましては、警察の捜査中であるため申し上げられないことをお詫び申し上げます。当社としても、事実関係を詳細に調査の上で、再発防止に全力でつとめていく所存です。また行政とも連携しつつ、保護者の方とも誠実に話し合ってまいります」

 佐久間容疑者に対する同僚の評判や勤務評価を尋ねると「申し訳ないが話せません」(社長室の担当者)。辞めた期日については「具体的な日付は言えません。逮捕前です」(同担当者)とだけ答え、自主退職か解雇かは答えられないとした。匿名で暴言を吐く電話がかかってくるなど職員も怖い思いをしているといい、混乱しているという。

 どのような保育士か、同園に子どもを通わせる保護者に尋ねると、

「普通の先生だったみたいですよ。手をあげたり乱暴な言葉遣いが問題になったことはないというから、暴行の背景をもっと突き詰めたほうがいいと思います」と話す。

 ほかにも複数の保護者が取材に応じたが、「評判は聞いたことがないんです」(園児の母親)などと情報不足をうかがわせた。

 容疑者宅近くの50代男性は「美人だけど、子ども相手におっかないことをするね。髪の毛を引っ張るなんてプロレスラーじゃないんだから」と呆れるばかり。

 場外乱闘のプロレスラーが対戦相手の髪の毛を引っ張り、強引にリングに戻すシーンを連想したという。

 そもそも、お漏らしをしても仕方がない年ごろ。保育士がわからないはずがない。事態を重くみた区は特別指導検査を実施し、内容を精査して法人への指導などを行うという。

「被害園児は怖い思いをしただろうし、あってはならないこと」(前出・区の保育課)

 園児にとって楽しいはずの場所で、何をやっているのか。