佐々木希

 佐々木希(36)の“芸能界サバイブ能力”には感嘆させられる。

 多くの芸能人たちがこぞってYouTube参入していた時期からかなり遅れたこのタイミングで、チャンネルを開設したのだ。

 7月8日に1本目の動画を公開してから10日経った7月17日現在、初投稿動画は343万再生とバズッている。チャンネル登録者数も31.4万人となっており、上々のスタートダッシュを切っているのである。

渡部建の多目的トイレ不倫から4年

 佐々木希を語るうえで、やはり避けてとおれないのは夫であるアンジャッシュ・渡部建(51)の存在だろう。2017年4月に結婚し、2人の子どもを授かっているが、渡部の不倫スキャンダルはとてつもないインパクトだった。

 かつては芸人のなかでもかなりクリーンなイメージで、数々の有名番組のMCも務めていた渡部だったが、2020年6月に複数の女性との不倫スキャンダルが勃発。特に「多目的トイレ不倫」のイメージは最悪で、一気に天国から地獄へ堕ちた。

 現在の主な主戦場はネットの配信番組などで、地上波テレビにもちょこちょこ出演するようになってきているが、完全復活にはほど遠い。

 実際、佐々木のYouTubeチャンネル開設を報じたネットニュースのコメント欄にも、

《佐々木希さんって渡部さんの事があってかあまり主張しないで頑張ってるところが好印象だったからどんなチャンネルになるかは気になってる》

《旦那があれじゃ……ね。表舞台にはもう立てないからね。大変だけど頑張って》

《YouTubeしてまで稼がないとダメになっちゃったんだね》

 など、夫である渡部に絡めたコメントが非常に多かった。

不貞夫を許し“佐々木希株”が急上昇

 佐々木からすれば、期待していた売れっ子夫の収入が激減しただけでなく、“渡部の妻”でい続けることで多大な恥辱を受け続けるはめに……。

 離婚せず不貞夫を支えるという決断をしたわけだが、「佐々木希」のタレントとしての商品価値を維持するためには、離婚したほうがよかったのではないかという考え方もあっただろう。

 だが、はたしてそうだろうか?

 佐々木はその絶世のビジュアルのよさで彗星の如く芸能界に現れたため、いまでもモデル業の需要はあるだろう。しかしながら、役者としての評価は高いとは言えず、出演したドラマや映画で大根演技だと酷評されたことも一度や二度ではない。

 だから、もし離婚して“渡部の妻”ではなくなっていたとしたら、彼女の商品価値は頭打ちになり、ゆるやかに右肩下がりしていた可能性も充分あるだろう。

 逆に、大スキャンダルを起こした渡部を許し、支えていくという姿勢を見せたことで、“佐々木希株”が急上昇。“バカな不貞夫を健気に支える妻”というパブリックイメージを獲得したといえる。

毒にも薬にもならない無難な動画……

 そんな佐々木希が、なぜ芸能人YouTube進出ブームからかなり遅れたこのタイミングで、チャンネル開設したのか。

 それは、ネット上での渡部の好感度が回復しつつあることが無関係ではないだろう

 渡部は地上波テレビに出演するとまだまだバッシングが多い様子だが、ネットの配信番組への出演はだいぶ好意的に受け止められている。こういった現在のタイミングであれば妻の佐々木がYouTubeデビューしても、渡部アンチからの攻撃は少ないと判断したのかもしれない。

 そう考えると、なかなか秀逸なタイミングに思える。

 ちなみに初投稿となった1本目の動画は、忌憚なく言って毒にも薬にもならない無難な内容だった。

 子どもを寝かしつけた後の自宅で撮影しており、ラフなTシャツ姿でリラックスした佐々木希が、ワインを飲みながら一人語りする約13分半の動画。

 おのずと自宅の一部が公開されており、子どもたちが遊んでいたオモチャが散乱しているなど、プライベートが垣間見えたのでファンにとっては見応えがあったのかもしれないが、話している内容はおそろしく薄い。

素を見せているようで見せていない?

 動画のなかで、YouTubeを始めようと思ったきっかけのひとつとして、友人から「のんちゃんの素がおもしろいからみんなに見せたほうがいいんじゃない?」と言われたことがあったと語っていた。

 しかし筆者の目からは、この動画で彼女が本当の“素”を晒しているようにはとても見えなかった。散らかった部屋も、ラフなTシャツ姿も、初の動画撮影に戸惑う様子も、“素を晒している風”に演出し尽くされているように感じたのだ。

 一言でまとめると、“あざとい動画”という印象。

 よくも悪くも隙がなく、完璧にセルフプロデュースされている。

 “見せること”に慣れているし、“見られること”が大好きなのだろう。

 だが、佐々木希のYouTubeデビュー1本目の動画としては、これが大正解だったに違いない。過不足のない、ファンが望んでいた最大公約数の内容になっていたと思うからである。

 もしこの動画で新規ファンを獲得しようと思っているのだとしたら計算間違いしている気がするが、いまいる既存ファンに喜んでもらい、さらに好きになってもらうためのコンテンツとしては満点だ。

 ――芸能人のYouTube進出ブームからかなり遅れたこのタイミングに、この内容の動画でデビューするというところに、佐々木希の“芸能界サバイブ能力”の高さが垣間見えた気がする。

堺屋大地●コラムニスト、ライター、カウンセラー。 現在は『文春オンライン』、『CREA WEB』(文藝春秋)、『smartFLASH』(光文社)、『週刊女性PRIME』(主婦と生活社)、『日刊SPA!』などにコラムを寄稿。これまで『女子SPA!』(扶桑社)、『スゴ得』(docomo)、『IN LIFE』(楽天)などで恋愛コラムを連載。LINE公式サービス『トークCARE』では、恋愛カウンセラーとして年間1000件以上の相談を受けている(2018年6月度/カウンセラー1位)。公式Twitter:https://twitter.com/sakaiyadaichi