6月は12本のホームランを放った大谷翔平。30歳の誕生日を迎え、7月も勢いが止まらない。
「今年の彼はホームランはもちろん、盗塁も積極的に試みています。日本時間7月8日に20盗塁に到達しましたが、これは自己最速ペース。日本人メジャーリーガーでは初となるトリプルスリーや、メジャーリーグ史上6人目の40本塁打&40盗塁の“40―40”、史上初となる50本塁打&30盗塁の“50―30”も狙える位置にいます」(スポーツ紙記者、以下同)
2年連続MVPへの展望
打って走って大活躍の大谷。今年もMVPの最有力候補である一方、現地アメリカでは反発する声もあがっているようだ。
「大谷選手は昨年9月に受けた右肘の手術の影響で今年は二刀流ではなく、打者のみでの出場。つまり、守備につかないDHのみです。現地の一部ファンや記者の中には“野球は守備についてこそ”“同程度の成績なら守備についている選手”と考える人もいるようで、大谷選手の成績は評価しつつもMVPには値しない、という意見も出ています」
歴史的にみても、DH専門というのは厳しい目が向けられている。
「メジャーリーグにおいて、アメリカンリーグで1973年に、ナショナルリーグで2022年にDH制が導入されましたが、DH専門の選手がこれまでMVPに選出されたことはありません。DHでMVPに輝くためには、ほかの選手より圧倒的な成績を残す必要があるということです」
アメリカで大谷は、どう評価されている意見が多いのか。在米ジャーナリストの志村朋哉さんに話を聞いた。
「ヤンキースのアーロン・ジャッジ選手など、大谷選手より打撃面で結果を残している選手はいますが、ヤンキースはアメリカンリーグ。ナショナルリーグのドジャースとはリーグが違います。大谷選手はここまでナショナルリーグでトップの成績を残しており、MVPはリーグごとに選出されるため、このままいけば大谷選手がMVPだと評価する人が多いです」
客観的な数字で見ても、今年の大谷は突出しているという。
「さまざまな指標が生まれている現在のメジャーリーグでは、チームへの貢献度が数値化されています。大谷選手は貢献度合いの指標でリーグトップです。これは守備の指標も含まれるので、DH専門の選手には不利ではありますが、大谷選手は打撃だけで1位になるほどです。たしかに、一部からは、守備についていて、首位を独走しているフィラデルフィア・フィリーズのブライス・ハーパー選手の方がふさわしいと主張する人もいますが、こうした数値を理解している人は、今の時点でナショナルリーグは大谷選手で決まりだと考えていますね」(志村さん)
大谷がメジャーで確固たる地位を築いた要因である二刀流。それを封印していることも、大谷に対しての評価が割れる要因になっているとスポーツライターの小林信也さんは分析する。
「DHだから評価されていないということはないです。大谷選手は二刀流で人気を得た選手。ファンは野球少年のように打って走って投げて、という大谷選手の姿を見たいのであって、守備をしていない現在は、物足りなさを感じるのだと思います。また、ソロホームランが多かったり、チャンスであまり打てていないことが少し印象を悪くしているのかもしれません」
アメリカでも“大谷ハラスメント”
本来の大谷の姿ではないにしても、環境の変化がありながらの活躍には目を見張るものがあるという。
「結婚もあり、元通訳のスキャンダルもあり、リハビリ中で、リーグも変わるという状況で想像をはるかに超える結果を残しています。ドジャースの主力選手にもケガ人が出ている中、大谷選手は大きなケガもここまでしていないので、その部分も含めて運もありますが、努力もしているのだと思います」(小林さん)
“DH論争”もさることながら、注目されるがゆえに起こっている争いも……。
「日本では連日、大谷選手の活躍が報じられていますが、アメリカでも取り上げられることが多いんです。そのため、一部のファンからは“オオタニの話は聞き飽きた”という声が上がっているそう。それに対して、アメリカのスポーツ専門メディア『The Athletic』の記者であるケン・ローゼンタール氏は“われわれがいままで見てきた選手の中で一番の選手。取り上げるべき存在”と反論。アメリカでも報道を巡って論争が起こっているようですね」(前出・スポーツ紙記者)
“大谷ハラスメント”という言葉も日本ではささやかれているが、野球だけでなくスポーツの歴史を塗り替え続けていく人物であることは間違いない。
「スポーツ史上最高額の10年7億ドル(契約合意時のレートで約1015億円)で契約したり、愛犬がいきなり登場したり、結婚を発表したり、水原元通訳のスキャンダルがあったりとニュースを独占するような出来事が定期的に起こることも理由でしょう。過去3年間、メジャーリーグは大谷選手を中心に回っていたと言っても過言ではありません。誰も実現できなかったことを達成しながら、連日活躍していれば、ニュースになるのは当然です」(志村さん)
大谷本人とは関係ないところで繰り広げられるファンや記者の“場外乱闘”。それほど注目される存在という証ではあるが、誰も文句のつけようのない結果で外野を黙らせてほしい。