※画像はイメージです

 梅雨がやっと明けた……と思っても「カビ菌」に油断してはならない。お風呂場、キッチンといった水回りだけでなく、エアコンや、マットレス、湿気を吸った布団、カーペットまで、菌により体調を崩す人は多い。

「カビアレルギーなどで体調を崩す人だけでなく、普通の人でも、吸い込んだカビや、体内にいるカビが増殖している可能性があります」とは心療内科医で、ひめのともみクリニック院長の姫野先生。

 この体内のカビが悪さをすると、アレルギー症状だけでなく慢性的疲労や頭痛、うつ症状、腹痛が続くといったさまざまな症状の引き金となるという。

 多岐にわたる悪影響で、季節病とも更年期とも間違えやすい

 身体にカビが生えるとはいったいどういうことなのか。

「人の身体の中にそもそもいるカビ(カンジダ菌)が環境要因や体調、食事内容により増殖するのです。カンジダ菌は常在菌のひとつで、健康な人の腸にも存在しますが、善玉菌とのバランスを崩し増殖を始めると、あらゆる健康被害を引き起こします」(姫野先生、以下同)

 カンジタ菌は空中にもいるし、身体の中では口、皮膚、食道や腸などの消化管、膣内などに常に生息している。これが腸で増殖した場合、菌糸を張って根付いて腸壁が荒れ、そこからタンパク質や毒素などが漏れ出てしまう「リーキーガット(腸漏出症候群)」を引き起こす。消化吸収活動だけでなく、神経細胞が多く存在し“第二の脳”ともいわれる腸に大きなダメージを与えるのだ。

カンジダ(カビ)感染が疑われる食道のカメラ画像、白くプチプチしたものが目視できる

「体内は湿気もあるし温かいし、ましてや腸にはカビの好物のエサもある。菌にとって居心地のよい環境なのです。外部のカビを吸い込むなどしてカビが同調して増殖すれば、強い毒素が発生し、免疫力の低下を招くだけでなく、喘息や鼻炎、皮膚疾患など、その人の弱いところが、まず悪化してくることが考えられます」

 実際に、姫野先生のクリニックには“更年期の治療をしても症状が改善しない”また“薬を飲んでいるのに頭痛が改善しない””気分が落ち込む”といった症状の患者さんの腸を調べると「腸カビ」が確認されたといった事例が非常に多いという。

 下記は、腸カビによるリーキーガット症候群の可能性のある一例だ。

□下痢、腹痛、消化不良、腹部膨満感がある
□頭痛、めまい、耳鳴りがある
□うつ病状、情緒不安定がある
□倦怠感や集中力の低下を感じる
□鼻水や鼻づまりが起きやすい
□筋肉痛や関節痛、しびれがある
□湿疹やにきび、アトピー性皮膚炎がある
□口内炎、むくみがとれない
□不整脈がある

 腸カビは、このように全身の不調に関わる。しかしこうした症状が、カビに起因しているとはわからず、診察を受けてもなかなか病状が改善しないといった人も多い。

健康のための「腸活」も……

 外的環境に加え、カンジダ菌が増えやすい人の特徴として、甘いもの、パン、お酒が好きな人があげられる。

全身の不調を招く腸カビ(カンジダ菌)

「カンジダは糖質が大好きで糖質をエサに増殖します。さらに、酵母の仲間でもあるため、パンを多く食べるとカンジダ菌の勢いが増すことが。そして、お酒は肝臓にダメージを与えてしまうため、カンジダ菌が出す毒素が解毒されにくくなって症状を悪化させてしまうのです」

 この菌が体内で増殖しているかを自分で気づくのは非常に難しい。しかし、薬を飲むなど対処を施しても症状の改善が見られない場合、まずはエサとなる食品を徹底的に排除してみることをおすすめするという。

「パン、パスタ、うどんといった小麦食品。そして甘いもの、お酒をまずは1か月やめてみて、体調の変化を実感してみましょう」

 また、腸にいいとされる発酵食品なども要注意。

「腸活ブームで、善玉菌を増やす納豆やヨーグルトの乳酸菌などを毎朝食べているといった人も多いのでは。こうした発酵食品や、食物繊維の多いきのこ類なども菌類ですから、カンジタ菌と同調して、さらに増殖させる恐れもあるのです」

 腸が荒れている状態で、いくらいいものを食べても消化吸収が阻害されているため逆に身体の負担になる。まずは、カンジダ菌を減らさなければならないのだ。

カンジタ菌をやっつける食事法

 カンジタ菌を減らす食事法を取り入れつつ、次にすべきは除菌の為の食事法だ。

「殺菌作用のあるものを積極的に食べましょう。MCTオイルやココナッツオイル、アマニ油、えごま油といったオメガ3系オイル。さらに、香辛料やスパイスなど抗菌・解毒作用のある食品による除菌が有効です」

 解毒作用のあるにんにく、パクチーといった香味野菜。抗菌作用のあるお酢や、レモン、梅干し。EPAが含まれる魚や、食物繊維の多い野菜などがおすすめという。

「カンジタ菌は口にも生息していますから、そこで増やさないように、寝る前は当然ですが、朝も起きたらすぐに歯磨きをする。また歯のクリーニングを定期的に行うなどして、入り口から防ぐ努力も行いましょう」

 口だけでなく、消化管の粘膜に入り込むことで起こる胃の炎症や食道炎などあらゆるところで悪さをするカンジダ菌。この時季、うっかりカビてしまった食品など、その部分を取ってしまえば食べられるとはゆめゆめ思わないこと!

「カビを食べても多少下痢になるぐらいで大丈夫でしょ、と思っている人もいるかもしれませんが、カビそのものを胃に入れてしまっては体内で増殖はまぬがれません。カンジダ菌は胃液ではやっつけられない、非常に生存力のあるやっかいなものなのです」

 カンジダ菌は、内視鏡を用いなくとも「尿中有機酸検査」といったものでその増加率が計れる。しかし、この検査を積極的に行っているクリニックは多いとは言えず、また保険適用外のため一般的とは言いにくい。

 カンジダ菌の除去は薬で行うこともできるが自費診療となることが多いので、各地域での診察状況はインターネットなどで調べることをおすすめすると姫野医師は語る。

「医療機関で検査を受けることもいいのですが、空中にもカビ菌が多いこの時季、まずはエアコンやお風呂場などのカビ対策。そして自分の体内でカビを増やさない食事法を心がけてみてはいかがでしょうか。それだけで、原因不明の体調不良や、メンタル不調も改善してくるかもしれません」

教えてくれたのは……姫野友美先生●ひめのともみクリニック院長。東京医科歯科大学卒業。医学博士・心療内科医。 九州大学医学部附属病院などの勤務医を経て、2005年ひめのともみクリニックを開業。 オーソモレキュラー栄養医学に基づいた栄養療法や点滴療法、バイオロジメディカル療法を組み合わせた独自のメディカルプログラムで個々人に合わせたオーダーメイドの治療を行っている。そのかたわら、テレビ番組や新聞・雑誌等で活躍。 『心療内科に行く前に食事を変えなさい』(青春出版社)、『美しくなりたければ食べなさい』(三笠書房)、『心療内科医が教える疲れとストレスからの回復ごはん』(大和書房)など著書多数。