最近、興味深いアンケートを見かけた。写真誌系のサイトが発表した「『演技がうまい』と思う旧ジャニタレントは?」というものだ。1位は木村拓哉で以下、亀梨和也、目黒蓮、山田涼介と続き、5位タイが堂本光一と櫻井翔となっている。
で、ふと思ったのが、もし彼が退所していなければ、この中に割って入ったのではということ。2021年以降、芸能界と距離を置いている元TOKIOの長瀬智也のことだ。
キャラを物語る“破局エピソード”
『池袋ウエストゲートパーク』や『俺の家の話』(共にTBS系)といった宮藤官九郎作品が有名だが、個人的には『白線流し』(フジテレビ系)や『泣くな、はらちゃん』(日本テレビ系)が印象に残る。
特に『泣くな、はらちゃん』は、ヒロインが描く漫画の主人公が実体化して、ヒロインと恋をするという異色のファンタジー。長瀬のキャラや演技センスなくして成立し得ない作品だった。ちなみに、私生活では浜崎あゆみと交際。6年で終わったが、破局の際のエピソードが興味深い。
長瀬は当時、浜崎がビルごと所有する10億円のマンションの1室で生活。浜崎から出ていくよう言われても、なかなか出ていかないため、しびれを切らした浜崎のほうが出ていったという。
一見、長瀬が別れを拒んだようにも映るが、そうではなかった。単に無頓着というか、よくも悪くも鈍感なところがこの居座り(?)につながったらしい。こういうタイプの男は意外と憎めない。それが芝居にもにじみ出るため、カッコよさと情けなさが共存する役が抜群にハマるわけだ。
「辞めジャニ」でも異彩を放つ存在
そして、そんな長瀬らしさは退所以降、ますますあらわに発揮されるようになった。何より夢中なのがバイクレースで、6月9日にはその宣伝のため、久々の取材対応もした。
「速く走るために汗ばんで、髪も長くてひげ面で。こんな男たちを知れることもレースの一つの醍醐味だと思いますよ」
と、女性層へのアピールに励む一方で、役者業については「僕は同じことを繰り返すつもりはなくて」と、やや消極的だ。また、愛用していたアンプをリサイクル店で働く友人に譲り、それが次々と売れるという事態も発生。音楽へのやる気が失われつつあるのではと、再集結を願うTOKIOファンを不安にさせた。
例によって、鈍感かつ無頓着な長瀬。ちなみに昨年、KODE TALKERSというバンドでライブをやったり、CDを出したりしたが、商業目的というより、仲間うちで楽しんでいる感じだ。
無欲というか、芸能活動で得たいものは今、特にないのだろう。そのスタンスは、いわゆる「辞めジャニ」の中でも異彩を放っている。
12歳で入所して、42歳で退所するまでの30年間、十分にやり切ったということなのか、早くも第二の人生へ、いや、すでにセミリタイアしたかのような展開だ。それでいて、バイクレースに夢中というあたり、老成どころか、ガキっぽさ全開でもある。こういう生き方は男性から見て、結構理想的。実際、KODE TALKERSとしてのライブでは、9割近くが男性客だったという。
手越祐也のように日々必死な「辞めジャニ」と比べたら、いたって悠々自適。しかも、こうした生き方をする男がまた芝居をやったらどんな感じになるのか、興味を覚える人もいるはずだ。もしかしたら「演技がうまい」1位の木村拓哉だって、うらやましく感じていたりして─。
ほうせん・かおる アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。