「カラダにピース。」のキャッチフレーズで親しまれる『カルピス』が、発売から105周年を迎える。販売が始まったのは1919年7月7日の七夕。ある偶然がきっかけで、日本初の乳酸菌飲料が誕生したんだそう。
105周年のカルピス、誕生秘話
「当初はカルピスの生みの親である三島海雲が、モンゴルで酸乳に感銘を受け、脱脂乳を乳酸発酵させた『醍醐素』という商品を作っていました。ある日、工場責任者のふとした思いつきで醍醐素に砂糖を入れて1〜2日放置したものを飲んでみたところ、空気中の酵母菌により自然発酵が進み、味わい豊かな飲み物になっていたそうなんです」
こう教えてくれたのは、アサヒ飲料マーケティング三部の吉川徹さん。まさにラッキーが重なって誕生した乳酸菌飲料は、カルシウムの“カル”とサンスクリット語であるサルピスの“ピス”を組み合わせ“カルピス”と名づけられた。
甘酸っぱいその味から1922年に“初恋の味”というキャッチフレーズが新聞広告で使われ、当時としては刺激的な言葉とともにカルピスが世に広まり浸透。戦後はカラーテレビの普及で、1960年代ごろからタレントを起用したCMが増え、カルピスもその波に乗る。現在の長澤まさみなど、カルピスのCMといえば旬の女優を起用するイメージが強いが、第1号は、あの国民的選手だった。
「明朗で健康的なイメージから長嶋茂雄さんを起用させていただき、カルピスは、より認知され世間に広まっていったそうです。その後、1980年代くらいからファミリーに親しんでほしいという思いもあり、吉永小百合さんやRIKACOさんなど、女性を起用したCMが増えていきました」(吉川さん、以下同)
順風満帆に売り上げを伸ばしてきたかと思いきや、不振に苦しんだ時期もあった。
幻の“ずんだカルピス”!?
「1960〜1970年代くらいから旅行する人やコンビニなども増え、カルピスは水で薄めて飲む希釈タイプしかなかったので、外で手軽に飲める商品がなく、売り上げが伸び悩みました。
ストレートに飲める商品の開発を始めたのですが、時間がたつと水とカルピスが分離してしまって安定供給が難しかったんです。そこで開発したのが1973年に発売された炭酸飲料『カルピスソーダ』。炭酸だと分離せずに安定したんです。
その後、研究を重ねて1991年に『カルピスウォーター』が誕生。CMには後藤久美子さんや内田有紀さんなど今につながる旬の女優さんにご登場いただきました。発売1年目で2000万ケース以上を販売し大ヒットになりました」
マンゴーやホワイトチョコ味など、さまざまなフレーバーが誕生する中、過去にはこんなボツ商品も。
「私が研究所にいたとき、ご当地カルピスみたいなものを作ろうと思っていたんです。ずんだ餅のテイストを入れた“ずんだカルピス”を開発しようとしましたが、どうやってもおいしくならない(笑)。幻の商品となりました」
ぜひ味わってみたかったが残念……。そんな吉川さんに、105年間愛され続けるカルピスの、新たな楽しみ方を教えてもらった。
「カルピスとビールを1対6で割って飲むとマイルドな味になっておいしいんです。実際に“ダブルカルチャード”というカクテルで飲まれています。ビールは苦手という方でも飲みやすいと思いますし、夏にもぴったりなのでお試しください」