毎年のように最高気温を更新する厳しい暑さ。過酷な環境は体力を奪うだけでなく、メンタルにもダメージを与え、その影響は腸にも!
暑さによるストレスが“腸”にダメージを与えている
「大量の汗をかくことで身体は脱水状態に。冷たい飲食物の摂取で内臓が冷え、暑さによるストレスや屋内と屋外の温度差で自律神経が乱れる。この3要素が腸にとって大きな打撃になります」
教えてくれたのは、内科医の石原新菜先生。汗で水分やミネラルが身体の外に出ていくと、水分量や血液量が減少し、腸の動きが鈍くなって便秘になったり、腸内環境の悪化を招いたりする。
「腸には毛細血管が張り巡らされているので、血流が悪いと腸が滞り、ぜん動運動も鈍くなります。適量の水は必要ですが、飲みすぎは逆効果。1日に排出される水分量は2〜2.5リットルで、これに対し、食事から約1リットルを摂取しています。
これを補うには、一度に大量に飲んでも吸収しきれず排出されてしまうので、汗をかくたびに小まめに水分をとりましょう」(石原先生、以下同)
のどの渇きを感じにくいシニアや、運動後、入浴後などは意識的に水分摂取を心がけよう。
白湯に○○が最強!冷えない食事のコツ
次に注意したいのが“冷え”。暑い日は、冷たいそうめんやビールが欲しくなるものの……。
「夏は内臓が一番冷える季節です。冬は自然と厚着をしたり、温かいものを食べたりしますが、暑いと薄着のままクーラーの効いた部屋で冷たいものを飲んだり食べたりしがち。内臓を冷やすと小腸がしっかり栄養を吸収できず、消化不良、胃もたれ、下痢といった症状が現れます」
腸を冷えから守るには、朝の“白湯(さゆ)”からスタート。体温が低い起床時に白湯で腸の働きを活性化する。
「50〜60℃くらいに温めたお湯を冷める前に飲みきります。胃腸の働きや血流を良くするすりおろししょうがやシナモンを“ちょい足し”するとさらに効果的です」
食事は身体を冷やす陰性の食べ物と、身体を温める陽性の食べ物をセットでとるのがおすすめで、きゅうりにみそ、スイカに自然塩をつけるだけでも温冷のバランスがとれる。
「そうめんには、陽性のしょうがや大根おろし、血行を促進する長ねぎやみょうがを薬味にして一緒に食べましょう。冷えを防いで消化吸収も助けます。ビールに枝豆、白ワインにチーズも好バランスです」
外側からのケアも追加するなら腹巻きが効果絶大! 石原先生は18年間、季節を問わず薄手の腹巻き着用で冷えずに快腸だそう。みぞおちをさわってひんやり感じる人は、胃腸が冷えているので外側からも温めよう。
ストレス厳禁!リラックスのすすめ
そして、生命を維持するために働き続けている自律神経も整えておきたい。自律神経には身体を活動モードにする交感神経と、休養・回復モードにする副交感神経があり、消化や排便などは副交感神経がコントロールしている。
「不快な暑さ、熱帯夜の睡眠不足といったストレスで交感神経が過剰になると、腸の働きが悪くなり、便秘や下痢の原因に。
一方、深部体温が上がると副交感神経が優位になるので、入浴は40℃程度のお湯でうっすら汗をかくまで温まりましょう。腸の善玉菌も温かいほうがよく動きます。
睡眠は6時間以上とりたいですね。エアコンで室温を26〜28℃に保ち、長袖長ズボンと腹巻きで寝冷え対策も忘れずに。最大の免疫器官である腸が整えば、夏はもちろん、秋の不調の予防にもなります」
便秘解消!腸もみマッサージ
両手をウエストの両脇に当てて腰をつかむようにし、4本の指でお腹をやや強めに押します。
「大腸は右下から上がって左に曲がり、再び曲がって下へと続いています。便が滞りがちな曲がり角を刺激しましょう」
朝と夜の2回、食後1時間は避けて試してみよう。
教えてくれたのは……石原新菜先生●医師、イシハラクリニック副院長。主に漢方医学、自然療法、食事療法により種々の病気の治療にあたる。著書に『バウエル・ダイエット 腸を整えて、ラクに痩せる!』(幻冬舎)など。
取材・文/廣瀬亮子