「イケメンすぎる!」と一躍有名になった、ニシゴリラの「シャバーニ」。
2007年に、繁殖のためオーストラリアの動物園から来日。名古屋市東山動植物園でのんびりと平和な日々を送っていた。それから8年後の2015年、突如SNSで「イケメンのゴリラがいる!」と話題に。
サッカー選手の大久保嘉人選手が「オレよりイケメン」などと発信したことから一気に人気に火がついた。
平成の人気者、イケメンゴリラは屈強な体に繊細な心の持ち主!?
「シャバーニは現在27歳。人間でいうと働き盛りのお父さん、40代くらいの年齢でしょうか。元気にしていますよ」と、飼育員の山本光陽さん。
シャバーニの魅力はなんといってもその目元。一般的なニシゴリラに比べ、瞳がつぶらでぱっちりしているのが印象的だ。
凛々しい顔立ちと優しい目元、たくましい体格の絶妙なバランスもたまらない。オフィシャル写真集『シャバーニ!』が発売された翌年の2016年には、入園者数が全国の動物園で2位となる250万人を突破。ゴリラ舎周辺はシャバーニをひと目見ようとする客であふれ返った。
「もともとニシゴリラは繊細な性格。シャバーニも人の視線は気になっていたようです。コロナ禍でお客さんが少なくなった時期には、閉園日のようにリラックスする姿が見られました。彼らにとっても休みは大事だと改めて思わされましたね」(山本さん、以下同)
シャバーニにはネネとアイという2頭のメスとの間に、息子のキヨマサ、娘のアニーがおり、5頭の群れで暮らしている。威厳のある父親というより、どちらかというと優しいタイプ。子どもたちと遊んでいる様子がよく見られるという。
「日の出のころに起床し、朝、昼、夕方の1日3回、一家で合計100キロ以上のエサを食べます。シャバーニが特に好きなのはトマトとレタスとナス。そのほか、キャベツ、白菜、セロリ、ピーマンなどの野菜類や、木の枝、ペレットなども食べます。いつも同じ食事ではゴリラにとってストレスになるので、毎日少しずつ変化をつけています」
現在、日本の動物園でゴリラに会えるのは6園のみ。なかでも同園のように群れで飼育している園は、恩賜上野動物園、京都市動物園と合わせて3園しかない。
「ゴリラの繁殖は非常に難しく、群れでの飼育が前提。3園とも繁殖には成功したものの、全体では年々、個体数が減少しています。今後、日本の動物園でゴリラが見られなくなる日が来るかもしれません」
絶滅危惧種に指定されているゴリラは、「ワシントン条約」で海外からの輸入が原則禁じられている。繁殖のための譲渡は認められているものの、実現はなかなか難しい。なので、日本国内で2頭の子どもをつくることができたシャバーニは希望の存在だ。
「シャバーニがきっかけで、ニシゴリラの生態や環境問題に興味を持ってくださるお客様が増え、とてもうれしく思います。ぜひシャバーニの群れに会いに来てください」
取材・文/植木淳子