「知らなかったので、いま知った感じでしたけど。もっともっと打てるように、継続して頑張りたいなと思います」
大きな放物線を描いて、打球は外野スタンドへ。日本時間7月26日、大谷翔平が節目となる日米通算250号ホームランを放った。
「大谷選手にとってこれが今季31号で、メジャーリーグでの通算202本目のホームラン。日本ハム時代に放った48本と合わせて、250号に到達しましたが、当の大谷選手はその記録をまったく意識していないようですね。オールスター戦が終わり、シーズンも後半戦。どれだけ打撃のタイトルを獲得するかにも注目が集まっています」(スポーツ紙記者、以下同)
ロスの新たな観光スポット
“異次元”の活躍で歴史を塗り替え続ける大谷。その大きすぎる影響力はロサンゼルスの街全体にも及んでいる。
「アメリカの大手放送局『CNN』が大谷選手の影響でロサンゼルスを訪れる日本人観光客が増加していると報じました。ロサンゼルス観光局によると、日本人観光客の80から90%が少なくとも1回はドジャースタジアムに足を運んでいるようです」
円安で海外旅行は高騰しているが、それでも多くの日本人が“大谷目当て”にロサンゼルスを訪れている。どういった理由で、観光客増加につながっているのか。航空・旅行アナリストの鳥海高太朗さんに話を聞いた。
「もちろんお金はかかりますが、大谷選手がこれだけホームランを打っているので、見るなら今がチャンスと考える人が多くいるのでしょう。ドジャースに移籍し、球場が公共交通機関で行くことができる街中にあることも、ファンからするとうれしいですね」
ドジャースタジアムに行く日本人観光客は多いようだが、ロサンゼルスでは、ほかにどういったところが観光スポットなのか。
「ハリウッドやサンタモニカ、ビバリーヒルズといったあたりに行くというのが一般的には多いです。ほかでは『リトルトーキョー』もおすすめです。今までは行かなくてもいいかなという場所でしたが、大谷選手の壁画ができたので、いい観光スポットになっています」(鳥海さん)
「存続の危機にある歴史地区」
大谷ファンにとって新たな“巡礼地”となったリトルトーキョー。日系の移民が多く住むアメリカ最大の日本人街で、今年で誕生140周年という長い歴史を持つが、深刻な問題を抱えている。
「アメリカの非営利団体『歴史保護ナショナル・トラスト』が5月にリトルトーキョーを“存続の危機にある歴史地区”に指定しました。バブル期は日本人観光客が多く訪れてにぎわっていましたが、バブル崩壊とともに観光客は減少。日系ではない企業や人口が増える一方、閉店を余儀なくされる日系の商店が目立っています」(在米ジャーナリスト)
どういったことがリトルトーキョーの存続を脅かしているのか。『ナショナル・トラスト』に確認したところ、
「リトルトーキョーの多くの老舗企業は、家賃の高騰や経営者の高齢化、全国チェーン店の流入により危機に瀕しています。ほとんどの企業が賃貸物件を借りているため、家賃高騰の影響を強く受けてしまいます。再開発などにより、文化や経済が変えられてしまっているのが現状です」
受け継がれてきた日系のレガシーが失われつつある。そこに現れたのが大谷だった。
リトルトーキョーの伝統を守り、活性化に取り組む『リトルトーキョー・コミュニティ協議会』によれば、大谷の存在は大きいようだ。
「日本人観光客や日本メディアのリトルトーキョーへの関心が高くなり、ドジャースがホームゲームのときは、ユニフォームを着た日本人観光客が多く訪れるようになりました。大谷選手はドジャースに移籍してきたばかりですが、大きな影響を与えています」
リトルトーキョーで30年以上もラーメン店を営む『ミスターラーメン』の店員に話を聞くと、大谷への感謝を語った。
「ホームゲームのときは、ここでごはんを食べて球場に向かったり、深夜1時まで営業しているので試合後に来店してくれる人も多いです。日本人だけでなく、アメリカ人のお客さまもいらっしゃいますし、日系人も多いです。日本人である大谷選手があれほど活躍して、誇りですよね。売り上げも昨年までと大きく変わってくると思います。本当に、大谷選手さまさまです。大谷選手にも一度、リトルトーキョーに来てほしいですね」
異国の地で、大谷が先人たちの伝統と文化を守る救世主となりそうだ。